15 / 44
第15話 ザングリウス
しおりを挟む
ザングリウスは自分のホームに戻りながらPKerになった日のことを思い出していた。
(あの日は、会社で嫌なことがあったっけ…。)
◆◇◆◇◆
「聞いてくださいよ大将。あのゴリラ部長、自分のミスを人のせいにしやがるんですよ!ほんと、ふざけやがって!」
ザングリウスこと、栗山素兎は行きつけの飲み屋の大将に愚痴っていた。
「相変わらず、酷い上司ですね。」
「でしょ?でもね、最近いいストレス解消方法見つけたんすよ。」
「ほう。それは、どんな方法ですかい?」
「それはですね、ATOでモンスターを狩りまくるんですよ。」
「ATO?あぁ、確かものすごく人気のゲームなんでしたっけ?」
「そう、そのATO。これがですね、ものすごくリアルなんですよ。モンスターと戦う時も自分の体を動かして戦うんで気持ちいいんすよね。」
「なるほど。つまりは、その部長への怒りをそのモンスターにぶつけてストレス発散してるってことですね。」
「そういう事です。しかも、最近はゴリラ型モンスター見つけて、そいつばっか狩ってますよ。今日も帰ったら、そいつを狩りまくる予定ですよ。」
「ハハ。それは、ちょどいい相手がいましたね旦那。」
「でしょ?あっ、大将もう一杯ください!」
「あいよ。」
その後も、栗山はその飲み屋でしばらく飲んだ後に帰宅した。
「ふぅ。大将に愚痴聞いて貰えたし、後はゲ
ームの中であのゴリラを狩りまくるか。」
栗山はATOを始める。
「よっしゃあ、今日もあのゴリラを狩りまくるぞ!」
そうして、ザングリウスはゴリラ型モンスター、ゴドラミンのいる場所ヴァンワイズ密林へと向かった。
「おっ!みーつけた!」
ザングリウスは、ゴドラミンを見かけるなりすぐに駆け寄る。
「あの、腐れ部長がァ!」
そう叫びながら、ゴドラミンに斬り掛かる。
そして、2回、3回と攻撃を加えていき倒す。
「2体目、みーけ!」
2体目を見つけて駆け寄る。
「てめぇの取り柄は、筋肉ぐらいだろぉが!」
次はこう叫び、斬り掛かっていき倒す。そして、3体目、4体目、5体目としばらくの間部長に対する怒りをゴドラミンにぶつけながら狩り続ける。
狩り続けている内に、ザングリウスのスキル、「連鎖」の効果によってザングリウスのSTRが上昇し、ゴドラミンを一撃で倒せるまでに上昇する。
連鎖の詳細は以下の通りである。
ーーーーーーーーーーーーーー
スキル:連鎖
詳細
モンスターを倒す度に、STRが少しだけ上昇する。ただし、5秒以内に次のモンスターとの戦闘を行わないとリセットされる。また、STRの上昇には、限界値がある。
ーーーーーーーーーーーーーー
「こっからは、フィーバータイムだァ!」
ザングリウスのテンションがお酒に酔っているのもあり上昇する。
「うぉら、ゴリラ部長!てめぇへの鬱憤を晴らさせて貰うぜ!まずは、一体!」
「Uho!!」
ゴドラミンの断末魔が聞こえる。
「二体目!!」
「Uho!!」
ゴドラミンの断末魔が聞こえる。
「三体目!!」
「Uso!!」
ゴリラ似のプレイヤーの断末魔が聞こえる。
「四体目!!」
「Uho!!」
ゴドラミンの断末魔が聞こえる。
「五体目…、ってちょっと待て。今、なんか変なの混じってなかったか…。」
ザングリウスは、通ってきた道を振り返る。そこには、ゴドラミンの素材とは別にアイテムが落ちているのが見える。
(いやいや、ちょっと待てよ。嘘だろ…、俺PKしちゃったの…。)
酔いがさめるのをザングリウスは感じる。
(ないないない。だって、すごいゴリラに似てたもん。そうだ、きっとあれはレアモンスターだったんだよ。そうに違いない。鳴き声も、UhoとUsoで1文字違いだったしね。レアモンスターなら、鳴き声違ってもおかしくないからね。だから、ドロップアイテムも他のとは違うのが落ちてるんだ。)
ザングリウスは、必死にPKをしていないという根拠を何とかして探そうとしていた。
(そうだ!ステータス画面を見ればPKしたかどうかわかるはずだ。PKした奴は、状態変化のページが追加されてるはずだからな。まぁ、俺はレアモンスター倒しただけだからそんな変なページあるわけないけどね。)
そう考えて、ステータス画面を開く。まずは、普通のステータス画面が表示される。横にスライドすると、装備の画面に切り替わる。そこから更に横にスライドすると、普通はステータス画面に戻る。だが、そこには状態変化の画面が表示されていた。
ーーーーーーーーーーーーーー
状態変化
・プレイヤーキラー
ーーーーーーーーーーーーーー
(……………。やっちまったぁぁぁ!)
ザングリウスは、膝から崩れ落ちる。
(いやいや、酔った勢いとテンションが上がってたからってPKするとかありえないだろ!あれ?今の俺ってPKされたらやばくね?)
「おい、そこのお前。」
背後から声をかけられる。
ザングリウスは、早速誰かがPKしに来たと勘違いして、振り向き武器を構える。
「落ち着け、お前と戦うつもりはない。俺は、お前をギルドの勧誘に来たんだ。」
そう言う男のPNを見ると、クルサフと表示されていた。
「ギルドの勧誘?」
「あぁ、さっきの狩りっぷりを見ててな。こいつは、逸材だと思って勧誘したんだよ。」
(あー、ゴドラミンを狩ってたのを見てたのか。)
この時、ザングリウスは気づくべきだった。クルサフのレベルの横に赤いバツ印がついていることに。
「いやでも…。」
ザングリウスは、PKerになってしまった自分がギルドにいればギルドの評判が悪くなると思い断ろうとする。
「皆まで言うな。わかってる。それでも、お前にギルドに入って欲しいんだ。」
この時、クルサフは「いやでも、さっきのが初めてのPKだから自信がない。」とザングリウスが言うと思っていたのである。
だが、ザングリウスはクルサフの言葉は、自分がPKerであるから断ろうとしたというのを理解した上で誘ってくれていると勘違いしてしまった。
「クルサフさん。ありがとうございます。じゃあ、ギルドに入らせていただきます!」
「そうか!俺達は、お前を歓迎するぜ!これから、よろしくなザングリウス。」
こうして、ザングリウスはお互いに勘違いしているということに気づかずにギルド「地獄の業火」に入ってしまったのである。
◆◇◆◇◆
(とりあえず、ゴリラ似のプレイヤーさん。あの日は、ゴリラ部長に腹立ててたのと、酔っていたのと、テンションが上がってたのがあったとはいえ、ゴドラミンと間違えてPKしてごめんなさい。)
そう心の中で名前も知らないゴリラ似のプレイヤーに謝罪する。
(そういえばこのゲーム、あのゴリラ部長もやってるんだっけ?せめて、あの日PKしたのがゴリラ部長なら良かったのにな。)
ザングリウスは、そんなことを考える。だが彼は知らない。あの日PKしたのがそのゴリラ部長であることを。しかも、PKされた時にゴリラ部長が持っていたレアアイテムがあの時ドロップしていたということも知らない。
(あの日は、会社で嫌なことがあったっけ…。)
◆◇◆◇◆
「聞いてくださいよ大将。あのゴリラ部長、自分のミスを人のせいにしやがるんですよ!ほんと、ふざけやがって!」
ザングリウスこと、栗山素兎は行きつけの飲み屋の大将に愚痴っていた。
「相変わらず、酷い上司ですね。」
「でしょ?でもね、最近いいストレス解消方法見つけたんすよ。」
「ほう。それは、どんな方法ですかい?」
「それはですね、ATOでモンスターを狩りまくるんですよ。」
「ATO?あぁ、確かものすごく人気のゲームなんでしたっけ?」
「そう、そのATO。これがですね、ものすごくリアルなんですよ。モンスターと戦う時も自分の体を動かして戦うんで気持ちいいんすよね。」
「なるほど。つまりは、その部長への怒りをそのモンスターにぶつけてストレス発散してるってことですね。」
「そういう事です。しかも、最近はゴリラ型モンスター見つけて、そいつばっか狩ってますよ。今日も帰ったら、そいつを狩りまくる予定ですよ。」
「ハハ。それは、ちょどいい相手がいましたね旦那。」
「でしょ?あっ、大将もう一杯ください!」
「あいよ。」
その後も、栗山はその飲み屋でしばらく飲んだ後に帰宅した。
「ふぅ。大将に愚痴聞いて貰えたし、後はゲ
ームの中であのゴリラを狩りまくるか。」
栗山はATOを始める。
「よっしゃあ、今日もあのゴリラを狩りまくるぞ!」
そうして、ザングリウスはゴリラ型モンスター、ゴドラミンのいる場所ヴァンワイズ密林へと向かった。
「おっ!みーつけた!」
ザングリウスは、ゴドラミンを見かけるなりすぐに駆け寄る。
「あの、腐れ部長がァ!」
そう叫びながら、ゴドラミンに斬り掛かる。
そして、2回、3回と攻撃を加えていき倒す。
「2体目、みーけ!」
2体目を見つけて駆け寄る。
「てめぇの取り柄は、筋肉ぐらいだろぉが!」
次はこう叫び、斬り掛かっていき倒す。そして、3体目、4体目、5体目としばらくの間部長に対する怒りをゴドラミンにぶつけながら狩り続ける。
狩り続けている内に、ザングリウスのスキル、「連鎖」の効果によってザングリウスのSTRが上昇し、ゴドラミンを一撃で倒せるまでに上昇する。
連鎖の詳細は以下の通りである。
ーーーーーーーーーーーーーー
スキル:連鎖
詳細
モンスターを倒す度に、STRが少しだけ上昇する。ただし、5秒以内に次のモンスターとの戦闘を行わないとリセットされる。また、STRの上昇には、限界値がある。
ーーーーーーーーーーーーーー
「こっからは、フィーバータイムだァ!」
ザングリウスのテンションがお酒に酔っているのもあり上昇する。
「うぉら、ゴリラ部長!てめぇへの鬱憤を晴らさせて貰うぜ!まずは、一体!」
「Uho!!」
ゴドラミンの断末魔が聞こえる。
「二体目!!」
「Uho!!」
ゴドラミンの断末魔が聞こえる。
「三体目!!」
「Uso!!」
ゴリラ似のプレイヤーの断末魔が聞こえる。
「四体目!!」
「Uho!!」
ゴドラミンの断末魔が聞こえる。
「五体目…、ってちょっと待て。今、なんか変なの混じってなかったか…。」
ザングリウスは、通ってきた道を振り返る。そこには、ゴドラミンの素材とは別にアイテムが落ちているのが見える。
(いやいや、ちょっと待てよ。嘘だろ…、俺PKしちゃったの…。)
酔いがさめるのをザングリウスは感じる。
(ないないない。だって、すごいゴリラに似てたもん。そうだ、きっとあれはレアモンスターだったんだよ。そうに違いない。鳴き声も、UhoとUsoで1文字違いだったしね。レアモンスターなら、鳴き声違ってもおかしくないからね。だから、ドロップアイテムも他のとは違うのが落ちてるんだ。)
ザングリウスは、必死にPKをしていないという根拠を何とかして探そうとしていた。
(そうだ!ステータス画面を見ればPKしたかどうかわかるはずだ。PKした奴は、状態変化のページが追加されてるはずだからな。まぁ、俺はレアモンスター倒しただけだからそんな変なページあるわけないけどね。)
そう考えて、ステータス画面を開く。まずは、普通のステータス画面が表示される。横にスライドすると、装備の画面に切り替わる。そこから更に横にスライドすると、普通はステータス画面に戻る。だが、そこには状態変化の画面が表示されていた。
ーーーーーーーーーーーーーー
状態変化
・プレイヤーキラー
ーーーーーーーーーーーーーー
(……………。やっちまったぁぁぁ!)
ザングリウスは、膝から崩れ落ちる。
(いやいや、酔った勢いとテンションが上がってたからってPKするとかありえないだろ!あれ?今の俺ってPKされたらやばくね?)
「おい、そこのお前。」
背後から声をかけられる。
ザングリウスは、早速誰かがPKしに来たと勘違いして、振り向き武器を構える。
「落ち着け、お前と戦うつもりはない。俺は、お前をギルドの勧誘に来たんだ。」
そう言う男のPNを見ると、クルサフと表示されていた。
「ギルドの勧誘?」
「あぁ、さっきの狩りっぷりを見ててな。こいつは、逸材だと思って勧誘したんだよ。」
(あー、ゴドラミンを狩ってたのを見てたのか。)
この時、ザングリウスは気づくべきだった。クルサフのレベルの横に赤いバツ印がついていることに。
「いやでも…。」
ザングリウスは、PKerになってしまった自分がギルドにいればギルドの評判が悪くなると思い断ろうとする。
「皆まで言うな。わかってる。それでも、お前にギルドに入って欲しいんだ。」
この時、クルサフは「いやでも、さっきのが初めてのPKだから自信がない。」とザングリウスが言うと思っていたのである。
だが、ザングリウスはクルサフの言葉は、自分がPKerであるから断ろうとしたというのを理解した上で誘ってくれていると勘違いしてしまった。
「クルサフさん。ありがとうございます。じゃあ、ギルドに入らせていただきます!」
「そうか!俺達は、お前を歓迎するぜ!これから、よろしくなザングリウス。」
こうして、ザングリウスはお互いに勘違いしているということに気づかずにギルド「地獄の業火」に入ってしまったのである。
◆◇◆◇◆
(とりあえず、ゴリラ似のプレイヤーさん。あの日は、ゴリラ部長に腹立ててたのと、酔っていたのと、テンションが上がってたのがあったとはいえ、ゴドラミンと間違えてPKしてごめんなさい。)
そう心の中で名前も知らないゴリラ似のプレイヤーに謝罪する。
(そういえばこのゲーム、あのゴリラ部長もやってるんだっけ?せめて、あの日PKしたのがゴリラ部長なら良かったのにな。)
ザングリウスは、そんなことを考える。だが彼は知らない。あの日PKしたのがそのゴリラ部長であることを。しかも、PKされた時にゴリラ部長が持っていたレアアイテムがあの時ドロップしていたということも知らない。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
79
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる