「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした

希羽

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第24話:王女vs魔王令嬢! 決着は「芋の皮むき」で

 バチバチバチッ……!

 俺の目の前で、聖なる白いオーラと、禍々しい紫色のオーラが衝突し、火花を散らしている。
 戦場ではない。
 エルフたちが建ててくれた、屋外キッチンの前だ。

「いいこと? 泥棒猫さん。おじ様の胃袋を掴むのは、この国を統べる王家の伝統料理、ロイヤル・キュイジーヌですのよ」

 エプロンを着けたアイリス王女が、包丁を聖剣のように構えて言った。

「あら、笑わせますわね。魔族の味覚は絶対。魔王をも唸らせる魔界料理、ダーク・ガストロノミーこそ、おじ様の疲れを癒やすのですわ」

 同じく黒いフリルのエプロンを着けたローズ(魔王令嬢)が、不気味な色のナイフをジャグリングしながら返す。
 今日の夕食は、魔王から送られてきた食材と、畑で採れたダンジョン芋を使った「特製シチュー」だ。
 だが、その調理担当を巡って、冷戦が勃発していた。

「はぁ……。どっちでもいいから早くしてくれ。シロとクロが腹減らして死にそうだ」

 足元では、二匹の巨獣が「クゥ~ン(まだ?)」と情けない声を出して待機している。

「分かりましたわ! では勝負です!」
「ええ、望むところですわ!」

 二人が睨み合う。
 まな板の上には、泥がついたままの『ダンジョン芋』が山盛りにされている。
 こいつは皮が岩のように硬く、普通の包丁では刃が欠ける厄介な食材だ。

「この芋の皮を、どちらが早く、美しく剥けるか。それで勝負です!」
「受けて立ちます!」

 カッ!
 二人の目が光った。

「行きますわ! 王家秘伝剣術・第一番――閃光剥離ライトニング・ピール!」

 シュパパパパッ!
 アイリス王女の手が残像と化した。
 目にも止まらぬ高速剣技。空気が裂ける音が響く。

「どうです! これが王家の技……あら?」

 王女がドヤ顔で出した芋は、皮は剥けていたが、身が半分くらい削げ落ちてサイコロ状になっていた。

「あらあら、雑ですわね。食材への愛が足りなくてよ? 見ていなさい。――闇夜の斬撃ダークネス・スライサー

 ヒュン。
 ローズが指を鳴らすと、闇の魔力刃が芋を包み込んだ。
 皮だけが綺麗に剥がれ落ちる……はずだったが、魔力が強すぎて芋が黒焦げになった。

「ああっ!? 火加減が強すぎましたわ!」
「おじ様の夕食を消し炭にする気ですの!?」
「貴女だって食べる所がなくなってるじゃない!」

 ギャーギャーと騒ぎながら、包丁を振り回す二人。
 芋の皮が飛び散り、キッチンが戦場と化していく。
 配信のコメント欄は、もはやスポーツ観戦のノリだ。

『料理(物理攻撃)』
『食材が泣いてるぞ』
『王女の剣技、無駄遣いすぎる』
『魔王令嬢、それ料理じゃなくて火葬なんよ』
『おっさん、そろそろ止めてやれw』

「……いい加減にしろ」

 俺の堪忍袋の緒が切れた。
 食材を粗末にする奴は、魔王だろうが王族だろうが許さん。

「どけ。俺がやる」

 俺は二人の間に割って入り、カゴに入った残りの芋(約50個)を空中に放り投げた。

「えっ? 投げてどうしますの?」
「見てろ。グラビティ・スピン」

 ブォンッ!!
 空中に浮いた芋たちが、超高速で自転を始めた。
 遠心力と、表面にかけた局所的な重力摩擦。
 それらが完璧に計算された角度で作用する。

 シュルルルルルッ……!

 一瞬だった。

 50個の芋の皮が、まるで服を脱ぐように一斉に剥がれ落ち、中からツルツルの黄色い身が現れた。
 身は一ミリも削れていない。完璧な球体だ。

「ウォッシュ」

 水魔法で瞬時に泥と皮を洗い流し、カゴにストンと着地させる。
 所要時間、3秒。

「「…………はい?」」

 王女とローズが、口をポカンと開けて固まった。
 視聴者も固まった。

『えぇ……』
『今、何が起きた?』
『全自動皮剥き機(人間国宝級)』
『重力魔法って便利グッズだったのか』
『次元が違いすぎる』
『これもう、おっさんが一人でやった方が早くね?』

「あ、あわわ……」
「お、おじ様……素敵……!」

 ローズがうっとりとした目で俺を見つめ、アイリス王女が敗北感に打ちひしがれて膝をつく。

「さあ、下ごしらえは終わったぞ。煮込むのは任せていいんだな?」
「は、はいっ! もちろんですわ!」
「命に代えても美味しくします!」

 圧倒的な実力差を見せつけられた二人は、今度こそ大人しくなり、仲良く(?)鍋をかき混ぜ始めた。

 やれやれ。
 スローライフをするにも、これだけのスキルが必要とはな。

 だが、本当の戦いはこれからだった。
 鍋に投入される、魔界特産の「あの食材」が、とんでもないポテンシャルを秘めていたのだ。

「……なんか、鍋からすごい色の煙が出てないか?」

 俺は不安げに、紫色の湯気を上げる鍋を覗き込んだ。
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