「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした

希羽

文字の大きさ
46 / 57

第46話:ライバルが登場したが、変身の光(物理)で勝負がついた

しおりを挟む
 ここ数日、聖域周辺の村々では、奇妙な「ヒーロー」の話題で持ちきりだった。

「いやあ、助かったよ。ピンクのドレスを着た女の子が、壊れた橋を片手で直してくれたんだ」
「ウチなんて、畑を荒らす猪を『月に代わって土に還れ!』って叫んで、ピンク色のクワで地平線の彼方まで打ち飛ばしてくれたよ」

 マジカル・フタバ(7歳)。
 俺が冗談半分で許可した「魔法少女」活動は、予想以上に地域に貢献していた。
 ただし、解決方法がすべて「物理」と「超火力」であることを除けば。
 そんなある日。

 聖域の上空に、巨大な影が落ちた。

 ゴゴゴゴゴ……!

 雲を割って現れたのは、全長100メートルはある巨大な魔導飛行船だった。
 船体には、隣国とはまた別の、魔法先進国の紋章が描かれている。

「なんだ、回覧板でも持ってきたのか?」
「ジン殿、あれは戦闘艦ですぞ……」

 俺とガストロンが見上げる中、飛行船から一人の少年が、魔法陣を使って優雅に降下してきた。
 銀髪に青い瞳。歳はフタバと同じくらいか。
 身に纏うのは、いかにも高そうな魔導士のローブだ。

「フッ……ここが噂の『聖域』か。魔力の質は悪くない」

 少年は地面に着地すると、マントを翻して俺たちをビシッと指差した。

「僕は天才魔導少年、レオンハルト・ヴァン・アークライトだ! ここに『マジカル・フタバ』という名の、生意気な魔法使いがいると聞いてやってきた!」

 ……なるほど。
 近隣で有名になりすぎたせいで、他国の天才児のライバル心を刺激してしまったらしい。
 いわゆる「道場破り」だ。

「パパ、だれー?」

 そこへ、ちょうどパトロール(畑仕事)から帰ってきたフタバが現れた。
 泥だらけの普段着に、ポシェットを下げている。

「君がフタバか! 僕と勝負しろ!」

 レオンハルトが叫ぶ。

「魔法先進国の天才である僕と、どちらが真の『魔法の申し子』か、決着をつけるんだ!」

 フタバは小首を傾げたが、すぐに「勝負」という言葉に反応して目を輝かせた。

「いいよ! フタバ、まけない!」
「フッ、いい度胸だ。準備はいいか?」

 レオンハルトが杖を構え、膨大な魔力を練り上げる。
 子供とは思えない、天才特有の洗練された魔力だ。普通の冒険者なら即死レベルだろう。
 だが、フタバは慌てて手を突き出した。

「まって!」
「なんだ? 命乞いか?」
「ちがうよ。……へんしん、まだだもん」

 フタバはポシェットから、例の「魔法のステッキ(魔改造された棒きれ)」を取り出した。

「変身しないと、本気だせないの。待っててくれる?」

 上目遣いでのお願い。
 レオンハルトはフッと鼻で笑い、杖を下ろした。

「いいだろう。僕は紳士だからな。君が最高の万全な状態になってから、正面から叩き潰してやるよ。さあ、変身したまえ!」

 ……あ、死んだなこいつ。
 俺はそっと、ガストロンと共に岩陰に隠れた。
 レオンハルト君は知らないのだ。変身シーンこそが、魔法少女における最大の攻撃であることを。

「ありがと! いくよー!」

 フタバがステッキを高く掲げた。

「マジカル・農耕・パワー! メイクアップ!!」

 カッッッッッ!!!!!!

 世界が白に染まった。
 フタバを中心にして、核融合炉が暴走したような超高密度の「魔力光」が全方位に炸裂した。
 ただの光ではない。
 神の聖なる波動と、魔王の闇のオーラが混ざり合い、さらに俺の重力波が乗った、物理質量を持った閃光だ。

「え、なに……うわぁぁぁぁぁぁッ!?!?!?」

 レオンハルトの余裕の声が、絶叫に変わった。

「め、目がぁぁぁ! 熱いぃぃぃ! なんだこの光!? 圧力が……ぐわぁぁぁッ!!」

 ドゴォォォォンッ!!!

 衝撃波がレオンハルトを直撃した。
 彼は防御魔法を展開しようとしたが、そんなものは紙屑のように消し飛び、体ごと後方へ吹き飛ばされた。
 そのまま、彼が乗ってきた上空の飛行船まで一直線にカッ飛び、船体に激突して撃墜させた。

 ズズズンッ……!

 墜落する飛行船。
 黒焦げになって庭に落ちてくる天才少年。

 光が収まると、そこには――
 ピンクのフリフリドレスに着替え、ポーズを決めたフタバが立っていた。

「愛と野菜の魔法少女、マジカル・フタバ! 参上!」

 シーン……。

 目の前には、白目を剥いてピクピク痙攣しているレオンハルトが転がっている。
 フタバは不思議そうに彼を見下ろした。

「あれ? お兄ちゃん、ねちゃったの? 勝負は?」
「……フタバ」

 俺は岩陰から出て、娘の肩に手を置いた。

「もう勝負はついたんだ。お前の勝ちだ」
「えっ、ほんと!? やったー!」

 フタバは無邪気に喜んでいる。彼女は気づいていない。
 自分が放った「変身の余波」だけで、最強の天才を戦闘不能にしたことに。
 その後。
 ローズの回復魔法で蘇生したレオンハルトは、ガタガタと震えながらフタバに土下座した。

「ま、参りました……! 変身の光だけで僕を倒すなんて……格が違いすぎる!」
「お兄ちゃん、よわいね?」
「はい! 僕は井の中の蛙でした! どうか僕を……僕を弟子にしてください! 師匠!」
「ししょー?」
「そうです! あなたのその『覇気』を学びたいのです!」

 こうして、フタバに初めての「弟子」ができた。
 天才魔導少年レオンハルト。
 彼は以後、母国に帰らず聖域に居候し、フタバの後ろをついて回る「魔法少女の付き人(兼荷物持ち)」として生きることになるのだった。

 ……ちなみに、彼の実家(皇帝)から「息子を返せ」と軍隊が来たが、フタバが「変身」しようとしただけで全員逃げ帰ったらしい。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。 だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ! 捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……? 無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!

「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう

ムラサメ
恋愛
​漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。 死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。 しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。 向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。 一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...