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橋を渡る者
隠れる悪
しおりを挟む梅乃や銀壱が訳華学校に入学してから半年が経った。
桜塾では相変わらず、塾生たちが訳華学校合格の為に勉強を続けている。
海藤もまた、必死に講義を行い、塾生たちの夢を叶えようと努力していた。
「皆さん、今日もお疲れ様でした。
気をつけて家に帰るように!」
「ありがとうございました!」
日が暮れ始めると、桜塾の講義は終わる。
女子塾生は暗くなる前には帰らなければならない。
最近桜木では、物騒な事件が相次いでいるらしい。
「この前、隣のお宅は壺を盗まれたみたいよ」
「実はうちも、盆栽が無くなって…」
「それって、連続盗難ってことかしらね…?」
そんな会話がしばしば聞こえてくる。
海藤も警戒して、塾生をいつもより早く帰らせるようにしていた。
「美桜子先生!さようなら!
また明日よろしくお願いしまーす!」
「気をつけて帰るのよ~」
元気よく挨拶したのは鷲ヶ峰 寿々だ。
彼女の家は桜木から歩いて30分程のところにある。
海藤は一人で帰らせることを少し心配していたが、寿々は逃げ足が速いこともあり、迎えはよこさなかった。
寿々はいつも通り勉強道具を手に持ち、短い襟足もふわふわと浮くくらい跳ねたりしながらご機嫌で歩く。
するとそこに、一人の着物姿の男が現れた。
「お姉さん、道を教えてくれないか」
「えっ私ですか?…分かりました。
どこへ行くのですか?」
「この先だと思うのだが――」
「っ!!?」
男はいきなり紐のようなもので寿々の首を締め上げ、口を強く押さえた。
そして細く暗い路地に連れ込むと、数人の仲間と思われる男たちが駆け寄ってきた。
「こいつを連れて行け!」
「はい!」
寿々はあっという間に連れ去られてしまった。
意識を失った彼女を抱きかかえて、男たちはすぐに走って消えた。
この桜木でも、盗難に続き新たな事件が起こってしまったのだ。
寿々が居ないことは寿々の両親以外には知られることはなく、翌日になって警察官と華罪捜査官が寿々の身辺調査を行った。
しかし、何も手がかりは無く、寿々の華墨である福寿草の人々が再度狙われることは無かった。
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