華ノ道標-華罪捜査官-

山茶花

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悪の行方

採用試験 梅乃編

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桜木に戻った二人は下宿部屋が使えない状態になり、寝泊まりする場所を探していた。

昔から海藤と親しい女性の住民が宿屋を経営しており、部屋を貸してくれることになった。



「今日からここを使ってね」

「ありがとうございます!」

「銀壱くんはこっちね~」

「はい!」



二人は部屋を借りる代わりに、週に2~3度宿屋の手伝いをしながら勉強や訓練をすることになった。


宿屋の女性の名は、伊東 楓子いとう ふうこという。
楓子は海藤と同級生で、桜塾の塾生の話はよく耳にしていたため、梅乃や銀壱の存在も知っていた。



楓子の話によると、最近は桜木の周辺でも盗難や華罪事件が相次ぎ、住民たちは外出を控えているとのこと。

梅乃は海藤の家を訪れ、近況報告などをするつもりで居たが、なかなか会えそうになかった。



梅乃は楓子から海藤の居場所を聞き、手紙を書くことにした。


「 海藤先生

お久しぶりです。お元気ですか。
こちらは銀壱さんと二人で、無事訳華学校を卒業することができました。

卒業試験の成績はまずまずでしたが、
何とか華罪捜査官を目指すことができそうです。

今は伊東 楓子さんのご好意で、宿屋の一室を
借りて生活しています。

最近は物騒だと聞きました。
くれぐれも、気をつけてお過ごしください。

早河 梅乃 」


手紙を送り、そして今日もまた竹刀を振る。
体力をつける為、毎日稽古に励んでいた。

採用試験まではあと少しだ。




――採用試験当日



「楓子さん、それでは行ってきます」

「二人とも頑張ってね!応援してるわ」



梅乃と銀壱は、二人揃って華罪捜査官の採用試験へと向かった。

梅乃は竹刀を持ち、銀壱は弓矢を背負っている。


訳華学校で学んだこと、今まで訓練してきたことを最大限発揮する時が来た。

桜木に住む人々も、この街から優秀な人材が育ったことを喜んでいた。




試験会場は、華罪捜査官の拠点である捜査本部。

ここでは試験として、実際に捜査に参加することで応募者の能力をはかるのだ。



「佐佐木、君は僕と一緒に北の方角へ向かう。
 その村から依頼があり、夜間警備をする」



銀壱は本部から北に位置する小さな村から依頼を受け、日が暮れた後、村を巡回して怪しい人物が居ないか捜査をすることになった。


一方梅乃は、女性捜査官と一緒に大都市の日中警備を任された。



梅乃たちは大都市の中心部に捜査本部の車両で移動した。
日中、多くの人が行き交う街だ。
不審者の目撃情報も多い。



「早河さん。ここには来た事あるかしら?」

「無いです」

「ここはね、昔華罪組織の【龍華会りゅうげかい】本部があった場所なの。
 今は私たちが弾圧したから本部自体は無くなったけど、まだ龍華会の会員が彷徨いているわ。
 最近の盗難事件はほとんど龍華会の仕業だって私たちは睨んでいるの」

「龍華会……なぜ盗難事件を起こすのでしょうか」

「恐らく組織の資金づくりの為よ。
 盗難品が各地の質屋で売られているのを捜査で掴んだから」



龍華会は昔から存在する華罪組織。
数々の凶悪事件を起こし、会員は何人も逮捕されているが、未だに蔓延っている。


姿から見分けるのは極めて困難だが、今まで逮捕されてきた奴らは、明らかに動きが怪しかった。

そういう下っ端でも実行犯である限り、一人も逃がすことはできない。



「あいつ、動きが不審ね…」

「商店の周りをずっと歩き回っていますね」



捜査官は一人の男に目をつけた。
その男は商店の周りを右往左往していた。



「ちょっと声を掛けてみましょう。
 行けるわね?何かあっても守るから大丈夫よ」



梅乃がその不審な男に声をかけることになったが、これも試験の一環である。

緊張しながらも、男に近づいていく。



「すみません、少しお話いいでしょうか」

「チッ華捜か?」



男は吐き捨てると突然走り出した。

梅乃は逃げられないように必死で追いかける。



「待ちなさい!」

「あいつは確かに龍華会ね。足首に龍の形の傷跡がある。私についてきて!」

「はい!!」



龍華会の会員は、必ず足首に龍の形の傷がある。
それを見抜いた捜査官はとてつもない足の速さで追いかけた。


すると捜査官は制服から小さな剣を取り出し、男の足元に向かって投げつけた。



「痛っ!!くそっ」

「覚悟しなさい。その手に持っているものは何?」

「何でもねえよ!」



剣が掠ったため、男の足からは血が滲んだ。

そのまま倒れ込んだところを捜査官は取り押さえた。
男は暴れて抵抗するが、捜査官の腕はびくともしない。



「正直に吐かないなら、この腕を折ってもいいのよ」

「痛えよ!!やめろ!
 これは商店から盗んだんだよ」

「はい、窃盗の現行犯ね。
 あんた、龍華会でしょう」



あっという間に捜査官は自供を引き出し、男を逮捕した。
やはり男は龍華会の窃盗犯だった。

男は車両に乗せられ、捜査本部へ送られた。



「早河さん、あなた勇気があるわね。
 また一緒に仕事することになりそうね」

「あ、ありがとうございます…!
 助けていただいて、すみません」

「結果的に逮捕できたのだから、問題ないわ」



この後も数時間見回りを行い、夕方になると警備は終わり、梅乃の採用試験は終了した。

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