華ノ道標-華罪捜査官-

山茶花

文字の大きさ
21 / 63
悪の行方

採用試験 梅乃編

しおりを挟む

桜木に戻った二人は下宿部屋が使えない状態になり、寝泊まりする場所を探していた。

昔から海藤と親しい女性の住民が宿屋を経営しており、部屋を貸してくれることになった。



「今日からここを使ってね」

「ありがとうございます!」

「銀壱くんはこっちね~」

「はい!」



二人は部屋を借りる代わりに、週に2~3度宿屋の手伝いをしながら勉強や訓練をすることになった。


宿屋の女性の名は、伊東 楓子いとう ふうこという。
楓子は海藤と同級生で、桜塾の塾生の話はよく耳にしていたため、梅乃や銀壱の存在も知っていた。



楓子の話によると、最近は桜木の周辺でも盗難や華罪事件が相次ぎ、住民たちは外出を控えているとのこと。

梅乃は海藤の家を訪れ、近況報告などをするつもりで居たが、なかなか会えそうになかった。



梅乃は楓子から海藤の居場所を聞き、手紙を書くことにした。


「 海藤先生

お久しぶりです。お元気ですか。
こちらは銀壱さんと二人で、無事訳華学校を卒業することができました。

卒業試験の成績はまずまずでしたが、
何とか華罪捜査官を目指すことができそうです。

今は伊東 楓子さんのご好意で、宿屋の一室を
借りて生活しています。

最近は物騒だと聞きました。
くれぐれも、気をつけてお過ごしください。

早河 梅乃 」


手紙を送り、そして今日もまた竹刀を振る。
体力をつける為、毎日稽古に励んでいた。

採用試験まではあと少しだ。




――採用試験当日



「楓子さん、それでは行ってきます」

「二人とも頑張ってね!応援してるわ」



梅乃と銀壱は、二人揃って華罪捜査官の採用試験へと向かった。

梅乃は竹刀を持ち、銀壱は弓矢を背負っている。


訳華学校で学んだこと、今まで訓練してきたことを最大限発揮する時が来た。

桜木に住む人々も、この街から優秀な人材が育ったことを喜んでいた。




試験会場は、華罪捜査官の拠点である捜査本部。

ここでは試験として、実際に捜査に参加することで応募者の能力をはかるのだ。



「佐佐木、君は僕と一緒に北の方角へ向かう。
 その村から依頼があり、夜間警備をする」



銀壱は本部から北に位置する小さな村から依頼を受け、日が暮れた後、村を巡回して怪しい人物が居ないか捜査をすることになった。


一方梅乃は、女性捜査官と一緒に大都市の日中警備を任された。



梅乃たちは大都市の中心部に捜査本部の車両で移動した。
日中、多くの人が行き交う街だ。
不審者の目撃情報も多い。



「早河さん。ここには来た事あるかしら?」

「無いです」

「ここはね、昔華罪組織の【龍華会りゅうげかい】本部があった場所なの。
 今は私たちが弾圧したから本部自体は無くなったけど、まだ龍華会の会員が彷徨いているわ。
 最近の盗難事件はほとんど龍華会の仕業だって私たちは睨んでいるの」

「龍華会……なぜ盗難事件を起こすのでしょうか」

「恐らく組織の資金づくりの為よ。
 盗難品が各地の質屋で売られているのを捜査で掴んだから」



龍華会は昔から存在する華罪組織。
数々の凶悪事件を起こし、会員は何人も逮捕されているが、未だに蔓延っている。


姿から見分けるのは極めて困難だが、今まで逮捕されてきた奴らは、明らかに動きが怪しかった。

そういう下っ端でも実行犯である限り、一人も逃がすことはできない。



「あいつ、動きが不審ね…」

「商店の周りをずっと歩き回っていますね」



捜査官は一人の男に目をつけた。
その男は商店の周りを右往左往していた。



「ちょっと声を掛けてみましょう。
 行けるわね?何かあっても守るから大丈夫よ」



梅乃がその不審な男に声をかけることになったが、これも試験の一環である。

緊張しながらも、男に近づいていく。



「すみません、少しお話いいでしょうか」

「チッ華捜か?」



男は吐き捨てると突然走り出した。

梅乃は逃げられないように必死で追いかける。



「待ちなさい!」

「あいつは確かに龍華会ね。足首に龍の形の傷跡がある。私についてきて!」

「はい!!」



龍華会の会員は、必ず足首に龍の形の傷がある。
それを見抜いた捜査官はとてつもない足の速さで追いかけた。


すると捜査官は制服から小さな剣を取り出し、男の足元に向かって投げつけた。



「痛っ!!くそっ」

「覚悟しなさい。その手に持っているものは何?」

「何でもねえよ!」



剣が掠ったため、男の足からは血が滲んだ。

そのまま倒れ込んだところを捜査官は取り押さえた。
男は暴れて抵抗するが、捜査官の腕はびくともしない。



「正直に吐かないなら、この腕を折ってもいいのよ」

「痛えよ!!やめろ!
 これは商店から盗んだんだよ」

「はい、窃盗の現行犯ね。
 あんた、龍華会でしょう」



あっという間に捜査官は自供を引き出し、男を逮捕した。
やはり男は龍華会の窃盗犯だった。

男は車両に乗せられ、捜査本部へ送られた。



「早河さん、あなた勇気があるわね。
 また一緒に仕事することになりそうね」

「あ、ありがとうございます…!
 助けていただいて、すみません」

「結果的に逮捕できたのだから、問題ないわ」



この後も数時間見回りを行い、夕方になると警備は終わり、梅乃の採用試験は終了した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

処理中です...