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第一章 未来異星世界
073 当面の対応
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「そんなこんなで私達はメタを危険視してる街の依頼を受け、そのサポートの下、彼女を討つためにこんな荒っぽい真似をするに至った訳デスよ」
一段落。纏めるように言ったオネットの口調は張りがない。
誰がどう見ても失敗以外の何ものでもない以上、仕方のないことだろう。
「ちなみに、機獣達は非殺傷設定にしてたので街の住人達に犠牲者は出てないはずデス。あくまでも目的はメタ唯一人デスからね」
言葉にされると安心感が違うが、それは薄々分かっていた。
やろうと思えば街に甚大な被害を与えることができていたはずの巨大機獣ティアマトを、マグ達の足どめに注力させていたのだから。
何より。犠牲を全く厭わないのであれば、防空システムを停止させた上で大量破壊兵器を街に撃ち込んだ方が早い。一々機獣など作らず。
それをしないのはロボット三原則に似た倫理感が備わっているからだろう。
「……時間を稼いでる風だったのを見るに、オネットは陽動だったんだよな?」
「探索者を多く抱えるこの街は出土品の配備も多く、戦力的に突出してるデスからね。メタも複数の断片を持つデスし、正面切って争うのは不可能デスよ」
「そうなると、取れる手段は限られるな」
人間を殺傷しないという縛りがあれば尚更のことだ。
「はいデス。だから、私が外で派手に暴れて気を引き、仲間がその隙に街の中に侵入してメタを破壊する手筈だったのデスよ」
「…………適材適所では、あったようですね」
作戦そのものは妥当だろうと頷きながらも、結果が結果だからかアテラは中途半端な言い回しと微妙な口調で相槌を打つ。
「あの子、キリは隠形に長けた超越現象と断片を持ってたデスからね。デスが……」
「仕損じてしまった、と」
「そういうことになるデス」
互いに稼いだ時間の中。
キリという名の彼女の仲間はメタの返り討ちに遭い、続いてティアマトもまた何らかの兵器によって破壊されてしまった訳だ。
状況を考えると、オネットのメモリーチップが残っただけマシかもしれない。
「何か、探知に特化した断片を入手していたんだと思うのデス。そうでなければ、キリの存在を見破ることは掌握の断片でも不可能なはずデスから」
収穫としては、その事実を知れたこと、というところか。
しかし、そうなるとオネット達の目的は今後一層のこと達成困難な話になる。
暗殺染みた不意打ちが駄目となると、後はもう力を以って正面から挑むしかない。
この世界最大戦力と思しき存在を相手に。そうなると――。
「……この街の影響力が低い未踏領域から、未知の出土品を得る以外なさそうだな」
「デスね。そして、そうした方針を共有できるようにするためにも、この戦いで得られた情報を伝えに行かなければならないのデスよ」
「行き先は、向学の街・学園都市メイア、だったか」
オネットの言葉を受け、今後のことを考えながら呟く。
メタに時空間転移システムを独占させるのは危うい。
それは理解したし、オネットのメモリーチップを運ぶのも否やはない。
しかし……。
「どうやって自然に街を出るかが問題だな」
「……確かに。位置情報に関しては私が改竄して誤魔化せるにしても乱用は好ましくないデスし、実際に街を離れる大義名分が欲しいところデスね」
オネットは同意するように言い、それから少し黙り込む。
「では、私が架空の依頼を出すデスよ。別の街に物資を運ぶような内容で。ただ、最初は一旦逆方向の街に向かった方がいいかもしれないデス。攪乱のために」
「……そうだな」
真っ直ぐ目的地に目指すのは、色々な意味で危険だ。
ことはマグ達だけの話ではないのだから。
「じゃあ、その方向で行こう。アテラもいいな?」
「はい。ですが、一先ずASHギルドに今回の迷宮遺跡探索で得た出土品を提出するために街には入らなければなりません」
「ああ。ここを離れるならクリルさんにも話を通しておかないといけないしな」
疑われないように、迷惑をかけないように。
その辺りは怠る訳にはいかない。
「けど、ここでメタの呼び出しを受けたらマズいんじゃないの?」
「掌握の断片で、おかー様の中のメモリーチップを見つけられるかもです」
「問題ありません。オネットを分離して、どこかに隠しておけばいいでしょう」
「…………あれ? 分離ってできたのか?」
「超越現象が成長したようです」
常時使用しているようなものだからか、成長が早いのかもしれない。
いずれにしても、つけ替えができるのは便利だ。汎用性が高まる。
「試してみましょうか」
「え? あ、ちょ……あっ……ん……」
アテラが告げた直後、何やら悩ましげな声と共に沈黙するオネット。
掌を上に向けたアテラの手に、ソフトボールぐらいの金属製の球体が出現する。
メモリーチップ単体ではなく、電子頭脳全体を吸収していたようだ。
独立して思考している様子だから当然と言えば当然か。
体を用意してやれれば、元のように単独で活動できるようになるかもしれない。
そんなことをマグが考えている間に、球体はアテラに再び吸収されて消え去る。
「……オネット?」
しかし、少ししても彼女は黙ったままで、マグは心配して問い気味に呼びかけた。
「これが生まれるって感覚デス……?」
対して、呆けたように呟くオネット。
何か途轍もなく衝撃的な体験をしたようだ。
「大丈夫か?」
「あ、だ、だいじょぶデス」
「では、これで問題ありませんね。さあ、街に戻りましょう」
口調の怪しいオネットをスルーして淡々と促すアテラ。
そんな彼女の様子に苦笑しつつ、マグ達はまず迷宮遺跡探索の依頼で使用していた装甲車を回収しに向かったのだった。
一段落。纏めるように言ったオネットの口調は張りがない。
誰がどう見ても失敗以外の何ものでもない以上、仕方のないことだろう。
「ちなみに、機獣達は非殺傷設定にしてたので街の住人達に犠牲者は出てないはずデス。あくまでも目的はメタ唯一人デスからね」
言葉にされると安心感が違うが、それは薄々分かっていた。
やろうと思えば街に甚大な被害を与えることができていたはずの巨大機獣ティアマトを、マグ達の足どめに注力させていたのだから。
何より。犠牲を全く厭わないのであれば、防空システムを停止させた上で大量破壊兵器を街に撃ち込んだ方が早い。一々機獣など作らず。
それをしないのはロボット三原則に似た倫理感が備わっているからだろう。
「……時間を稼いでる風だったのを見るに、オネットは陽動だったんだよな?」
「探索者を多く抱えるこの街は出土品の配備も多く、戦力的に突出してるデスからね。メタも複数の断片を持つデスし、正面切って争うのは不可能デスよ」
「そうなると、取れる手段は限られるな」
人間を殺傷しないという縛りがあれば尚更のことだ。
「はいデス。だから、私が外で派手に暴れて気を引き、仲間がその隙に街の中に侵入してメタを破壊する手筈だったのデスよ」
「…………適材適所では、あったようですね」
作戦そのものは妥当だろうと頷きながらも、結果が結果だからかアテラは中途半端な言い回しと微妙な口調で相槌を打つ。
「あの子、キリは隠形に長けた超越現象と断片を持ってたデスからね。デスが……」
「仕損じてしまった、と」
「そういうことになるデス」
互いに稼いだ時間の中。
キリという名の彼女の仲間はメタの返り討ちに遭い、続いてティアマトもまた何らかの兵器によって破壊されてしまった訳だ。
状況を考えると、オネットのメモリーチップが残っただけマシかもしれない。
「何か、探知に特化した断片を入手していたんだと思うのデス。そうでなければ、キリの存在を見破ることは掌握の断片でも不可能なはずデスから」
収穫としては、その事実を知れたこと、というところか。
しかし、そうなるとオネット達の目的は今後一層のこと達成困難な話になる。
暗殺染みた不意打ちが駄目となると、後はもう力を以って正面から挑むしかない。
この世界最大戦力と思しき存在を相手に。そうなると――。
「……この街の影響力が低い未踏領域から、未知の出土品を得る以外なさそうだな」
「デスね。そして、そうした方針を共有できるようにするためにも、この戦いで得られた情報を伝えに行かなければならないのデスよ」
「行き先は、向学の街・学園都市メイア、だったか」
オネットの言葉を受け、今後のことを考えながら呟く。
メタに時空間転移システムを独占させるのは危うい。
それは理解したし、オネットのメモリーチップを運ぶのも否やはない。
しかし……。
「どうやって自然に街を出るかが問題だな」
「……確かに。位置情報に関しては私が改竄して誤魔化せるにしても乱用は好ましくないデスし、実際に街を離れる大義名分が欲しいところデスね」
オネットは同意するように言い、それから少し黙り込む。
「では、私が架空の依頼を出すデスよ。別の街に物資を運ぶような内容で。ただ、最初は一旦逆方向の街に向かった方がいいかもしれないデス。攪乱のために」
「……そうだな」
真っ直ぐ目的地に目指すのは、色々な意味で危険だ。
ことはマグ達だけの話ではないのだから。
「じゃあ、その方向で行こう。アテラもいいな?」
「はい。ですが、一先ずASHギルドに今回の迷宮遺跡探索で得た出土品を提出するために街には入らなければなりません」
「ああ。ここを離れるならクリルさんにも話を通しておかないといけないしな」
疑われないように、迷惑をかけないように。
その辺りは怠る訳にはいかない。
「けど、ここでメタの呼び出しを受けたらマズいんじゃないの?」
「掌握の断片で、おかー様の中のメモリーチップを見つけられるかもです」
「問題ありません。オネットを分離して、どこかに隠しておけばいいでしょう」
「…………あれ? 分離ってできたのか?」
「超越現象が成長したようです」
常時使用しているようなものだからか、成長が早いのかもしれない。
いずれにしても、つけ替えができるのは便利だ。汎用性が高まる。
「試してみましょうか」
「え? あ、ちょ……あっ……ん……」
アテラが告げた直後、何やら悩ましげな声と共に沈黙するオネット。
掌を上に向けたアテラの手に、ソフトボールぐらいの金属製の球体が出現する。
メモリーチップ単体ではなく、電子頭脳全体を吸収していたようだ。
独立して思考している様子だから当然と言えば当然か。
体を用意してやれれば、元のように単独で活動できるようになるかもしれない。
そんなことをマグが考えている間に、球体はアテラに再び吸収されて消え去る。
「……オネット?」
しかし、少ししても彼女は黙ったままで、マグは心配して問い気味に呼びかけた。
「これが生まれるって感覚デス……?」
対して、呆けたように呟くオネット。
何か途轍もなく衝撃的な体験をしたようだ。
「大丈夫か?」
「あ、だ、だいじょぶデス」
「では、これで問題ありませんね。さあ、街に戻りましょう」
口調の怪しいオネットをスルーして淡々と促すアテラ。
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