第3次パワフル転生野球大戦ACE

青空顎門

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最終章 転生野球大戦編

288 イタリア代表チーム

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 予定時刻よりも早く琉球ライムストーン球場に到着した俺達はまず、ミーティングルームとしてスタッフに設営された大会議室へと向かった。
 今回も特別番組の撮影があるようで、既に何人かのカメラマンの姿がある。
 カメラのレンズが一斉にこちらを向く。
 ちょっと怖い。
 が、表面上は意識していないかのように振る舞いながら、俺達はとりあえず村山マダーレッドサフフラワーズ組で固まってパイプ椅子に座った。
 カメラの前なので無駄話はせずにしばらく待っていると選手が全員揃う。
 次いで見計らったように首脳陣が部屋に入ってきて前方に陣取った。
 それから、落山監督が目前に用意されていたマイクを手に取って口を開く。

「では、2日後に控えたイタリア代表チームとの特別強化試合に向けたミーティングを始めます。まずは現時点で想定しているスターティングオーダーの発表から」

 その彼の言葉の途中でスタッフが部屋を暗くする。
 更に、コーチングスタッフが座っている椅子の更に奥に設置されていたプロジェクタースクリーンにパソコンの画面が投影された。
 映し出されたのは以下の文字列だ。

1番 遊撃手 野村茜   村山マダーレッドサフフラワーズ
2番 二塁手 倉本未来  村山マダーレッドサフフラワーズ
3番 左翼手 山崎一裕  宮城オーラムアステリオス
4番 捕手  野村秀治郎 村山マダーレッドサフフラワーズ
5番 中堅手 瀬川昇二  村山マダーレッドサフフラワーズ
6番 一塁手 黒井力皇  福岡アルジェントヴァルチャーズ
7番 三塁手 白露尊   神奈川ポーラースターズ
8番 右翼手 大松勝次  東京プレスギガンテス
9番 投手  磐城巧   兵庫ブルーヴォルテックス

 それを見て、おや、と思う。
 今回は磐城君を先発させるのか。

「これはあくまでも暫定的なものです。当日までに変更になる可能性はあります」

 落山監督はそう言うものの、さすがに先発投手に関しては怪我や体調不良といった不測の事態でもない限りここから変わるということはないはずだ。
 それ以外はこのミーティング後の練習次第というところだろうが、おおよそ他の選手についても順当な感じに思える。
 とは言え、視界の端にいた大松君の表情は少々複雑そうだった。
 先発ではなかったことが原因なのは勿論のこと、打順が下位なのが大きそうだ。
 恐らく彼は途中で登板することになっているのだろう。
 磐城君も含め、多少なり負担を軽減することも考えての打順のように思う。
 あるいは、1番と2番の超高出塁率コンビの前にランナーを出すためか。
 いずれにしても、評価が低いとかそういうことではないのは間違いない。

 そんなようなことを考えていると、隣のあーちゃんも不満げなのに気づく。
 これは……俺が先発登板しないからっぽいな。
 もっとも、そのことについて俺は特に何とも思っていない。
 なので、机の下で軽く彼女の手に触れて宥める。
【以心伝心】でも俺の考えはぼんやり伝わったようで、彼女は不満を引っ込めた。

「スターティングオーダーに関して何か質問はありますか?」
「秀治郎選手には先発させないのですか?」

 選手達を代表するように問いかけた佐々藤選手へとカメラのレンズが1度向けられ、それから落上監督の答えを待つようにパンされる。
 この場の多くが同じ疑問を抱いているようで、視線が集中する。
 意図があってのことなのは間違いない。

「秀治郎選手については先発は勿論、この試合の登板も基本的にはありません。前日に相手投手をトレースする形でシート打撃のピッチャーを務めて貰う予定です」

 そういうことであれば、翌日の試合では投げられないな。
 いや、まあ。投げようと思えば別に投げることはできるけれども。
 あくまでもそれは【怪我しない】からだ。
 傍から見ていれば、間違いなく酷使と批判されてしまうような所業だろう。

「当然、通常の打撃練習はピッチングマシンを同様の設定で運用しますが……」

 落上監督が補足した通り。
 トレースするだけだったら俺が持ち込んだピッチングマシンでも可能ではある。
 しかし、マシン本体は勿論のこと配線関係も守備の邪魔になる。
 マウンドに設置するにしてもそこそこ時間がかかってしまうしな。
 まあ、相手投手の体格に合わせてマウンドを盛ったり削ったりしてリリースポイントを正確に合わせる必要はあるが、機材をセッティングするよりは余程マシだ。
 なるべく実戦に近い環境で、となると俺が投げた方がいいのは間違いない。

「秀治郎選手。お願いできますか?」
「はい。問題ありません」

 落山監督の問いかけに二つ返事で応じる。
 彼は俺の返答に小さく頷いてから話を続けた。

「次に、イタリア代表チームの想定されるスターティングオーダーを表示します」

1番 右翼手 ジャンナ・トッティ
2番 中堅手 ナタリア・パストーリ
3番 DH  リリアナ・サウダーディ
4番 遊撃手 ルカ・デ・ルカ
5番 捕手  アントニーノ・コロンボ
6番 一塁手 ベアトリーチェ・エスポジト
7番 三塁手 ロレンツァ・ビアンキ
8番 左翼手 モニカ・カゼラート
9番 二塁手 エリザベッタ・マリーノ
投手 アンジェリカ・カルネヴァーレ

「イタリア代表チームは半数近くがキウーザ・カネデルリの選手で、想定されるスターティングオーダーは全員が同じチームです」

 異例ではあるが、ある意味当然とも言える。
 日本代表だって村山マダーレッドサフフラワーズの割合が多いからな。
 転生者がいて、その周辺で選手が異常な成長をし、同じチームで活躍する。
 大まかな流れは大体そうなるはずだ。
 むしろ転生者のワンマンチームと化しているメキシコ代表や、満遍なく最強なアメリカ代表の方が俺の立場からすると非常識的と言える。

「シーズン中もこの面子で戦っていることから、恐らく各国の代表チームの中で最も連係の練度が高いと言うことができるでしょう」

 そこが正に最大のメリットだな。
 勿論、個の能力がトップクラスというのが大前提だけども。

「イタリア代表は主に12人の女性選手が目立っていますが、中心的な選手はこのルカ・デ・ルカ選手です。それと扇の要たるアントニーノ・コロンボ選手」

 ピッチャーとショートの二刀流であるルカ選手はチームの顔。
 そんな彼は明らかに女好きで、女性を優先的に仲間にしている。
 にもかかわらず、キャッチャーは男だ。
 恐らくルカ選手としては不本意だろう。

 ただ、キャッチャーというものは落山監督が口にした通り扇の要。
 経験がものを言うだけに、幼い頃から固定するのが安牌なポジションだ。
 そして恐らく。
 幼い頃のルカ選手の周囲には【成長タイプ:マニュアル】がこのアントニーノ選手と、所属球団キウーザ・カネデルリにいるもう1人ぐらいしかいなかったのだろう。
 こればかりは自分の性癖を優先できる部分ではないと判断したようで、トッププロまで彼らを女房役として戦ってきたようだ。

 2人共、当然のようにキャッチャー用のスキルを網羅している。
 だが、打撃成績はアントニーノ選手の方がよかったらしい。
 それもあって代表選手には彼の方が選ばれたようだ。
 正にプレイヤースキル的な部分が優れているのだろう。

 いずれにしても。
 イタリア代表チームの縁の下の力持ちはと言えば間違いなく彼だ。

「この2人を除いた女性選手達のレベルも非常に高く――」

 そこから1人1人の情報の共有が行われる。
 しかし、聞いた感じ【比翼連理】を加味した情報ではないようだ。
 来日時の映像を見た限りではジャンナ選手、エリザベッタ選手、そしてアンジェリカ選手の3人とルカ選手が【比翼連理】を持っている。
 女性選手のレベルはどっこいどっこいみたいな説明がなされていたが、この3人はイタリア代表チームの中でも突出している。
 こればかりはインターンシップ部隊でも分かり得ない部分だ。
 首脳陣に注意を促すには試合の中で片鱗を見出すしかない。
 まあ、そこは落山監督なら見れば気づくはずだ。

「けど、勿体ないな」

 プロジェクタースクリーンに映し出される情報を眺めながら小さく呟く。
 と言うのも、彼女達は【成長タイプ:マニュアル】ではないからだ。
 ついつい【比翼連理】の強力な効果の方に意識を奪われてしまったが、それでは100%噛み合っているとは言えない。
【成長タイプ:マニュアル】以外は恣意的にスキルを取得できない以上、ルカ選手が1から10まで意図した形で自分を強化することは難しいはずだ。
 よくて理論値の70%~80%というところだろう。
 勿論、それでも破格の能力であることは間違いではないが……。
 前世で育成ゲームを死ぬ程やっていた身としてはモヤッとする部分がある。
 折角なら100%以上のシナジーを作りたくなるのがゲーマーの心情だ。

 そう思うと、選手を自由自在に成長させることができる【成長タイプ:マニュアル】と【マニュアル操作】のありがたみが分かる。
 もっとも、この2つの【生得スキル】を組み合わせると基本的に目ぼしいスキルは全てを取り尽くす形となってしまう。
 そのため、結局はシナジー云々というより全部乗せの強さにしかならないが。

 っと、思考が逸れた。
 落山監督の話に意識を戻そう。

「この試合における最大の目的は、ピッチャーとして先発が予想されるアンジェリカ選手らを打ち込んでルカ選手を引きずり出すことです」

 特別強化試合と謳ってはいるものの、さすがにエースをおいそれとは使えない。
 それこそ本戦で当たるかもしれないからな。
 お互い先発は2番手、3番手のピッチャーで牽制する形が想定される。

 しかし当然、トーナメント戦の配置次第ではそういう局面も十分あり得る。
 球数制限もあり、酷使上等な昔の甲子園のような起用方法はできない以上は。
 エースと戦えなければ意味がない、とはならない。
 特に【比翼連理】でルカ選手のスキルを全て共有したアンジェリカ選手を打ち込むのは容易いことではないだろう。
 ここで対戦しておく価値はある。

「一方で、イタリア代表チームもまた多くのピッチャーに投げさせたいはず。それを防ぎ、最大限情報収集しながら勝利する。それが我々の今回の課題となります」

 最後に落山監督がそう纏めて締め括る。
 俺達はそれを念頭に置きながら2日間、徹底して実戦的な練習を行い……。
 そうして、イタリア代表チームとの特別強化試合当日を迎えたのだった。
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