運命だと決めるなら

白米士椏

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第一部 光の序章

第4話 火の能力者

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「あなたは一体…? 何者なんですか…?」

「教えてくれるとでも思ってるの?」

クスクスと悪戯に笑い続ける女性。

次から次へと起こる展開に、優美の頭はもうパンクしそうだ。
だが、この相手は多分、闇の勢力と言われている相手なのだろうということはなんとなく雰囲気で分かった。


次から次へと起きる出来事についていけないにしろ、身の危険であることは本能的に理解し、優美はクロスを握りしめる。
先程みたく変身できれば…、闘えるのかもしれない。
そう思うが、クロスは全く反応を示さない。

「どうして…? さっきは変身できたのに!」

戸惑う優美に構わず、彼女は高らかに笑う。
 
「覚醒したばかりで悪いけれど、ここで終わらせてあげるわ」

相手が片腕を上げ構えれば、どす黒い光が集まり、優美めがけて勢いよく襲ってきた。
成す術もなく優美はギュッと目をつむる。

「っ…!」


攻撃が当たったと思いきや、何も痛みを感じない。
恐る恐るゆっくりと目を開けると、そこには優美を庇って傷だらけになった温人が立っていた。

「坂上くん!?」

「くっそ…、気付くのが遅かった…、俺としたことが…」

「坂上くん、坂上くん…!」

傷だらけの温人を見て、更に楽しそうに笑う悪魔のような女性。

「バカね! 自ら飛び込んでくるなんて!」

「そんな…、どうしてこんなことに」

突然形見であるクロスを奪われそうになって。
死ぬ予定だったと言われて。
訳の分からない展開についていけなくて。
平凡な日常を送るんだと思っていたのに。
自身には関係のない事なのに。

――でも、それでも


坂上くんも、空奈さんも放っておけないくらい
どこか、哀しい目をしていたから――



「…笑わないで下さい! あなたみたいな人に笑う権利なんてない…!!」

嘲笑う彼女が許せなくて、優美はキッと睨み付ける。

「何も出来ないくせに、よく偉そうな口を叩けるわね」


その瞬間、優美は相手に押し倒され、首を絞められた。


「うっ…!」

「て、天空…、逃げろ…」

傷だらけの温人が優美の元へ駆け寄ろうとするも、諸に攻撃をくらったせいでうまく動けない。


「あんたみたいな偽善者、一番嫌いよ。ここで死んでく? ふふ」

ギリギリと、彼女の腕の力が強まる。

(何も出来ないくせに私…、なにを言っているのでしょう…、でも許せなくて…)

ボーっと意識が遠のいたその時。




「ファイヤーボルト!!」


その声と共に、勢いよく炎の渦が相手を直撃した。

「きゃあっ! な、なんなのよ!」

「油断大敵よ。火傷にご注意願います♡」

「この声は…! 空奈さん…!?」

優美が呼吸を整え、声のした方を見やると、そこにはオレンジと赤を基調とし、まるで炎を連想させるような姿に変身した姿の空奈が立っていた。


「ピンポーン、正解! ごめんね、私も気付くのが遅くなっちゃって。大丈夫?」

優美の手を引き、心配する空奈。

「大丈夫です…! すみません、私、何も出来なくて…」

「無事ならそれで良いのよ、温人は? 大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。ナイス空奈…」

「もう、優美を助けるのに必死で変身もしないで飛び込むなんて。傷だらけじゃない」

「…言い返す言葉もないな。ただ、悠長に話している場合じゃなさそうだ」

ホッとしたのもつかの間、空奈の攻撃を受けたにも関わらず彼女はゆっくりと立ち上がり三人を睨み付ける。

「次から次へと邪魔が入るなんて聞いてないわ…」

「観念しなさい!」

空奈が容赦なく再度攻撃を仕掛けようとすると、相手は空に響くほどの高笑いをした。
その瞬間、黒い光と共に今度は黒い羽根の金髪の男性が舞い降りてきた。
すかさず温人も変身し、空奈と優美の前に出て警戒する。

「お前は一体…!」

「やあ、美しい光の者達よ。僕のバッドがお騒がせしたようだね」

「デッド様! 申し訳ありません、ほんの挨拶だったのです」

バッドというその女性は、すかさず彼の元へ駆け寄った。

「こんな美しい天使達がいたら黙ってはいられないさ。申し遅れた、初めまして。僕はデッド。光が動き出す気配がしてね。今日は様子を見に来たのさ」

「次からはこうはいかないわよ。ふふ、また今度ゆっくり会いましょ」

「あ、こら! 待ちなさいよ!」

空奈が追いかけようとすると、デッドとバッドと名乗る2人組はどこかへ消えてしまった。

「逃げられちゃったわね…。何はともあれ、とりあえず2人とも無事で良かったわ」

「でも、坂上くんが…」

傷だらけになった温人の姿を見ると、自分の無力さと申し訳無さでいっぱいになった。

「気にするな、大したことないさ。それよりも、天空が覚醒した途端に敵が襲ってくるとはな…」

「そうね。もしかして、優美のクロスが狙いなのかしら…」

二人は神妙な面持ちで優美を見やる。

「え…? どうして私のクロスが…」

「実は、一つだけ大きな力が宿るクロスがあるらしいの。シャインクロスっていう特別なクロスなのよ」

「俺たちはこのクロスの力で能力者として覚醒し、闘い、闇から世界を守っている。だが、闇の者にこれが渡るとクロスが闇に染まり利用されてしまうんだ」


「特別な力が宿るシャインクロスが奪われたとなれば、闇の好き勝手にされて世界は滅亡してしまう。優美が覚醒した途端に襲ってくるってことは…、あなたがシャインクロスの持ち主の可能性があるってことよ」

またしても壮大な話に、優美はプレッシャーがかかる。


「そんな…、私、まだ何も分からないしまともに闘えもしないのに…」

クロスを使いこなすこともできず、まだ現状を飲み込むことも出来ていないというのに。

「まあ、あくまで憶測の話だがな」


いつも助けられてばかりじゃいられない。
優美はこの出来事の重大さに改めて向き合い、なんとしてでも使命を果たそうと誓うのであった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【後書き】
シャインクロスとは!?
チート級に強い力を持つクロスです(語彙力)
それさえあれば、使い道次第でなんでも出来るくらいのチート級に強いアイテムだと思ってくれて大丈夫です(笑)
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