「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした

希羽

文字の大きさ
24 / 57

第24話:王女vs魔王令嬢! 決着は「芋の皮むき」で

しおりを挟む
 バチバチバチッ……!

 俺の目の前で、聖なる白いオーラと、禍々しい紫色のオーラが衝突し、火花を散らしている。
 戦場ではない。
 エルフたちが建ててくれた、屋外キッチンの前だ。

「いいこと? 泥棒猫さん。おじ様の胃袋を掴むのは、この国を統べる王家の伝統料理、ロイヤル・キュイジーヌですのよ」

 エプロンを着けたアイリス王女が、包丁を聖剣のように構えて言った。

「あら、笑わせますわね。魔族の味覚は絶対。魔王をも唸らせる魔界料理、ダーク・ガストロノミーこそ、おじ様の疲れを癒やすのですわ」

 同じく黒いフリルのエプロンを着けたローズ(魔王令嬢)が、不気味な色のナイフをジャグリングしながら返す。
 今日の夕食は、魔王から送られてきた食材と、畑で採れたダンジョン芋を使った「特製シチュー」だ。
 だが、その調理担当を巡って、冷戦が勃発していた。

「はぁ……。どっちでもいいから早くしてくれ。シロとクロが腹減らして死にそうだ」

 足元では、二匹の巨獣が「クゥ~ン(まだ?)」と情けない声を出して待機している。

「分かりましたわ! では勝負です!」
「ええ、望むところですわ!」

 二人が睨み合う。
 まな板の上には、泥がついたままの『ダンジョン芋』が山盛りにされている。
 こいつは皮が岩のように硬く、普通の包丁では刃が欠ける厄介な食材だ。

「この芋の皮を、どちらが早く、美しく剥けるか。それで勝負です!」
「受けて立ちます!」

 カッ!
 二人の目が光った。

「行きますわ! 王家秘伝剣術・第一番――閃光剥離ライトニング・ピール!」

 シュパパパパッ!
 アイリス王女の手が残像と化した。
 目にも止まらぬ高速剣技。空気が裂ける音が響く。

「どうです! これが王家の技……あら?」

 王女がドヤ顔で出した芋は、皮は剥けていたが、身が半分くらい削げ落ちてサイコロ状になっていた。

「あらあら、雑ですわね。食材への愛が足りなくてよ? 見ていなさい。――闇夜の斬撃ダークネス・スライサー

 ヒュン。
 ローズが指を鳴らすと、闇の魔力刃が芋を包み込んだ。
 皮だけが綺麗に剥がれ落ちる……はずだったが、魔力が強すぎて芋が黒焦げになった。

「ああっ!? 火加減が強すぎましたわ!」
「おじ様の夕食を消し炭にする気ですの!?」
「貴女だって食べる所がなくなってるじゃない!」

 ギャーギャーと騒ぎながら、包丁を振り回す二人。
 芋の皮が飛び散り、キッチンが戦場と化していく。
 配信のコメント欄は、もはやスポーツ観戦のノリだ。

『料理(物理攻撃)』
『食材が泣いてるぞ』
『王女の剣技、無駄遣いすぎる』
『魔王令嬢、それ料理じゃなくて火葬なんよ』
『おっさん、そろそろ止めてやれw』

「……いい加減にしろ」

 俺の堪忍袋の緒が切れた。
 食材を粗末にする奴は、魔王だろうが王族だろうが許さん。

「どけ。俺がやる」

 俺は二人の間に割って入り、カゴに入った残りの芋(約50個)を空中に放り投げた。

「えっ? 投げてどうしますの?」
「見てろ。グラビティ・スピン」

 ブォンッ!!
 空中に浮いた芋たちが、超高速で自転を始めた。
 遠心力と、表面にかけた局所的な重力摩擦。
 それらが完璧に計算された角度で作用する。

 シュルルルルルッ……!

 一瞬だった。

 50個の芋の皮が、まるで服を脱ぐように一斉に剥がれ落ち、中からツルツルの黄色い身が現れた。
 身は一ミリも削れていない。完璧な球体だ。

「ウォッシュ」

 水魔法で瞬時に泥と皮を洗い流し、カゴにストンと着地させる。
 所要時間、3秒。

「「…………はい?」」

 王女とローズが、口をポカンと開けて固まった。
 視聴者も固まった。

『えぇ……』
『今、何が起きた?』
『全自動皮剥き機(人間国宝級)』
『重力魔法って便利グッズだったのか』
『次元が違いすぎる』
『これもう、おっさんが一人でやった方が早くね?』

「あ、あわわ……」
「お、おじ様……素敵……!」

 ローズがうっとりとした目で俺を見つめ、アイリス王女が敗北感に打ちひしがれて膝をつく。

「さあ、下ごしらえは終わったぞ。煮込むのは任せていいんだな?」
「は、はいっ! もちろんですわ!」
「命に代えても美味しくします!」

 圧倒的な実力差を見せつけられた二人は、今度こそ大人しくなり、仲良く(?)鍋をかき混ぜ始めた。

 やれやれ。
 スローライフをするにも、これだけのスキルが必要とはな。

 だが、本当の戦いはこれからだった。
 鍋に投入される、魔界特産の「あの食材」が、とんでもないポテンシャルを秘めていたのだ。

「……なんか、鍋からすごい色の煙が出てないか?」

 俺は不安げに、紫色の湯気を上げる鍋を覗き込んだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。 だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ! 捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……? 無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!

「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう

ムラサメ
恋愛
​漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。 死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。 しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。 向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。 一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...