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第二章 ガイノイドが管理する街々
098 迷宮遺跡掌握
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「ふう。やってやったデスよ」
それから更に少しして。
リノリウムの床に膝を突いたまま微動だにしなくなってしまった人型機獣達の間をかき分けるようにしながら、アテラがマグ達の下に戻ってきた。
オネットの口調は既に決着がついたと言わんばかりだ。
「何をしたんだ?」
「私の超越現象と断片、忘れたデスか?」
自慢げに質問に質問で返してくるオネットに、彼女の力を思い出す。
支配の判断軸・統率の断片。
それに基づいた超越現象は機械装置を自らの制御下に置くもの。
と言うことは、つまり――。
「もしかして、この迷宮遺跡を掌握したのか?」
「その通りデス」
マグが問い気味に確認すると、彼女が肯定するのに合わせてアテラが頷いた。
以前、オネットが秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアを襲撃した際、彼女はいくつかの迷宮遺跡を利用して巨大機獣ティアマトや多数の尖兵を生産していた。
それを考えると、確かに不可能な話ではないだろう。
だが、前に聞いた限りでは、その力を発動させるには対象との物理的な接触やネットワークの接続が必要だったはずだ。
「どこから……?」
「実はさっきアテラさんにお願いして、あの大量の人型機獣を運搬してくる大型エレベーターをぶち抜いて生産工場に突っ込んで貰ったデスよ」
オネットの返答に合わせ、成果をアピールするように胸を張るアテラ。
先程までの緊迫した状況とのギャップに空気が緩む。
マグもまた緊張を和らげて微笑みをこぼした。
そうしている間にもオネットは説明を続ける。
「リアルタイムで機獣の仕様変更をしている以上、生産工場は間違いなく管理コンピューターとの間にネットワークを構築してるはずデスからね」
「成程な」
迷宮遺跡に侵入した者達の能力を見極め、それを人型機獣に反映する。
監視の目がどこに存在するかは不明だが、得られた情報を生産工場に伝えるラインは存在していなければ道理に合わない。
オネットはそれを逆に利用し、管理コンピューターをクラッキングした訳だ。
……人型機獣や地上の施設からは行えなかったところを見るに、その部分には中枢と繋がるネットワーク環境はなかったのだろう。
「まあ、でも、正直なところ大分ギリギリだったデスよ」
「どういうことだ?」
「もう少し遠かったら【アクセラレーター】の稼働限界時間以内に迷宮遺跡を支配することはできなかったのデス」
人型機獣から情報を得た時点で、大まかにはプランは立てていたのだろう。
しかし、距離と時間の問題で最低限大広間まで来なければならなかった訳だ。
恐らくオネットとしては、安全を見てより近くから行いたかったに違いない。
待ち構えていた人型機獣の戦力が想定以上で、やや成功率が低いところで実行に移さなければならなくなってしまったようだが。
現状のマグ達にこれ以外の攻略法はなかっただろうから、やむを得ないと言えばやむを得ない状況ではあった。
撤退という選択肢はあったが、そうしたとしてもいずれは対価の情報を得るために同じことをしなければならなくなっていたはずだ。
初回だけで済んだ訳だから、結果としては悪くない選択だったと言えよう。
「それより、最深部に物凄いものが眠ってるデスよ」
「も、物凄いもの?」
人型機獣よりもヤバい敵でも存在しているのかと警戒を抱く。
すぐ傍にいるフィアとドリィもまた表情を引き締めた。
しかし――。
「お宝デス!」
続くオネットの言葉に、マグは思わずズッコケそうになった。
勝手に勘違いした方が悪いのだが、無駄に緊張してしまった。
「……で、お宝ってどんな?」
「それは見てのお楽しみデス」
マグの問いに対し、フフフと意味ありげな笑い声を発するオネット。
そんな彼女の様子に小さく嘆息し、問いかけるようにアテラに視線を向ける。
「ええと、その。悪いものではありませんので……」
粗方脅威がなくなったと判断したからか、ほんの少しだけ申し訳なさそうにしながらも彼女はオネットに乗っかった。
マグに害がない時や何か理由がある時は、アテラは割とこういうことをする。
「ともかく、後は最深部まで一直線デスよ」
急かすように言うオネットにもう一度溜息をつく。
いずれにしても、行けば分かるだろう。
先導するように歩き出したアテラの後についていく。
念のため、フィアのシールドは張ったまま。
大型エレベーターの昇降路から一気に降り、音のしない通路を進んでいく。
更に何度か階段を下って最下層へ。
その奥。本来ならば最終防衛ラインだったであろう大広間を抜けると、比較的小さな部屋に至った。ここが最深部らしい。
「これが、お宝?」
「そうデス。今後の情勢を左右するカギなのデスよ」
先程までとは打って変わって真剣な口調で告げるオネット。
そこにあったのは、何本もの導線が繋がった棺のような箱。
そして、その中には少女の形をした機械人形が収められていた。
それから更に少しして。
リノリウムの床に膝を突いたまま微動だにしなくなってしまった人型機獣達の間をかき分けるようにしながら、アテラがマグ達の下に戻ってきた。
オネットの口調は既に決着がついたと言わんばかりだ。
「何をしたんだ?」
「私の超越現象と断片、忘れたデスか?」
自慢げに質問に質問で返してくるオネットに、彼女の力を思い出す。
支配の判断軸・統率の断片。
それに基づいた超越現象は機械装置を自らの制御下に置くもの。
と言うことは、つまり――。
「もしかして、この迷宮遺跡を掌握したのか?」
「その通りデス」
マグが問い気味に確認すると、彼女が肯定するのに合わせてアテラが頷いた。
以前、オネットが秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアを襲撃した際、彼女はいくつかの迷宮遺跡を利用して巨大機獣ティアマトや多数の尖兵を生産していた。
それを考えると、確かに不可能な話ではないだろう。
だが、前に聞いた限りでは、その力を発動させるには対象との物理的な接触やネットワークの接続が必要だったはずだ。
「どこから……?」
「実はさっきアテラさんにお願いして、あの大量の人型機獣を運搬してくる大型エレベーターをぶち抜いて生産工場に突っ込んで貰ったデスよ」
オネットの返答に合わせ、成果をアピールするように胸を張るアテラ。
先程までの緊迫した状況とのギャップに空気が緩む。
マグもまた緊張を和らげて微笑みをこぼした。
そうしている間にもオネットは説明を続ける。
「リアルタイムで機獣の仕様変更をしている以上、生産工場は間違いなく管理コンピューターとの間にネットワークを構築してるはずデスからね」
「成程な」
迷宮遺跡に侵入した者達の能力を見極め、それを人型機獣に反映する。
監視の目がどこに存在するかは不明だが、得られた情報を生産工場に伝えるラインは存在していなければ道理に合わない。
オネットはそれを逆に利用し、管理コンピューターをクラッキングした訳だ。
……人型機獣や地上の施設からは行えなかったところを見るに、その部分には中枢と繋がるネットワーク環境はなかったのだろう。
「まあ、でも、正直なところ大分ギリギリだったデスよ」
「どういうことだ?」
「もう少し遠かったら【アクセラレーター】の稼働限界時間以内に迷宮遺跡を支配することはできなかったのデス」
人型機獣から情報を得た時点で、大まかにはプランは立てていたのだろう。
しかし、距離と時間の問題で最低限大広間まで来なければならなかった訳だ。
恐らくオネットとしては、安全を見てより近くから行いたかったに違いない。
待ち構えていた人型機獣の戦力が想定以上で、やや成功率が低いところで実行に移さなければならなくなってしまったようだが。
現状のマグ達にこれ以外の攻略法はなかっただろうから、やむを得ないと言えばやむを得ない状況ではあった。
撤退という選択肢はあったが、そうしたとしてもいずれは対価の情報を得るために同じことをしなければならなくなっていたはずだ。
初回だけで済んだ訳だから、結果としては悪くない選択だったと言えよう。
「それより、最深部に物凄いものが眠ってるデスよ」
「も、物凄いもの?」
人型機獣よりもヤバい敵でも存在しているのかと警戒を抱く。
すぐ傍にいるフィアとドリィもまた表情を引き締めた。
しかし――。
「お宝デス!」
続くオネットの言葉に、マグは思わずズッコケそうになった。
勝手に勘違いした方が悪いのだが、無駄に緊張してしまった。
「……で、お宝ってどんな?」
「それは見てのお楽しみデス」
マグの問いに対し、フフフと意味ありげな笑い声を発するオネット。
そんな彼女の様子に小さく嘆息し、問いかけるようにアテラに視線を向ける。
「ええと、その。悪いものではありませんので……」
粗方脅威がなくなったと判断したからか、ほんの少しだけ申し訳なさそうにしながらも彼女はオネットに乗っかった。
マグに害がない時や何か理由がある時は、アテラは割とこういうことをする。
「ともかく、後は最深部まで一直線デスよ」
急かすように言うオネットにもう一度溜息をつく。
いずれにしても、行けば分かるだろう。
先導するように歩き出したアテラの後についていく。
念のため、フィアのシールドは張ったまま。
大型エレベーターの昇降路から一気に降り、音のしない通路を進んでいく。
更に何度か階段を下って最下層へ。
その奥。本来ならば最終防衛ラインだったであろう大広間を抜けると、比較的小さな部屋に至った。ここが最深部らしい。
「これが、お宝?」
「そうデス。今後の情勢を左右するカギなのデスよ」
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