華ノ道標-華罪捜査官-

山茶花

文字の大きさ
27 / 63
やるべき事

潜む影

しおりを挟む

三人は歩いて街を巡回していた。

怪しい人物は見当たらない。
警備依頼があっても平和な日があるのは良いことだ。



「こんにちは。もしかして、華罪捜査官の方ですか?」

「はい、そうです。
 警備依頼を受けています」

「最近物騒ですものね…
 よろしくお願いしますね」



気品のある女性が話しかけてきた。
着物姿で艶やかに歩く。


華罪捜査官に制服は無い。
しかし、捜査官の象徴である桜を模した柄の紺色の布を、利き手の手首に巻く決まりになっている。
その布を「濃紺の桜のうこん さくら」と呼ぶ。

目立つものではなく、袖を捲ってようやく見えるほどだ。



「えっ…なんで…?」

「どうした?」

「あの女性、
 私たちが華捜ってすぐに分かりましたよね」

「そうだな…」

「そういえば、前髪に隠れた左瞼に――」



梅乃があの女性の正体に気づいた時だった。



「危ないっ!!」


――――スパンッ!


女性が歩いて行った方向から、物凄い速度で梅乃の真横に鋭い矢が飛んできた。



「怪我はないか?」

「はい…!でも、あの人は――」

「ああ。華狩だ。
 恐らくこの矢も、俺たちを威嚇するためだろう」



梅乃は女性の前髪が風で舞った時、左瞼に華狩の印が見えたのだ。

三人がしている濃紺の桜を見て華捜と分かり、わざわざ話しかけに来たということ。


街にも溶け込み、悠長に歩いていた。

悪はすぐそこに居る。


だが矢が飛んできた方向には誰も見当たらず、華狩の女も姿を消した。



「誰がこれを…」

「あの女ではなく、仲間がいるんだろう」

「まだ華狩が潜んでいる可能性があるのですね」

「そうだ。注意深く探すぞ」

「はい!!」



だが矢がもう一度飛んでくることは無かった。

華狩のアジトを突き詰めようと、前田と梅乃、銀壱で分かれて華狩を捜すことにした。


梅乃はまだ力が弱い為、前田と一緒に、女性が歩いて行った方向へ。

銀壱は逆方向だ。



少し歩くと、前田が足を止める。



「前田さん?どうされました?」

「見ろ、矢についていた羽根だ」



落ちていたのは、先程の鋭い矢の先についていた鷲の羽根だった。

鷲の羽根を使った矢は高級品だ。

そんなものを華狩が使っているということは、華罪を犯し、金を稼いでいる証拠。


羽根が落ちていた周辺を見渡すが、人影がない。
建物からは明かりが漏れ、人々の話し声が聞こえる。



すぐそこに、美しい姿の悪さを企む華狩が居ることも知らずに、今日も街は夜を迎えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

処理中です...