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悪の行方
採用試験 銀壱編
しおりを挟む梅乃と入れ違いで銀壱は夕方から依頼があった村に出動する。
本部から村までは車で1時間ほどだ。
「佐佐木くん、君はなぜ華罪捜査官に?」
「僕は…8歳の時に華罪事件で母を亡くしました。
まだその時の犯人が捕まっていないことを知って、
自分の手で事件を解決したいと思いました」
「そうか…我々が早く組織を潰していればな…」
「いえ、悪いのは犯罪者たちで…
だから僕は華罪捜査官になりたいのです」
車中で銀壱は自らの思いの丈を真剣に話した。
捜査官も親身になって話を聞いた。
「君は強いな。長い間僕も事件を追っているが、
中心部までなかなか辿り着けない。
情けないよ」
「やはり、捜査は難しいのですか…?」
「ああ。下っ端ならいくらでも見つかるが…」
苦悶の表情で捜査官は答えた。
未解決事件はいくつもあるが、新たな事件に追われ、再捜査は難航しているらしい。
華罪組織は梅乃たちが見つけた【龍華会】の他にもあり、その組織はどこかで繋がっているとの推測もある。
車で走ること1時間、依頼のあった村へ着いた。
まずは村長と本部へ到着の報告をする。
「こんばんは、華罪捜査官です。
本部から出動いたしました」
捜査官は出動令状を村長へ見せる。
この令状が無ければ捜査官が派遣されることはない。
「わざわざありがとうございます。
少女が拐われた事件が起こってから、
村民も眠れない日々が続いています…」
「存じ上げています。
必ずや、この村をお守りします」
「よろしくお願いいたします…」
村長は年老いていて、更に事件が起きてからかなり憔悴しきっているようだ。
銀壱は捜査官から、先日この村で起きた少女誘拐事件について聞いた。
1ヶ月ほど前、この村に住む3人の少女が全員同じ日の夜に誘拐されてしまった。
少女たちの悲鳴が聞こえることもなく、夜が明けると姿が無かったという。
少女たちの親が通報し、数日間華罪捜査官と警察官による捜査が行われたが、犯人逮捕にはまだ至っていないとのこと。
この周辺にその犯人がいる可能性は低いが、新たな事件が起こらないよう警備に当たる。
「君は弓道が得意だと聞いた。
怪しい人物が居たら、急所を外して矢を放つんだ」
「はい、分かりました」
「もしその人物が倒れたり弱っていたら、
取り押さえて、そこでこの笛を吹いてくれ。
すぐに駆けつける」
銀壱は捜査官から笛を手渡された。
そして怪しい人物は居ないか、捜査官と二手に分かれて巡回した。
村は暗くなると一層静かになり、人通りはほとんど無くなった。
皆、警戒して夜は外へ出ないという。
この村で起きた誘拐事件の犯人たちは、恐らく華罪組織【華狩】だと言われている。
華狩は、特定の華墨をもつ人々を狙い、誘拐したり時には命をも奪う犯罪者集団だ。
約10年前の梅の華墨が狙われた時も、捜査線上に浮上したのは華狩だった。
「おい兄ちゃんよ、お前…見ねえ顔だなぁ」
「どうも、こんばんは」
見るからにガラの悪い輩が銀壱に話しかけてきた。
龍華会員の特徴が足の傷であるのに対し、華狩の特徴は片方の瞼の上にバツ印の傷があること。
この男にはそれがある。
もしかしたら攻撃を仕掛けてくるかもしれない。
銀壱は身構えた。
「そんなに怯えるなよ、兄ちゃん。
お前強そうだから仲間にしてやってもいいぜ」
男はそう言うと、小型の刃物を取り出し、華狩の印を銀壱の瞼につけようとする。
銀壱よりも体の大きな男は力も強く、押し返そうとしてもなかなか動かない。
銀壱は必死に抵抗し、やっとの思いで笛を吹いた。
――ピーーーーッ!
「おい!何をしている!」
慌てて捜査官がこちらへ走ってくる。
男は捜査官に気づき逃げようとするが、足がもつれてその場に倒れ込んだ。
「佐佐木くん!押さえて!」
「はいっ!」
銀壱は倒れた男の足を押さえ、馬乗りになって動きを封じ込めた。
捜査官が縄を取り出し、男の手足を縛る。
「お前、華狩だな?
傷害容疑で逮捕だ」
「なんだよ!華捜の連れか!」
「お前みたいな奴が生きている限り、
僕たちが居なくなることはない」
銀壱たちは手足を縛った男を車まで運び、本部へ連絡。
応援をよこして、身柄を送った。
銀壱は自分の母親の事件にも関与しているかもしれない悪党に、憎しみと怒りをおぼえた。
そしてまだまだ自分が未熟だと、捜査官の強さを思い知った。
「ご苦労だった。あいつは華狩の下っ端だ。
怪我がなくて良かったよ」
「もう少し警戒するべきでした…」
「でも、対応も早かったし、これからだよ。
一緒に、日本を平和にしよう」
最後に男性捜査官と握手を交わし、銀壱の夜間警備も幕を閉じた。
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