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第52話:お土産は、魔界の温泉権
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楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ。
数日間の魔界・里帰り旅行を終え、俺たちは帰路につこうとしていた。
魔王城の正門前。
そこには、この世の終わりかのような光景が広がっていた。
「うおおおおぉぉぉんッ!! 行かないでくれぇぇぇッ!!」
魔王ヴェルザードが、地面に突っ伏して号泣していた。
魔王の感情と魔界の気候はリンクしている。彼の涙は空に暗雲を呼び寄せ、ザァーッ!! という猛烈な勢いで雨を降らせていた。
ただの雨ではない。強力な酸性雨だ。
ジュッ……ジュワワ……。
「きゃあッ! ドレスが溶けますわ! お父様、泣き止んでくださいまし!」
ローズが悲鳴を上げながら結界を張る。
迷惑極まりない別れの挨拶だ。
「フタバちゃん! あと百年! いや一週間でいいから滞在してくれ! じいじと『世界征服ごっこ』をして遊ぼう!」
「じいじ、泣かないで? フタバ、また来るから」
フタバ(7歳)が小さな手で魔王の頭を撫でてやる。
すると、魔王は「ハッ!」と顔を上げ、すがりつくように言った。
「本当か!? 約束だぞ!? ……そうだ、いっそ城ごと聖域に引っ越そうか?」
「却下だ」
俺は即座に釘を刺した。
これ以上、近所迷惑な住人が増えてたまるか。
「さて、魔王。世話になったな。飯も美味かったし、いい休暇になった」
俺が礼を言うと、魔王は涙を拭い、威厳(?)を取り戻して立ち上がった。
「うむ……ジン殿よ。孫と娘を任せるのだ、礼など不要。……だが、手ぶらで帰すわけにはいかぬな」
魔王がパチンと指を鳴らすと、ヴォルカンら四天王たちが、山のような荷物を運んできた。
最高級の『魔界マンモス肉』、『マグマ・トマト』の苗、そして魔界の珍しい鉱石や魔道具の数々だ。
「持てるだけ持っていくがよい。それと、これを受け取ってくれ」
魔王が差し出したのは、燃えるような赤い印章が押された羊皮紙だった。
「これは?」
「『魔界大温泉・永代使用権』だ。これを聖域の地面に貼れば、いつでも魔界の源泉から直引きで温泉が湧き出るように術式を組んでおいた」
「……!」
俺の目が輝いた。
あのマグマ温泉、効能は抜群だったのだ。それを自宅で楽しめるだと?
最高の土産じゃないか。
「ありがたく頂戴する。……じゃあな、じいじ」
「うむ! 達者でな! フタバちゃん、毎日連絡するのだぞー!」
魔王が大きく手を振る。
背後では、ヴォルカンやオークのコックたち、そして遠くの岩山からはポチの兄弟たちも、名残惜しそうに遠吠えを上げていた。
「バイバーイ!」
フタバが元気に手を振り返す。
ローズが展開した『界渡りの門』が開き、俺たちは光の中へと足を踏み入れた。
――ヒュンッ。
一瞬の浮遊感の後。
俺たちは、見慣れたログハウスの庭に戻っていた。
「……帰ってきたか」
鼻をくすぐるのは、硫黄の臭いではなく、土と緑の優しい香り。
空は赤くなく、澄み渡るような青空だ。
「ふぅ……やっぱりこっちの空気は美味しいですわ」
アイリスが大きく伸びをする。
「あっちも刺激的でしたけど、お肌のためには聖域が一番ですわね」
「私もー! やっぱりお昼寝するなら、ここの芝生が最高!」
ルミナ(神様)は早速、シロ(フェンリル)の背中に飛びついてモフモフし始めた。
シロとクロも「やれやれ」といった顔だが、尻尾は嬉しそうに揺れている。
「さて、と」
俺は荷物を置き、リビングへと向かった。
冷蔵庫から、キンキンに冷えた麦茶を取り出す。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……プハーッ!
「……うめぇ」
五臓六腑に染み渡る。
マンモス肉もマグマ・トマトも美味かったが、やはり日常の味が一番だ。
これぞスローライフ。旅の疲れが溶けていくようだ。
「パパ! おみやげ、かたづけるー!」
フタバがリュックの中身をテーブルに広げ始めた。
お菓子の空き箱や、綺麗な石ころに混じって、見慣れない笛が転がり出た。
ドクロの形をした、不気味な黒いホイッスルだ。
「ん? なんだこれ? 買った覚えはないぞ」
「えっとね、ヴォルカンおじちゃんがくれたの!」
フタバが無邪気に言う。
「『さみしくなったら、これを吹いてね。いつでもあそびにいくから』って!」
「……は?」
俺は嫌な予感がして、その笛を鑑定した。
【四天王召喚の笛】
効果:吹くと魔界の四天王が強制召喚される。次元を超えて、たとえ風呂に入っている最中でも即座に駆けつける緊急ホットライン。
「…………」
あいつら、俺の娘に何を持たせてやがる。
こんなの吹いたら、聖域がまたカオスになるじゃないか。
「フタバ、それはパパが預かっておく」
「えー! 吹きたいー!」
「ダメだ。近所迷惑になる」
俺は笛を没収し、厳重に封印(タンスの奥)した。
だが、フタバのポケットからは、他にも「ポチの兄弟を呼ぶ骨」やら「オークシェフの出張料理チケット」やらが次々と出てくる。
「まあ、いいか」
俺は苦笑いした。
最強の野菜(マグマ・トマト)も手に入ったし、最高の温泉も引けるようになった。
聖域の暮らしは、これでまた一段と豊かに、そして賑やかになるだろう。
「今日の晩飯は、魔界マンモスのカツカレーにするか」
「わーい! カレー!」
フタバの歓声が響く。
俺たちの「最強スローライフ」は、まだまだ終わらない。
次はどんな騒動が舞い込んでくるのか。
……まあ、何が来ても、美味い飯と快適な家があれば、どうとでもなるだろう。
俺は麦茶の最後の一口を飲み干し、愛用のクワを手に取った。
さあ、仕事に戻るとするか。
数日間の魔界・里帰り旅行を終え、俺たちは帰路につこうとしていた。
魔王城の正門前。
そこには、この世の終わりかのような光景が広がっていた。
「うおおおおぉぉぉんッ!! 行かないでくれぇぇぇッ!!」
魔王ヴェルザードが、地面に突っ伏して号泣していた。
魔王の感情と魔界の気候はリンクしている。彼の涙は空に暗雲を呼び寄せ、ザァーッ!! という猛烈な勢いで雨を降らせていた。
ただの雨ではない。強力な酸性雨だ。
ジュッ……ジュワワ……。
「きゃあッ! ドレスが溶けますわ! お父様、泣き止んでくださいまし!」
ローズが悲鳴を上げながら結界を張る。
迷惑極まりない別れの挨拶だ。
「フタバちゃん! あと百年! いや一週間でいいから滞在してくれ! じいじと『世界征服ごっこ』をして遊ぼう!」
「じいじ、泣かないで? フタバ、また来るから」
フタバ(7歳)が小さな手で魔王の頭を撫でてやる。
すると、魔王は「ハッ!」と顔を上げ、すがりつくように言った。
「本当か!? 約束だぞ!? ……そうだ、いっそ城ごと聖域に引っ越そうか?」
「却下だ」
俺は即座に釘を刺した。
これ以上、近所迷惑な住人が増えてたまるか。
「さて、魔王。世話になったな。飯も美味かったし、いい休暇になった」
俺が礼を言うと、魔王は涙を拭い、威厳(?)を取り戻して立ち上がった。
「うむ……ジン殿よ。孫と娘を任せるのだ、礼など不要。……だが、手ぶらで帰すわけにはいかぬな」
魔王がパチンと指を鳴らすと、ヴォルカンら四天王たちが、山のような荷物を運んできた。
最高級の『魔界マンモス肉』、『マグマ・トマト』の苗、そして魔界の珍しい鉱石や魔道具の数々だ。
「持てるだけ持っていくがよい。それと、これを受け取ってくれ」
魔王が差し出したのは、燃えるような赤い印章が押された羊皮紙だった。
「これは?」
「『魔界大温泉・永代使用権』だ。これを聖域の地面に貼れば、いつでも魔界の源泉から直引きで温泉が湧き出るように術式を組んでおいた」
「……!」
俺の目が輝いた。
あのマグマ温泉、効能は抜群だったのだ。それを自宅で楽しめるだと?
最高の土産じゃないか。
「ありがたく頂戴する。……じゃあな、じいじ」
「うむ! 達者でな! フタバちゃん、毎日連絡するのだぞー!」
魔王が大きく手を振る。
背後では、ヴォルカンやオークのコックたち、そして遠くの岩山からはポチの兄弟たちも、名残惜しそうに遠吠えを上げていた。
「バイバーイ!」
フタバが元気に手を振り返す。
ローズが展開した『界渡りの門』が開き、俺たちは光の中へと足を踏み入れた。
――ヒュンッ。
一瞬の浮遊感の後。
俺たちは、見慣れたログハウスの庭に戻っていた。
「……帰ってきたか」
鼻をくすぐるのは、硫黄の臭いではなく、土と緑の優しい香り。
空は赤くなく、澄み渡るような青空だ。
「ふぅ……やっぱりこっちの空気は美味しいですわ」
アイリスが大きく伸びをする。
「あっちも刺激的でしたけど、お肌のためには聖域が一番ですわね」
「私もー! やっぱりお昼寝するなら、ここの芝生が最高!」
ルミナ(神様)は早速、シロ(フェンリル)の背中に飛びついてモフモフし始めた。
シロとクロも「やれやれ」といった顔だが、尻尾は嬉しそうに揺れている。
「さて、と」
俺は荷物を置き、リビングへと向かった。
冷蔵庫から、キンキンに冷えた麦茶を取り出す。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……プハーッ!
「……うめぇ」
五臓六腑に染み渡る。
マンモス肉もマグマ・トマトも美味かったが、やはり日常の味が一番だ。
これぞスローライフ。旅の疲れが溶けていくようだ。
「パパ! おみやげ、かたづけるー!」
フタバがリュックの中身をテーブルに広げ始めた。
お菓子の空き箱や、綺麗な石ころに混じって、見慣れない笛が転がり出た。
ドクロの形をした、不気味な黒いホイッスルだ。
「ん? なんだこれ? 買った覚えはないぞ」
「えっとね、ヴォルカンおじちゃんがくれたの!」
フタバが無邪気に言う。
「『さみしくなったら、これを吹いてね。いつでもあそびにいくから』って!」
「……は?」
俺は嫌な予感がして、その笛を鑑定した。
【四天王召喚の笛】
効果:吹くと魔界の四天王が強制召喚される。次元を超えて、たとえ風呂に入っている最中でも即座に駆けつける緊急ホットライン。
「…………」
あいつら、俺の娘に何を持たせてやがる。
こんなの吹いたら、聖域がまたカオスになるじゃないか。
「フタバ、それはパパが預かっておく」
「えー! 吹きたいー!」
「ダメだ。近所迷惑になる」
俺は笛を没収し、厳重に封印(タンスの奥)した。
だが、フタバのポケットからは、他にも「ポチの兄弟を呼ぶ骨」やら「オークシェフの出張料理チケット」やらが次々と出てくる。
「まあ、いいか」
俺は苦笑いした。
最強の野菜(マグマ・トマト)も手に入ったし、最高の温泉も引けるようになった。
聖域の暮らしは、これでまた一段と豊かに、そして賑やかになるだろう。
「今日の晩飯は、魔界マンモスのカツカレーにするか」
「わーい! カレー!」
フタバの歓声が響く。
俺たちの「最強スローライフ」は、まだまだ終わらない。
次はどんな騒動が舞い込んでくるのか。
……まあ、何が来ても、美味い飯と快適な家があれば、どうとでもなるだろう。
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さあ、仕事に戻るとするか。
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