62 / 128
第一章 未来異星世界
062 迷宮遺跡の異変
しおりを挟む
「これでマグさん達は探索者Cランク、狩猟者Dランクです。いいペースですね」
数日後。いくつかの迷宮遺跡で依頼をこなしてASHギルドへの納品を済ませたマグ達に、トリアがおっとりとした笑みを浮かべながら言った。
褒めてはくれているものの、驚きはない。常識の範疇という感じだ。
マグ個人としては、かなりペースが早いような気がしていたが……。
やはり、この時代この星にもRTAガチ勢のような存在がいるのだろう。
「ちなみに、最速記録はどの程度なのでしょうか」
「完全に戦闘特化の超越現象を得た稀人の方で、マグさん達と同じぐらいの期間で探索者と狩猟者を両方Aランクまで上げていましたね」
アテラの問いかけに、少し躊躇いがちに答えるトリア。
「ですが、自身と比較して焦ったりしないで下さい。あの方の場合は、最初から高ランクの迷宮遺跡や幻想獣に挑んだ結果ですから。性格にも難がありましたし」
ASHギルドの受付としては、余り参考にはして欲しくなさそうだ。
比較的穏やかな彼女が性格に言及する辺り、無茶苦茶な人物だったのだろう。
ランクによる情報制限がある以上、街の管理者メタが十分な実力を有していると判断して高ランクの指名依頼を提示した結果ではあるはずだが……。
あるいは、難のある性格の人物を御すための対応だった可能性もある。
いずれにしても、参考にできるような相手ではない。
そういった者に比べれば、安全に十分配慮している上にクリルの店での仕事もなくはなかったマグ達がいいペースに収まるのは当然のことだ。
そこで競い合う理由などないし、焦燥を感じる必要もない。
自分が命を落としたり、アテラ達が破壊されたりしては元も子もないのだから。
「ところで、迷宮遺跡の様子におかしなところはありませんでしたか?」
と、話題を変えようとするようにトリアが問いかけてくる。
確認の意図が強く聞き取れる口調からして、あるなしではなく、おかしなところがある前提でその中身を聞きたいのだろう。
それを踏まえ、マグは今日の遺跡探索を頭の中で振り返った。
「言われてみると……事前情報よりも機獣が少なかったような気がします」
少し自信なく答えながら、詳しい内容を求めるようにアテラを見る。
それだけで理解した彼女は、引き継ぐように音声を発した。
「襲撃頻度はルクス迷宮遺跡の二割程度。かつ【エコーロケイト】で確認できる範囲では様子を窺ったり、退避していたりする機獣の存在は確認できませんでした」
端末を通じて討伐数などの情報は得ているはずなので、欲しかったのはマグの体感よりも機人であるアテラの分析の方で間違いない。
マグとしても自分の感覚よりも信頼できる。
「勿論、未発見区画に隠れている可能性はありますが」
つけ加えられた彼女の言葉に、トリアは予想通りと頷いてから口を開いた。
「恐らく、その可能性はないと思います」
「……何か確証があるようですね」
「ええ。実は、他の迷宮遺跡でも似たような報告が上がっていまして……」
似た事例が同時多発的に起きている。
ならば、単純に未発見区画に潜んでいるとは考えにくいか。
「討伐のし過ぎとか?」
「記録にある限り、ペースは大きく変わっていません。迷宮遺跡の機獣の生産数を大幅に上回るということはないはずです。逆に生産数は増大している推移ですし」
現状は、むしろ機獣が増える方向性らしい。
となると、明らかに。
何かの別の要因によって引き起こされている現象のようだ。
「誰かが勝手に間引いているとか」
「いえ、迷宮遺跡に誰かが入れば記録が残るはずです」
トリアは断言するが、【アブソーバー】のような例もある。
余り過信はできないが……。
少なくとも現時点では、元凶は監視も調査もすり抜ける何かなのは間違いない。
全く以って気味の悪いことだ。
「よくない兆候でなければいいのですが……」
どこか不安そうに呟くトリア。
そんな彼女に、マグもまた面倒ごとのフラグを感じざるを得なかった。
数日後。いくつかの迷宮遺跡で依頼をこなしてASHギルドへの納品を済ませたマグ達に、トリアがおっとりとした笑みを浮かべながら言った。
褒めてはくれているものの、驚きはない。常識の範疇という感じだ。
マグ個人としては、かなりペースが早いような気がしていたが……。
やはり、この時代この星にもRTAガチ勢のような存在がいるのだろう。
「ちなみに、最速記録はどの程度なのでしょうか」
「完全に戦闘特化の超越現象を得た稀人の方で、マグさん達と同じぐらいの期間で探索者と狩猟者を両方Aランクまで上げていましたね」
アテラの問いかけに、少し躊躇いがちに答えるトリア。
「ですが、自身と比較して焦ったりしないで下さい。あの方の場合は、最初から高ランクの迷宮遺跡や幻想獣に挑んだ結果ですから。性格にも難がありましたし」
ASHギルドの受付としては、余り参考にはして欲しくなさそうだ。
比較的穏やかな彼女が性格に言及する辺り、無茶苦茶な人物だったのだろう。
ランクによる情報制限がある以上、街の管理者メタが十分な実力を有していると判断して高ランクの指名依頼を提示した結果ではあるはずだが……。
あるいは、難のある性格の人物を御すための対応だった可能性もある。
いずれにしても、参考にできるような相手ではない。
そういった者に比べれば、安全に十分配慮している上にクリルの店での仕事もなくはなかったマグ達がいいペースに収まるのは当然のことだ。
そこで競い合う理由などないし、焦燥を感じる必要もない。
自分が命を落としたり、アテラ達が破壊されたりしては元も子もないのだから。
「ところで、迷宮遺跡の様子におかしなところはありませんでしたか?」
と、話題を変えようとするようにトリアが問いかけてくる。
確認の意図が強く聞き取れる口調からして、あるなしではなく、おかしなところがある前提でその中身を聞きたいのだろう。
それを踏まえ、マグは今日の遺跡探索を頭の中で振り返った。
「言われてみると……事前情報よりも機獣が少なかったような気がします」
少し自信なく答えながら、詳しい内容を求めるようにアテラを見る。
それだけで理解した彼女は、引き継ぐように音声を発した。
「襲撃頻度はルクス迷宮遺跡の二割程度。かつ【エコーロケイト】で確認できる範囲では様子を窺ったり、退避していたりする機獣の存在は確認できませんでした」
端末を通じて討伐数などの情報は得ているはずなので、欲しかったのはマグの体感よりも機人であるアテラの分析の方で間違いない。
マグとしても自分の感覚よりも信頼できる。
「勿論、未発見区画に隠れている可能性はありますが」
つけ加えられた彼女の言葉に、トリアは予想通りと頷いてから口を開いた。
「恐らく、その可能性はないと思います」
「……何か確証があるようですね」
「ええ。実は、他の迷宮遺跡でも似たような報告が上がっていまして……」
似た事例が同時多発的に起きている。
ならば、単純に未発見区画に潜んでいるとは考えにくいか。
「討伐のし過ぎとか?」
「記録にある限り、ペースは大きく変わっていません。迷宮遺跡の機獣の生産数を大幅に上回るということはないはずです。逆に生産数は増大している推移ですし」
現状は、むしろ機獣が増える方向性らしい。
となると、明らかに。
何かの別の要因によって引き起こされている現象のようだ。
「誰かが勝手に間引いているとか」
「いえ、迷宮遺跡に誰かが入れば記録が残るはずです」
トリアは断言するが、【アブソーバー】のような例もある。
余り過信はできないが……。
少なくとも現時点では、元凶は監視も調査もすり抜ける何かなのは間違いない。
全く以って気味の悪いことだ。
「よくない兆候でなければいいのですが……」
どこか不安そうに呟くトリア。
そんな彼女に、マグもまた面倒ごとのフラグを感じざるを得なかった。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる