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貴女の花
春の歓び
しおりを挟む「オギャー!オギャー!」
元気のよい泣き声が屋敷に響き渡る。
この町に貴重な女の子が生まれたのだ。
「紫乃さん、生まれましたよ!おめでとう、おめでとう!」
「紫乃お疲れ様~~(号泣)」
母親の友人の女性が助産師として赤子を抱き上げる。
その隣で号泣しているのは父親。
一方冷静に息を吐きながら微笑む母親。
この町にはここ数年、女の子が生まれていなかった。
田んぼや畑が多い町、町長は力作業をする若い男性を集めたがる為に、いつの間にか男ばかりの町になっていた。
そんな男臭い町にはだだっ広い土地しかなく、嫁に来る女性も少なくなっていった。
出産はもちろん、結婚すらできない状況になっていたのだ。
そんな中、自然が豊かだということに魅力を感じて都会から引越してきたのがこの夫婦だった。
夫婦とは、早河 貴梅と紫乃。
2人は都会に疲れ、子どもを育てるなら空気の綺麗な広い土地が良いと考えた。
優しい貴梅はその性格から町の老若男女から好かれ信頼された。
紫乃は物静かだがおしとやか、それでいて家事も完璧にこなし夫を支えていた。
町にもすぐ馴染み、紫乃が子を授かったという知らせにも町中が喜んだ。
「紫乃さん、この子の花は梅ですね」
「そうですね…首筋に梅が咲いているのですね」
赤子の首筋には小さく梅の華墨があった。
それを見た紫乃は優しく呟いて微笑んだ。
貴梅の華墨を継いだのだと。
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