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訳華、のちに
有言実行の朝
しおりを挟む合宿面接1日目――
前日に引き続き正門前に受験生が集まると、そこから歩いて数分の場所にある旅館へ移動した。
「今日から3日間は普段通りの生活をして頂きます。
過ごし方や言動を通して、皆さんがどんな方々なのかを見させて頂き、後日合格通知をお送りします」
桜塾の塾生たちは同じ部屋にまとまり、3日間過ごすこととなった。
知り合い同士で居る時の方が、素直な表情や言動が見られるからだ。
「3日間一緒だね!いつも通り過ごそうね」
「緊張感もあるけど…皆が一緒なら心が休まりますね」
1日目はそれぞれ、体を動かしたり勉強をしたり、穏やかに過ごした。
桜塾で勉強する時よりも長い時間を共に過ごし、塾生同士の仲は深まりつつあった。
そして、翌日、またその翌日も時間はすぐに過ぎていった。
「これで合宿面接は終了です。
訳華学校で皆さんに会えることを心待ちにしています。お疲れ様でした」
二泊三日の合宿面接は無事終わり、あとは結果を待つのみとなった。
「合宿楽しかったね」
「皆のこともよく分かった気がする。
あとは結果だ…」
寿々は相変わらず明るいが、蓮太郎は自分の成績が心配なようだ。
桜塾の模擬試験では、寿々が赤、蓮太郎は黄色階級だった。
そこから皆集中的に努力して迎えた試験、結果がどうなろうと無駄にはならない。
「もう終わったことだ。
今から結果が変わることは無い。力を抜こう」
「銀壱…ありがとう」
「とりあえず美桜子先生に報告しに行きましょう!」
銀壱は不安で泣きそうになる蓮太郎を優しく励まし、塾生たちは桜塾へ一緒に帰っていく。
桜塾の門の前では、海藤が帰りを待っていた。
「あ!おかえりなさい!」
「ただいま戻りました」
「美桜子先生~!」
全員が海藤の元へ駆け寄る。
海藤は一人ひとりの話をしっかり聞き、何度も「お疲れ様」と声を掛けた。
大変な緊張感から解き放たれ、塾生たちはようやく安堵したようだ。
――3日後の朝
「お届け物です!」
桜塾に、二通の郵便物が届いた。
差出人は訳華学校事務室。
「皆さん!訳華学校から二通もお手紙が…!」
海藤も興奮を抑えられずにいた。
自分の教え子の中から訳華学校の合格者が一度に複数名出たことは無かったからだ。
誰もが期待するが、中身は合格通知とは限らない。
「先生、開けてください!」
「分かった、開けるわよ…」
海藤は恐る恐る手紙を二通とも開けた。
ゆっくりゆっくりその中身に目を通す。
そして読み上げた。
「合格……通知…!!」
「名前は…?」
「佐佐木 銀壱、それから…
早河 梅乃」
「や、やった…!!」
銀壱と梅乃が、訳華学校に合格したのだ。
銀壱は何度も失敗を重ね、やっとの合格。
一方梅乃は、初受験にして一発合格。
二人の夢に、一歩近づいた瞬間だった。
「銀壱、梅乃さん。おめでとう。
訳華学校でしっかり勉強して、夢を叶えてね」
「「ありがとうございます!」」
二人は声を合わせて喜んだ。
これで他の塾生は不合格という結果になってしまったものの、何回も挑戦するのが当たり前の難関。
全員で合格を祝福した。
二人には目的と使命がある。
奪われたものを取り返す為、世界の未来を守る為、
また新たな挑戦が始まる。
この朝は梅乃にとって「有言実行の朝」となった。
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