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第3話
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「久しぶりだな、たかひろ」
待ち合わせの居酒屋に現れた堀木は見る影もなく肥え太っていた。
彼らは二人並んでカウンター席で飲みながら近況を語り合った。
そこで知ったことは、彼の会社は倒産して借金を抱え、妻子にも逃げられた。
娘には3年以上会っておらず、養育費だけを振り込み続ける日々を送っているということだった。
「金の切れ目は縁の切れ目っていうのかなあ、俺をチヤホヤしていた連中も、会社が傾いた途端に誰もいなくなっちゃったよ」
堀木は自分の注文したウイスキーのグラスを眺めながら寂しげに笑って言った。
たかひろは黙って焼酎を飲んでいた。
「お前が会ってくれなかったら、どうしようかと思った」
「どういう意味です?」
「それは、」
堀木はウイスキーを一気に飲み干して言った。
「今月の娘の養育費が足りないんだ」
「それで?その金をおいらに借りに来たと、そういうことなんですね」
「つまりは…そういうことなんだ」
たかひろはため息をついて、頭を抱えた。
この頭痛は悪酔いしたせいだろうか。
堀木さんのこんな情けない姿、見たくなかった。
おいらに金を借りに来るなんて。
「踏み倒せばいいじゃないですか、養育費なんて。
離婚して奥さんが子供を引き取ったなら、もう他人でしょ?
会社の負債がどれだけか知りませんけど、あなたに他人の養育費のことを考える余裕なんてあるんですか?」
「人の娘のこと他人だなんて言うなよ…。」
堀木は喉の奥から絞り出すような声で呟いた。
「いや、おいらが言いたいのはね、堀木さん自身の負債を先にどうにかしたほうがいいということなんです。
娘さんにずっと会ってないでしょ?
養育費だけ出して一切顔を合わせない。
それって父娘って言うんですか?」
「わかった…もういいよ、俺が悪かった」
堀木は消え入りそうな声で呟いた。
「貸さないとはまだ言ってないですよね?
おいらが納得する理由を聞かせてくださいよ。
それを聞いて、納得すれば貸しますし、納得できなければ貸さない、それだけのことです。
で、わざわざ養育費を借りに来た理由って、なんなんですか?」
「お前にわかるかなあ…この気持ち…。」
堀木は2杯目のウイスキーをちびちび飲みながら、少しずつ語り始めた。
もう既に、かなり酔いが廻っているようだった。
「確かにお前の言う通り、ずっと会ってない子供なんてもう他人みたいなもんなんだけどさ、養育費辞めたら本当に他人になっちまうじゃないか。
子供にしてやれる事って言ったら、もうこれぐらいしかないだろ?」
「へー、なるほどですね。
あなたからお金を除いたら、なにも残りませんからね。」
たかひろは腕を組んで、吐き捨てるように言った。
彼にとっては、なぜだかわからないが、堀木のことが未練がましくて女々しく、情けない男のように感じられ、薄気味悪く思った。
内心、とてもイライラしていた。
「だからそんな言い方するなって言ってるだろ!」
堀木は声を荒げ、たかひろを睨みつけた。
顔色がかなり紅潮している。
「まあ…。養育費ってのは保護者の義務ですからね。
まあいいでしょう、とりあえず今晩はこの辺にしといた方がいいんじゃないですか?」
たかひろは堀木の怒声には動じずに、残りの焼酎をちびちび飲みながら言った。
「なあ…頼むよ…。
頼りにできるの、お前しかいないんだってば…。」
堀木は目に涙を浮かべていた。
たかひろは、黙ってため息をついた。
情けない、ほんとうに情けない。
こんな惨めな姿、見たくなかった。
堀木さんにはよくしてもらった恩がないわけではないが、いつでも頼りになる、憧れの人でいて欲しかった。
ただ、それだけのことなのに、なぜこんなにも苛立ってしまうのか。
「わかった、わかった、わかりましたよ。
あなた飲み過ぎですから、今晩はおいらの部屋に泊まりなさい。
お金のことはまた考えますから…ね?」
たかひろは堀木の肩を抱き、顔を覗き込んで言った。
堀木は黙って頷いた。
待ち合わせの居酒屋に現れた堀木は見る影もなく肥え太っていた。
彼らは二人並んでカウンター席で飲みながら近況を語り合った。
そこで知ったことは、彼の会社は倒産して借金を抱え、妻子にも逃げられた。
娘には3年以上会っておらず、養育費だけを振り込み続ける日々を送っているということだった。
「金の切れ目は縁の切れ目っていうのかなあ、俺をチヤホヤしていた連中も、会社が傾いた途端に誰もいなくなっちゃったよ」
堀木は自分の注文したウイスキーのグラスを眺めながら寂しげに笑って言った。
たかひろは黙って焼酎を飲んでいた。
「お前が会ってくれなかったら、どうしようかと思った」
「どういう意味です?」
「それは、」
堀木はウイスキーを一気に飲み干して言った。
「今月の娘の養育費が足りないんだ」
「それで?その金をおいらに借りに来たと、そういうことなんですね」
「つまりは…そういうことなんだ」
たかひろはため息をついて、頭を抱えた。
この頭痛は悪酔いしたせいだろうか。
堀木さんのこんな情けない姿、見たくなかった。
おいらに金を借りに来るなんて。
「踏み倒せばいいじゃないですか、養育費なんて。
離婚して奥さんが子供を引き取ったなら、もう他人でしょ?
会社の負債がどれだけか知りませんけど、あなたに他人の養育費のことを考える余裕なんてあるんですか?」
「人の娘のこと他人だなんて言うなよ…。」
堀木は喉の奥から絞り出すような声で呟いた。
「いや、おいらが言いたいのはね、堀木さん自身の負債を先にどうにかしたほうがいいということなんです。
娘さんにずっと会ってないでしょ?
養育費だけ出して一切顔を合わせない。
それって父娘って言うんですか?」
「わかった…もういいよ、俺が悪かった」
堀木は消え入りそうな声で呟いた。
「貸さないとはまだ言ってないですよね?
おいらが納得する理由を聞かせてくださいよ。
それを聞いて、納得すれば貸しますし、納得できなければ貸さない、それだけのことです。
で、わざわざ養育費を借りに来た理由って、なんなんですか?」
「お前にわかるかなあ…この気持ち…。」
堀木は2杯目のウイスキーをちびちび飲みながら、少しずつ語り始めた。
もう既に、かなり酔いが廻っているようだった。
「確かにお前の言う通り、ずっと会ってない子供なんてもう他人みたいなもんなんだけどさ、養育費辞めたら本当に他人になっちまうじゃないか。
子供にしてやれる事って言ったら、もうこれぐらいしかないだろ?」
「へー、なるほどですね。
あなたからお金を除いたら、なにも残りませんからね。」
たかひろは腕を組んで、吐き捨てるように言った。
彼にとっては、なぜだかわからないが、堀木のことが未練がましくて女々しく、情けない男のように感じられ、薄気味悪く思った。
内心、とてもイライラしていた。
「だからそんな言い方するなって言ってるだろ!」
堀木は声を荒げ、たかひろを睨みつけた。
顔色がかなり紅潮している。
「まあ…。養育費ってのは保護者の義務ですからね。
まあいいでしょう、とりあえず今晩はこの辺にしといた方がいいんじゃないですか?」
たかひろは堀木の怒声には動じずに、残りの焼酎をちびちび飲みながら言った。
「なあ…頼むよ…。
頼りにできるの、お前しかいないんだってば…。」
堀木は目に涙を浮かべていた。
たかひろは、黙ってため息をついた。
情けない、ほんとうに情けない。
こんな惨めな姿、見たくなかった。
堀木さんにはよくしてもらった恩がないわけではないが、いつでも頼りになる、憧れの人でいて欲しかった。
ただ、それだけのことなのに、なぜこんなにも苛立ってしまうのか。
「わかった、わかった、わかりましたよ。
あなた飲み過ぎですから、今晩はおいらの部屋に泊まりなさい。
お金のことはまた考えますから…ね?」
たかひろは堀木の肩を抱き、顔を覗き込んで言った。
堀木は黙って頷いた。
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