356 / 435
最終章 転生野球大戦編
286 信じるべきもの
しおりを挟む
もう【好感度】稼ぎどころではなくなってしまった俺は、黒井選手達に別れを告げるとロビーを離れて割り当てられたホテルの部屋にあーちゃんと一緒に入った。
そうして2人切りになったところで。
「しゅー君、大丈夫?」
彼女はいつになく心配そうに俺を見上げながら、そう尋ねてきた。
【以心伝心】が動揺の気配を伝えてきている。
いつもマイペースな彼女が大分珍しい。
「ん。うん。……ちょっと、な」
「悩みがあるなら言って欲しい」
周りに人がいた時は俺の意図を汲んでスルーしてくれていたようだが、さすがに看過できなくなってしまったようだ。
あーちゃんは真剣な口調で懇願するように迫ってくる。
「分かってはいるんだけど、どうにも整理がつかなくてさ」
真っ直ぐ見詰めてきた彼女の姿に若干の気まずさを覚え、少し視線を逸らす。
それでも彼女の肢体が視界には入っていて、ステータスの確認ができた。
あーちゃんの【好感度】は幼い頃から変わることなく100+のまま。
少なくとも【比翼連理】を取得できない原因が彼女にあるとは思えない。
やはり何かしら特殊な条件があるのか、俺に何か足りないものがあるのか……。
「……しゅー君。もしかしてアイツのせい?」
考え込んでいると、彼女は怒気のこもった底冷えするような声で尋ねてきた。
いつもボンヤリとしている目が、半ば闇に堕ちていそうな暗さを湛えている。
俺がこんな状態になったのはテレビでルカ選手を目の当たりにしたタイミング。
そのせいで、彼に全ての責任があるとあーちゃんは認識してしまったようだ。
「ち、違う違う。そうじゃないよ」
慌てて否定する。
切っかけはともかくとして、これはあくまでも俺の内面的な問題だ。
それで害敵認定されてしまうのは、さすがにルカ選手が可哀想だろう。
「ただ、その――」
しかし、色々と複雑な気持ちが胸の内に渦巻き、途中で言葉をとめる。
何と言うべきか、自分の心に対する不信感と疑問のせいで変に心細い。
無意識に、あーちゃんに向かって両腕を開くようにしながら伸ばす。
すると、彼女は一瞬驚いたように僅かに目を見開いた。
それから微笑みと共に俺の求めに応じ、正面からハグをしてくれた。
柔らかな感触と温もりに波立っていた心が幾分か落ち着く。
しばらくして言葉を選び終え、俺は改めて切り出した。
「……ちょっと、俺のあーちゃんへの気持ちが弱いんじゃないかって思ってさ」
そのせいで【隠しスキル】【比翼連理】を習得できないのではないか。
というところまでは言うことができない。
言うつもりもない。
それでも彼女には、問題の根幹が何なのか【直感】的に分かったようだった。
「そんなこと、絶対にない」
俺を強く抱き締めたまま首を横に振り、あーちゃんはそう断言する。
「ちゃんと伝わってる。しゅー君がわたしを愛してくれてること」
その声色には彼女からの愛情もまたハッキリ滲んでいたが、それに加えて【以心伝心】を通じて一層明確に感じることもできた。
同じように、あーちゃんにも俺の気持ちが普段から伝わっている。
その度合いもまた。
だからこそ、彼女のその言葉には確かな信憑性が存在していた。
「わたしがしゅー君を愛してるのと同じぐらい」
「……えっ、そこまで!?」
だが、続く言葉に俺は驚愕の声をつい上げてしまった。
それはいくら何でも過大評価過ぎるんじゃないかと思って。
「……それはどういう意味?」
対して、身長差で俺の首筋に顔を埋める形になっていたあーちゃんが顔を上げて唇を尖らせながら不満げに問うてくる。
そこまで好きじゃない、という風にも捉えられてしまいかねない返答だったか。
慌てて言い訳を考えて答える。
「いや、えっと。あーちゃんの好きって気持ちは……その、世界で1番と言っても過言じゃないぐらい強い、だろ?」
矢印が自分に対してのものであるだけに、間違っていれば自意識過剰な問い。
【以心伝心】や【好感度】の数値がある程度担保してくれているとは言え、そういうことを自分から尋ねるのはちょっと気恥ずかしかった。
「ん。当然」
しかし、あーちゃんは当たり前とばかりに断言する。
それこそが自分のアイデンティティと誇っているように自信満々だ。
「うん、だから。そんなあーちゃんと同レベルってのに少しビックリしちゃって」
俺がそう告げると、彼女は成程と納得したようだ。
じんわり伝わってきていた不満の気持ちが消えていく。
「……得てして人は自分のことは分からないもの」
今回の事例に適用できるかはさて置き、それはその通りだ。
自分も知らない自分を他人が知っていることは往々にしてある。
身近で親しい人なら尚更だ。
「しゅー君のわたしに対する愛情は、しゅー君が思っている以上に深い」
「あーちゃんがそこまで言うんだったら、そうか」
「そう」
強調するように頷いて肯定してから、あーちゃんは更に続ける。
「しゅー君はわたしを愛してて、幸せにしたいと強く思ってる」
「そこは疑ってないよ」
「ん」
キッパリと言い切った俺に、彼女は心の底から嬉しそうに微笑んだ。
問題にしているのは愛の有無ではなく、あくまでもその度合いだ。
そうでなければ結婚して夫婦生活を送るはずもない。
まあ、広く世の中を見渡せば打算的な関係もあるかもしれないけれども。
少なくとも俺とあーちゃんの間には確かな情がある。
「ただ、しゅー君は時々不安定。罪悪感とか義務感とかが顔に出る時がある」
【以心伝心】というスキルを自覚していない彼女は、あくまでも表情や雰囲気を読んで感じ取ったというような表現の仕方をする。
勿論、【以心伝心】によって伝わってくるものだけが全てではないだろう。
一般的な共感力に+αされているような形になっているのは確かだ。
もっとも彼女が普通の共感力を発揮できるのは極めて親しい相手のみだが……。
いずれにしても、俺に対しては的中率が一際高くなっているのは間違いない。
「しゅー君は結構頑固者。何度も何度も、わたしの人生は、幸せは、しゅー君あってのものだって言ってるのに」
実際、この前の食事会の時に先輩達の前で諭されたばかりだ。
にもかかわらず、この有様。
「こればっかりは、一生こうかもしれないな……」
頭では理解している。
それでもふとした拍子に顔を出してしまう。
ある意味【マニュアル操作】という他人の人生を左右する力を得た時点で、一生背負うことが定められた業のようなものかもしれない。
まあ、このスキルを使用した自分の責任でもあるけれども。
「だったら一生、隣で言い続ける」
「……うん。そうして欲しい」
頬に触れながら言うと、あーちゃんは当然と頷く。
彼女はしばらく俺の手に頬ずりするようにしてから再び口を開いた。
「けど、ずっと昔に比べると大分減った。しゅー君の変な罪悪感とか義務感」
「それは、うん。あーちゃんのおかげだ」
1つの大きな切っかけとして覚えがあるのは、割と近い話で去年のことだろう。
埼玉セルヴァグレーツとの交流戦で海峰永徳と対戦し、正に俺が投げた球が直接の原因で彼は左手有鉤骨骨折という大怪我を負った。
あの時、マウンド上で動揺を顕にした俺にあーちゃんは寄り添ってくれた。
言葉を重ね、深く沈み込もうとしていた心を引き留めてくれた。救ってくれた。
もし彼女が傍にいてくれなければ。
拭えないトラウマを植えつけられ、イップスになっていた可能性もある。
正に選手生命の危機だった。
「ん。内助の功」
あーちゃんの笑みに、まさしくそうだと思う。
正直なところ。
俺は前世とかステータスといった要素のせいもあって、この世界に生まれてから長いこと1枚厚い膜に隔てられたような感覚で生きていた。
どことなく画面越しに世界を見ているお客様のような気持ちもあった。
野球狂神とのやり取りもあって、シミュレーションゲームをやっているかのように両親やあーちゃん達とも接していた部分もなくはない。
あーちゃんに対する好きも、罪悪感や義務感に端を発したものとも言えた。
もう少しよく表現しても、最初は推しキャラクターぐらいのものだっただろう。
勿論、過去形ではあるが、全く褒められたものではないと思う。
それが自覚のある形で明確に変わったのが海峰永徳の怪我の時だ。
あの瞬間、世界を隔てていた膜は欠片も残さず消え去ったように思う。
彼女こそ俺の一生の伴侶だと認識しているし、純粋に愛情を抱いてもいる。
ただ、経緯が経緯だけに王道的では決してない。
ドラマ仕立てにしたら白眼視されても不思議ではない。
まあ、あーちゃんはあーちゃんで大分ズレたところもあるが……。
ともかく、割れ鍋に綴じ蓋としか言いようがない。
「……愛の形に正解なんてない。条件があるとすれば互いの幸せだけ。わたし達にはわたし達なりの愛がある」
【以心伝心】どころの話ではなく、思考を読んだように告げるあーちゃん。
だが、それは真理だろう。
少なくとも実態も知らない余所様と比較して引け目を感じる必要などない。
そう納得し、改めて彼女を少し強めに抱き締める。
「俺は、あーちゃんが俺を愛してくれてるぐらいあーちゃんを愛してるんだな」
「ん。その通り」
我が意を得たりと抱き締め返してくるあーちゃん。
であれば、今や俺の彼女に対する【好感度】も同じように100+だろう。
そして【比翼連理】の発生条件は恐らく【好感度】ではない。
いや、【好感度】も発生条件に含まれているかもしれないが、少なくとも俺達に足りていないのはそれではない。
何かよく分からないマスクデータのようなものがあるに違いない。
正樹の【雲外蒼天】にしても発生条件は『選手生命に関わる怪我を繰り返す』であって、厳密には怪我の度合いも回数も分からないからな。
そういった部分が【比翼連理】にもあるのだ。
それが本当に正しいかどうかは知り得ないが、そう思っておくとしよう。
そこまで考えて、ようやく心が軽くなった。
目を瞑ってそれを実感していると、ふと唇に何かが触れる。
瞼を開けると、あーちゃんが悪戯っぽく笑っていた。
「愛の確かめ方にも色々ある」
「……そうだな」
家族には家族の。親子には親子の。そして夫婦には夫婦の。
夜は始まったばかりだった。
そうして2人切りになったところで。
「しゅー君、大丈夫?」
彼女はいつになく心配そうに俺を見上げながら、そう尋ねてきた。
【以心伝心】が動揺の気配を伝えてきている。
いつもマイペースな彼女が大分珍しい。
「ん。うん。……ちょっと、な」
「悩みがあるなら言って欲しい」
周りに人がいた時は俺の意図を汲んでスルーしてくれていたようだが、さすがに看過できなくなってしまったようだ。
あーちゃんは真剣な口調で懇願するように迫ってくる。
「分かってはいるんだけど、どうにも整理がつかなくてさ」
真っ直ぐ見詰めてきた彼女の姿に若干の気まずさを覚え、少し視線を逸らす。
それでも彼女の肢体が視界には入っていて、ステータスの確認ができた。
あーちゃんの【好感度】は幼い頃から変わることなく100+のまま。
少なくとも【比翼連理】を取得できない原因が彼女にあるとは思えない。
やはり何かしら特殊な条件があるのか、俺に何か足りないものがあるのか……。
「……しゅー君。もしかしてアイツのせい?」
考え込んでいると、彼女は怒気のこもった底冷えするような声で尋ねてきた。
いつもボンヤリとしている目が、半ば闇に堕ちていそうな暗さを湛えている。
俺がこんな状態になったのはテレビでルカ選手を目の当たりにしたタイミング。
そのせいで、彼に全ての責任があるとあーちゃんは認識してしまったようだ。
「ち、違う違う。そうじゃないよ」
慌てて否定する。
切っかけはともかくとして、これはあくまでも俺の内面的な問題だ。
それで害敵認定されてしまうのは、さすがにルカ選手が可哀想だろう。
「ただ、その――」
しかし、色々と複雑な気持ちが胸の内に渦巻き、途中で言葉をとめる。
何と言うべきか、自分の心に対する不信感と疑問のせいで変に心細い。
無意識に、あーちゃんに向かって両腕を開くようにしながら伸ばす。
すると、彼女は一瞬驚いたように僅かに目を見開いた。
それから微笑みと共に俺の求めに応じ、正面からハグをしてくれた。
柔らかな感触と温もりに波立っていた心が幾分か落ち着く。
しばらくして言葉を選び終え、俺は改めて切り出した。
「……ちょっと、俺のあーちゃんへの気持ちが弱いんじゃないかって思ってさ」
そのせいで【隠しスキル】【比翼連理】を習得できないのではないか。
というところまでは言うことができない。
言うつもりもない。
それでも彼女には、問題の根幹が何なのか【直感】的に分かったようだった。
「そんなこと、絶対にない」
俺を強く抱き締めたまま首を横に振り、あーちゃんはそう断言する。
「ちゃんと伝わってる。しゅー君がわたしを愛してくれてること」
その声色には彼女からの愛情もまたハッキリ滲んでいたが、それに加えて【以心伝心】を通じて一層明確に感じることもできた。
同じように、あーちゃんにも俺の気持ちが普段から伝わっている。
その度合いもまた。
だからこそ、彼女のその言葉には確かな信憑性が存在していた。
「わたしがしゅー君を愛してるのと同じぐらい」
「……えっ、そこまで!?」
だが、続く言葉に俺は驚愕の声をつい上げてしまった。
それはいくら何でも過大評価過ぎるんじゃないかと思って。
「……それはどういう意味?」
対して、身長差で俺の首筋に顔を埋める形になっていたあーちゃんが顔を上げて唇を尖らせながら不満げに問うてくる。
そこまで好きじゃない、という風にも捉えられてしまいかねない返答だったか。
慌てて言い訳を考えて答える。
「いや、えっと。あーちゃんの好きって気持ちは……その、世界で1番と言っても過言じゃないぐらい強い、だろ?」
矢印が自分に対してのものであるだけに、間違っていれば自意識過剰な問い。
【以心伝心】や【好感度】の数値がある程度担保してくれているとは言え、そういうことを自分から尋ねるのはちょっと気恥ずかしかった。
「ん。当然」
しかし、あーちゃんは当たり前とばかりに断言する。
それこそが自分のアイデンティティと誇っているように自信満々だ。
「うん、だから。そんなあーちゃんと同レベルってのに少しビックリしちゃって」
俺がそう告げると、彼女は成程と納得したようだ。
じんわり伝わってきていた不満の気持ちが消えていく。
「……得てして人は自分のことは分からないもの」
今回の事例に適用できるかはさて置き、それはその通りだ。
自分も知らない自分を他人が知っていることは往々にしてある。
身近で親しい人なら尚更だ。
「しゅー君のわたしに対する愛情は、しゅー君が思っている以上に深い」
「あーちゃんがそこまで言うんだったら、そうか」
「そう」
強調するように頷いて肯定してから、あーちゃんは更に続ける。
「しゅー君はわたしを愛してて、幸せにしたいと強く思ってる」
「そこは疑ってないよ」
「ん」
キッパリと言い切った俺に、彼女は心の底から嬉しそうに微笑んだ。
問題にしているのは愛の有無ではなく、あくまでもその度合いだ。
そうでなければ結婚して夫婦生活を送るはずもない。
まあ、広く世の中を見渡せば打算的な関係もあるかもしれないけれども。
少なくとも俺とあーちゃんの間には確かな情がある。
「ただ、しゅー君は時々不安定。罪悪感とか義務感とかが顔に出る時がある」
【以心伝心】というスキルを自覚していない彼女は、あくまでも表情や雰囲気を読んで感じ取ったというような表現の仕方をする。
勿論、【以心伝心】によって伝わってくるものだけが全てではないだろう。
一般的な共感力に+αされているような形になっているのは確かだ。
もっとも彼女が普通の共感力を発揮できるのは極めて親しい相手のみだが……。
いずれにしても、俺に対しては的中率が一際高くなっているのは間違いない。
「しゅー君は結構頑固者。何度も何度も、わたしの人生は、幸せは、しゅー君あってのものだって言ってるのに」
実際、この前の食事会の時に先輩達の前で諭されたばかりだ。
にもかかわらず、この有様。
「こればっかりは、一生こうかもしれないな……」
頭では理解している。
それでもふとした拍子に顔を出してしまう。
ある意味【マニュアル操作】という他人の人生を左右する力を得た時点で、一生背負うことが定められた業のようなものかもしれない。
まあ、このスキルを使用した自分の責任でもあるけれども。
「だったら一生、隣で言い続ける」
「……うん。そうして欲しい」
頬に触れながら言うと、あーちゃんは当然と頷く。
彼女はしばらく俺の手に頬ずりするようにしてから再び口を開いた。
「けど、ずっと昔に比べると大分減った。しゅー君の変な罪悪感とか義務感」
「それは、うん。あーちゃんのおかげだ」
1つの大きな切っかけとして覚えがあるのは、割と近い話で去年のことだろう。
埼玉セルヴァグレーツとの交流戦で海峰永徳と対戦し、正に俺が投げた球が直接の原因で彼は左手有鉤骨骨折という大怪我を負った。
あの時、マウンド上で動揺を顕にした俺にあーちゃんは寄り添ってくれた。
言葉を重ね、深く沈み込もうとしていた心を引き留めてくれた。救ってくれた。
もし彼女が傍にいてくれなければ。
拭えないトラウマを植えつけられ、イップスになっていた可能性もある。
正に選手生命の危機だった。
「ん。内助の功」
あーちゃんの笑みに、まさしくそうだと思う。
正直なところ。
俺は前世とかステータスといった要素のせいもあって、この世界に生まれてから長いこと1枚厚い膜に隔てられたような感覚で生きていた。
どことなく画面越しに世界を見ているお客様のような気持ちもあった。
野球狂神とのやり取りもあって、シミュレーションゲームをやっているかのように両親やあーちゃん達とも接していた部分もなくはない。
あーちゃんに対する好きも、罪悪感や義務感に端を発したものとも言えた。
もう少しよく表現しても、最初は推しキャラクターぐらいのものだっただろう。
勿論、過去形ではあるが、全く褒められたものではないと思う。
それが自覚のある形で明確に変わったのが海峰永徳の怪我の時だ。
あの瞬間、世界を隔てていた膜は欠片も残さず消え去ったように思う。
彼女こそ俺の一生の伴侶だと認識しているし、純粋に愛情を抱いてもいる。
ただ、経緯が経緯だけに王道的では決してない。
ドラマ仕立てにしたら白眼視されても不思議ではない。
まあ、あーちゃんはあーちゃんで大分ズレたところもあるが……。
ともかく、割れ鍋に綴じ蓋としか言いようがない。
「……愛の形に正解なんてない。条件があるとすれば互いの幸せだけ。わたし達にはわたし達なりの愛がある」
【以心伝心】どころの話ではなく、思考を読んだように告げるあーちゃん。
だが、それは真理だろう。
少なくとも実態も知らない余所様と比較して引け目を感じる必要などない。
そう納得し、改めて彼女を少し強めに抱き締める。
「俺は、あーちゃんが俺を愛してくれてるぐらいあーちゃんを愛してるんだな」
「ん。その通り」
我が意を得たりと抱き締め返してくるあーちゃん。
であれば、今や俺の彼女に対する【好感度】も同じように100+だろう。
そして【比翼連理】の発生条件は恐らく【好感度】ではない。
いや、【好感度】も発生条件に含まれているかもしれないが、少なくとも俺達に足りていないのはそれではない。
何かよく分からないマスクデータのようなものがあるに違いない。
正樹の【雲外蒼天】にしても発生条件は『選手生命に関わる怪我を繰り返す』であって、厳密には怪我の度合いも回数も分からないからな。
そういった部分が【比翼連理】にもあるのだ。
それが本当に正しいかどうかは知り得ないが、そう思っておくとしよう。
そこまで考えて、ようやく心が軽くなった。
目を瞑ってそれを実感していると、ふと唇に何かが触れる。
瞼を開けると、あーちゃんが悪戯っぽく笑っていた。
「愛の確かめ方にも色々ある」
「……そうだな」
家族には家族の。親子には親子の。そして夫婦には夫婦の。
夜は始まったばかりだった。
10
あなたにおすすめの小説
追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜
音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった!
スキルスキル〜何かな何かな〜
ネットスーパー……?
これチートでしょ!?
当たりだよね!?
なになに……
注文できるのは、食材と調味料だけ?
完成品は?
カップ麺は?
え、私料理できないんだけど。
──詰みじゃん。
と思ったら、追放された料理人に拾われました。
素材しか買えない転移JK
追放された料理人
完成品ゼロ
便利アイテムなし
あるのは、調味料。
焼くだけなのに泣く。
塩で革命。
ソースで敗北。
そしてなぜかペンギンもいる。
今日も異世界で、
調味料無双しちゃいます!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界での異生活 ~騎士団長の憂鬱~
なにがし
ファンタジー
成人年齢15歳、結婚適齢期40~60歳、平均寿命200歳の異世界。その世界での小さな国の小さな街の話。
40歳で父の跡を継いで騎士団長に就任した女性、マチルダ・ダ・クロムウェル。若くして団長になった彼女に、部下達はその実力を疑っていた。彼女は団長としての任務をこなそうと、頑張るがなかなか思うようにいかず、憂鬱な日々を送る羽目に。
そんな彼女の憂鬱な日々のお話です。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
『三度目の滅びを阻止せよ ―サラリーマン係長の異世界再建記―』
KAORUwithAI
ファンタジー
45歳、胃薬が手放せない大手総合商社営業部係長・佐藤悠真。
ある日、横断歩道で子供を助け、トラックに轢かれて死んでしまう。
目を覚ますと、目の前に現れたのは“おじさんっぽい神”。
「この世界を何とかしてほしい」と頼まれるが、悠真は「ただのサラリーマンに何ができる」と拒否。
しかし神は、「ならこの世界は三度目の滅びで終わりだな」と冷徹に突き放す。
結局、悠真は渋々承諾。
与えられたのは“現実知識”と“ワールドサーチ”――地球の知識すら検索できる探索魔法。
さらに肉体は20歳に若返り、滅びかけの異世界に送り込まれた。
衛生観念もなく、食糧も乏しく、二度の滅びで人々は絶望の淵にある。
だが、係長として培った経験と知識を武器に、悠真は人々をまとめ、再び世界を立て直そうと奮闘する。
――これは、“三度目の滅び”を阻止するために挑む、ひとりの中年係長の異世界再建記である。
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
「今日からお前はレイナだ」
これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
魔王とはいずれ戦うことになるだろう。
だが今は――
まずは冒険者登録からだ。
木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!
神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。
そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。
これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる