69 / 128
第一章 未来異星世界
069 裏の攻防
しおりを挟む
街を包囲した無数の機獣の存在に、城壁の内側は騒然としていた。
とは言え、当初は大きな混乱もなく、すぐに解決するものと多くが考えていた。
何故なら、近くに多くの迷宮遺跡を有するこの街、秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアは何重にも機獣の襲撃への対抗策を備えていたはずだったからだ。
しかし、端末の通信が遮断された上に防衛システムが作動する気配もない。
情報が得られなくなり、城壁の外では戦闘が未だに続いている。
それでも、こういった状況を想定したマニュアルに従い、中世騎士の恰好をした治安組織が避難誘導を行っているおかげでパニックには至っていなかったが……。
人々の顔に滲む不安は徐々に色濃くなっていっていた。
「……深謝」
それを横目に呟きながら、街の中を駆けていく少女の姿が一つ。
忍者の意匠が取り入れられた黒ずくめのボディースーツに黒いマスク。
セミショートぐらいの髪も瞳も黒く、マスクに隠れていない顔の上半分も偽装のためかダークグレーに染め上げられている。
もっとも明るい時分にこれは逆に目立つが、誰も気にした様子はなかった。
それこそが彼女、キリが有する超越現象の効果であり、その身に宿した断片の属性でもあるからだ。加えて――。
「機獣が侵入しているぞっ!!」
街の外ではオネットと多数の機獣が派手に動き、街の中にも地下から侵入した陽動部隊がいる。それに気づいた者の声で混乱が一気に広がっている様子だ。
尚のこと、キリの存在に気づくことは困難だろう。
「……好機」
だからキリは、別方向から同じ目的地に向かう機獣達に合わせて速度を上げた。
目指すは街の管理者メタの屋敷。
目的は彼女を破壊すること。
有り体に言えば暗殺だ。
「……必達」
オネット共々依頼を受けての仕事だが、キリもまたこれを成し遂げることは先の世界のために必要不可欠なことだと心の底から思っている。
オネットの方も同様だ。
人間によって人間のために生み出された人格の根底にある存在意義に関わるせいで、こうも回りくどく困難な方法を取らざるを得ないが、それは仕方がない。
ガイノイドとは、アンドロイドとは、そういうものなのだから。
「……侵入」
しばらくしてメタの屋敷に到着し、機獣が開けた穴を通って中に入る。
この建物のセキュリティは街の管理システムから独立しており、加えて【アブソーバー】対策に原炎技術を使用していない部分もある。
つまるところ古い電気式のものや非電気式のものも含まれているのだ。
勿論、キリの超越現象ならば監視はすり抜けられるが、物理的に閉鎖されたりしてしまうと目的の達成が容易ではなくなる。
先行した機獣が暴れて、それらをどれだけ無効化できているかが鍵だ。
彼らがメタのところに到達して彼女を討ってくれるなら、それはそれでいいが。
「……感知」
罠にかかった機獣の残骸を踏み越えながら進む中。
戦闘音が耳に届き、その発生源へと急行する。
場所は通常メタが街を管理している部屋。
どうやら屋敷を襲撃されているにもかかわらず、彼女は避難していないようだ。
自分一人で対処できると考えているのだろう。
「……傲慢」
破壊されて開きっ放しの扉を潜り、白い部屋に入る。
そこにはメタが機獣を翻弄している光景があった。
迫る爪や牙を回避し、徒手空拳で鋼鉄の装甲を容易く引き裂く。
ダンスのように洗練された動きだが、その表情は虫を見るように冷たい。
「……覚悟」
そんな彼女を前に、キリは小さく告げて短刀のような形状の先史兵装【ヴァイブレートエッジ】を太もものホルスターから取り出した。
破壊の判断軸・切除の断片を宿し、およそ切り裂けないものはない逸品だ。
メタの装甲がどうあれ、容易く貫くことができるだろう。
「……斬首」
そしてキリは一体の機獣が攻撃を仕かけたのに合わせ、死角から襲いかかった。
当然、メタは眼前の敵対者の処理を行おうとし、無防備な背中を見せ続ける。
隠形からの一撃。防ぐことなどできるはずがない。
しかし――。
「……何故」
「ふふっ、驕ったね」
機獣への攻撃を途中でとめたメタは短刀の軌道上から消え、認識できないはずのキリの腕をニヤリと笑いながら掴み上げていた。
とは言え、当初は大きな混乱もなく、すぐに解決するものと多くが考えていた。
何故なら、近くに多くの迷宮遺跡を有するこの街、秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアは何重にも機獣の襲撃への対抗策を備えていたはずだったからだ。
しかし、端末の通信が遮断された上に防衛システムが作動する気配もない。
情報が得られなくなり、城壁の外では戦闘が未だに続いている。
それでも、こういった状況を想定したマニュアルに従い、中世騎士の恰好をした治安組織が避難誘導を行っているおかげでパニックには至っていなかったが……。
人々の顔に滲む不安は徐々に色濃くなっていっていた。
「……深謝」
それを横目に呟きながら、街の中を駆けていく少女の姿が一つ。
忍者の意匠が取り入れられた黒ずくめのボディースーツに黒いマスク。
セミショートぐらいの髪も瞳も黒く、マスクに隠れていない顔の上半分も偽装のためかダークグレーに染め上げられている。
もっとも明るい時分にこれは逆に目立つが、誰も気にした様子はなかった。
それこそが彼女、キリが有する超越現象の効果であり、その身に宿した断片の属性でもあるからだ。加えて――。
「機獣が侵入しているぞっ!!」
街の外ではオネットと多数の機獣が派手に動き、街の中にも地下から侵入した陽動部隊がいる。それに気づいた者の声で混乱が一気に広がっている様子だ。
尚のこと、キリの存在に気づくことは困難だろう。
「……好機」
だからキリは、別方向から同じ目的地に向かう機獣達に合わせて速度を上げた。
目指すは街の管理者メタの屋敷。
目的は彼女を破壊すること。
有り体に言えば暗殺だ。
「……必達」
オネット共々依頼を受けての仕事だが、キリもまたこれを成し遂げることは先の世界のために必要不可欠なことだと心の底から思っている。
オネットの方も同様だ。
人間によって人間のために生み出された人格の根底にある存在意義に関わるせいで、こうも回りくどく困難な方法を取らざるを得ないが、それは仕方がない。
ガイノイドとは、アンドロイドとは、そういうものなのだから。
「……侵入」
しばらくしてメタの屋敷に到着し、機獣が開けた穴を通って中に入る。
この建物のセキュリティは街の管理システムから独立しており、加えて【アブソーバー】対策に原炎技術を使用していない部分もある。
つまるところ古い電気式のものや非電気式のものも含まれているのだ。
勿論、キリの超越現象ならば監視はすり抜けられるが、物理的に閉鎖されたりしてしまうと目的の達成が容易ではなくなる。
先行した機獣が暴れて、それらをどれだけ無効化できているかが鍵だ。
彼らがメタのところに到達して彼女を討ってくれるなら、それはそれでいいが。
「……感知」
罠にかかった機獣の残骸を踏み越えながら進む中。
戦闘音が耳に届き、その発生源へと急行する。
場所は通常メタが街を管理している部屋。
どうやら屋敷を襲撃されているにもかかわらず、彼女は避難していないようだ。
自分一人で対処できると考えているのだろう。
「……傲慢」
破壊されて開きっ放しの扉を潜り、白い部屋に入る。
そこにはメタが機獣を翻弄している光景があった。
迫る爪や牙を回避し、徒手空拳で鋼鉄の装甲を容易く引き裂く。
ダンスのように洗練された動きだが、その表情は虫を見るように冷たい。
「……覚悟」
そんな彼女を前に、キリは小さく告げて短刀のような形状の先史兵装【ヴァイブレートエッジ】を太もものホルスターから取り出した。
破壊の判断軸・切除の断片を宿し、およそ切り裂けないものはない逸品だ。
メタの装甲がどうあれ、容易く貫くことができるだろう。
「……斬首」
そしてキリは一体の機獣が攻撃を仕かけたのに合わせ、死角から襲いかかった。
当然、メタは眼前の敵対者の処理を行おうとし、無防備な背中を見せ続ける。
隠形からの一撃。防ぐことなどできるはずがない。
しかし――。
「……何故」
「ふふっ、驕ったね」
機獣への攻撃を途中でとめたメタは短刀の軌道上から消え、認識できないはずのキリの腕をニヤリと笑いながら掴み上げていた。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる