華ノ道標-華罪捜査官-

山茶花

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訳華、のちに

太鼓橋の向こう側

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訳華学校正門。


この日、受験生たちはおよそ1000人集まった。

年齢制限、受験資格も特に無い為、全国から毎年沢山の受験生がやって来る。


訳華学校正門の奥には、赤く大きな太鼓橋たいこばしがある。

正門から先は在校生と合格者のみ入ることが許される。



「皆さん、おはようございます。
 本日から4日間かけて試験を行います。
 それでは、会場へご案内致します」



訳華学校の誘導係が大きな声で話す。

受験生たちは列になり、隣の試験会場へ進む。


この1000人の中から合格者は恐らく多くて20名ほどだと言われている。


会場へ着くと各部屋に約30名分の机と椅子が用意されており、既に問題用紙が並べてある。

受験番号順に部屋へ移動し、一斉に筆記試験が始まるようだ。


試験会場では一切私語は禁止、辺りは静まり返っていた。
 



――チリンチリン


鐘の音と共に、筆記試験が始まった。

制限時間は1時間半、時間内に多くの問題を解き、その正解率で評価がつけられる。


梅乃と寿々は偶然にも同じ部屋になった。

銀壱や蓮太郎、他の塾生たちは別々だ。



――チリンチリン


1時間半後、再び鐘が鳴った。

受験生たちは筆を置き、この日の試験は終了だ。



「お疲れ様でした。明日もまた同じ時間に、
 訳華学校正門にお集まりください。
 明日から二泊三日の合宿面接でございます」

「ありがとうございました!」



受験生たちがそれぞれ帰路に着く中、梅乃は正門の外から太鼓橋をずっと眺めていた。

その目には、絶対に合格するという決意がみなぎっていた。



「梅乃ちゃん?帰らないの?」

「もう少し…見て帰ります」

「そっか。私は先に行くね!」



寿々は元気よく走り去った。

銀壱や蓮太郎も、梅乃を心配そうに見つめていた。


しかし明日からの合宿面接に備え、梅乃を見守りつつ二人もまた桜塾へ帰っていった。



合宿面接では、人間性や性格、行動や言動全てを試験官が見ている。

ただ普通に過ごしている姿を見て、訳華学校に相応しい人物を見つけ出すのだという。



「絶対、あの太鼓橋の向こう側へ行ってみせる」



梅乃はそう力強く心に誓い、校舎に背を向けて歩き出した。
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