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夢
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夜ご飯が終わり、ノアさんはランに返されていた。
ゲートで、ほぼ無理やり。
その光景に笑ってしまった。
その後ランと奥さんと、少しだけお喋りをして眠りについた。
久しぶりに、懐かしい夢を見た。
私が、見習い生になった時のこと。
そして、候補生になった時のこと。
最後に、紡ぎ司になった時のこと。
順番に、パッパッパッと切り替わるような。
短い夢。
紡ぎ司という仕事を知って、なりたいと思ったこと。
紡ぎ司の仕事が、楽しそうだと思ったこと。
純粋に、作業に惹かれたこと。
工房の郷で、他の子ども達が目を輝かせていたように。
探していた“何か”に辿り着いたと喜んだ記憶。
多分、南の地の住人は何かに集中できる時間を求めている。
それが、今叶っている。
毎日毎日、ほぼ仕事をしている現状。
飽きもせず繰り返して3年を過ぎた。
不思議な流れ。
でも、それに満足している私。
今までの簡素な生活。
それが、変化するかもしれない。
だから、見ているのだろうか?
それとは関係ない空間が、急に広がった。
作業場?
何だろう?
回りをキョロキョロしている私。
見慣れているはずなずなのに、少しの違和感。
「何で?」
そっか。
「小さいからだ」
空間が。
見慣れたはずの空間なのに、全体的にコンパクトだ。
『こんにちは』
急に聞こえた声。
「こんにちは」
どこから?
『分からないのに、返事をしたらいけないよ?』
え?そっちから、話しかけて来たのに?
理不尽。
あぁ。
候補生になった時の感覚。
そうだ。
これは、理不尽なやり取りだ。
『ごめんごめん』
謝る。
もう、何なんだ?
『話してよ?』
「…やだよ」
話しても、また何か言うんだろうから。
『ねえ?サーヤ』
何で知ってる?
私の名前。
『知ってるよ。ぼくが好きな名前だから』
え?好きな名前。
『だから、サーヤ話してよ』
どうしようかな?
だって、これ夢だし。
溜め息を付いて、今の家と何が違うのか空間を眺める。
冷蔵庫は同じだ。
昔から、大きかったんだ。
空間には窮屈に見える。
勝手に開けちゃえ。
「何もない」
『ないよ?だって、ここは不毛の地だもの』
え?
不毛の地だったのは、2年位までじゃなかったっけ?
『でもね?この地を潤してくれたのは、君だ』
そうなの?
「あ、蜜はないのかな」
『探せばあるんじゃないかな?』
「蜜は…」
作業場にある、壁にめり込んでいる戸棚。
上の棚を開ける。
でも、中には微かな埃と空瓶のみ。
「ないか…」
『ね?遊ぼうよ』
「2階はどうなってるんだろ?」
『聞こえてるでしょ?』
「部屋も3つなのかな?」
『遊ぼって』
聞こえてる声に構わずに、扉を開ける。
そうだ。
扉。
懐かしい。
『どこ行くの?』
階段を上がり、気に入ってる部屋を開ける。
「あれ?」
今よりも、もっと暗い部屋。
「何で?」
『ここは怖いよ、暗いから』
見えない存在の方が、よっぽど怖いと思うけど。
え?おばけ?
「あ、月が出て来た」
少しずつ、青白い光が差し込んできた。
部屋が明るくなり、少しだけホッとする。
『何する?かくれんぼ?』
しないよ。
『じゃあ、蜜吸いに行こうよ!』
夜にやることじゃない。
「寝るか」
見慣れたサイズのベッドは、今と変わっていないのだろう。
『まだ、寝ないでよ!』
「うるさい」
『うるさいって、ひどい!』
高くも低くもない声。
大きな声を出しているはずなのに、響きもしない。
埃が気になるけれど、ごろりと横になる。
『寝ちゃうの?行こうよ!』
どこに?
「…行かない」
『やっと返事した』
嬉しそうな声。
「で?何?」
『何が?』
「何って、夢の中でまで何か用があるの?」
『ううん、サーヤに会いたかったから来ただけ』
「へぇ、そっか。ありがとう」
そしておやすみ。
『寝ちゃうの?夢の中なのに?』
夢の中って分かってている存在。
何だろう?
怖くはない。
だから、魔物じゃない。
『サーヤ』
うん?
『サーヤのおかげで、ぼくらも毎日楽しいよ』
そうですか…。
むにゃ。
『ねえサーヤ?昔みたいに森に行こう』
危ないからやだ。
『ここは、魔物がいないから安全だよ?』
嘘だ。
だって、ランが外はまだ危ないって言ってた。
『あいつは嫌いだ。無理やり扉をこじ開けるから』
そうなんだ。
ランは割と、紳士的なのになぁ。
『サーヤのこと、ガチガチに呪符で巻いてる』
呪符って、何だっけ?
『あ、呪符じゃなくて、何だっけ?』
知らないよ。
『そのせいで、ぼくらの声も届かない』
そうなんだ。
『なのに、サーヤはぼくらのこと大事にしてくれるから好きだ』
大事に?
してるっけ?
というか、誰なんだろ?
知らない。
でも、その子は私を知ってるみたいだ。
『寝ちゃったの?』
聞こえてくる声は心地良い。
眠る前の子守歌だ。
そうだ、懐かしい記憶。
私は眠る時、2段ベッドで1人で寝ていた。
姉達が嫁いでいたから。
なのに、夜になると聞こえて来た気がする。
1人しかいない空間なのに。
いつも、寝入る寸前の出来事。
だから、毎日夢なんだと思ってた。
『サーヤ毎日毎日ありがとう』
何かしたっけ??
記憶にない。
『あの頃みたいに、また遊ぼうね』
明日から。
そう聞こえてきた声。
昔に聞いたことのある声に似ていると、思い出すのは寝落ちする寸前だった。
『楽しみだね?』
ゲートで、ほぼ無理やり。
その光景に笑ってしまった。
その後ランと奥さんと、少しだけお喋りをして眠りについた。
久しぶりに、懐かしい夢を見た。
私が、見習い生になった時のこと。
そして、候補生になった時のこと。
最後に、紡ぎ司になった時のこと。
順番に、パッパッパッと切り替わるような。
短い夢。
紡ぎ司という仕事を知って、なりたいと思ったこと。
紡ぎ司の仕事が、楽しそうだと思ったこと。
純粋に、作業に惹かれたこと。
工房の郷で、他の子ども達が目を輝かせていたように。
探していた“何か”に辿り着いたと喜んだ記憶。
多分、南の地の住人は何かに集中できる時間を求めている。
それが、今叶っている。
毎日毎日、ほぼ仕事をしている現状。
飽きもせず繰り返して3年を過ぎた。
不思議な流れ。
でも、それに満足している私。
今までの簡素な生活。
それが、変化するかもしれない。
だから、見ているのだろうか?
それとは関係ない空間が、急に広がった。
作業場?
何だろう?
回りをキョロキョロしている私。
見慣れているはずなずなのに、少しの違和感。
「何で?」
そっか。
「小さいからだ」
空間が。
見慣れたはずの空間なのに、全体的にコンパクトだ。
『こんにちは』
急に聞こえた声。
「こんにちは」
どこから?
『分からないのに、返事をしたらいけないよ?』
え?そっちから、話しかけて来たのに?
理不尽。
あぁ。
候補生になった時の感覚。
そうだ。
これは、理不尽なやり取りだ。
『ごめんごめん』
謝る。
もう、何なんだ?
『話してよ?』
「…やだよ」
話しても、また何か言うんだろうから。
『ねえ?サーヤ』
何で知ってる?
私の名前。
『知ってるよ。ぼくが好きな名前だから』
え?好きな名前。
『だから、サーヤ話してよ』
どうしようかな?
だって、これ夢だし。
溜め息を付いて、今の家と何が違うのか空間を眺める。
冷蔵庫は同じだ。
昔から、大きかったんだ。
空間には窮屈に見える。
勝手に開けちゃえ。
「何もない」
『ないよ?だって、ここは不毛の地だもの』
え?
不毛の地だったのは、2年位までじゃなかったっけ?
『でもね?この地を潤してくれたのは、君だ』
そうなの?
「あ、蜜はないのかな」
『探せばあるんじゃないかな?』
「蜜は…」
作業場にある、壁にめり込んでいる戸棚。
上の棚を開ける。
でも、中には微かな埃と空瓶のみ。
「ないか…」
『ね?遊ぼうよ』
「2階はどうなってるんだろ?」
『聞こえてるでしょ?』
「部屋も3つなのかな?」
『遊ぼって』
聞こえてる声に構わずに、扉を開ける。
そうだ。
扉。
懐かしい。
『どこ行くの?』
階段を上がり、気に入ってる部屋を開ける。
「あれ?」
今よりも、もっと暗い部屋。
「何で?」
『ここは怖いよ、暗いから』
見えない存在の方が、よっぽど怖いと思うけど。
え?おばけ?
「あ、月が出て来た」
少しずつ、青白い光が差し込んできた。
部屋が明るくなり、少しだけホッとする。
『何する?かくれんぼ?』
しないよ。
『じゃあ、蜜吸いに行こうよ!』
夜にやることじゃない。
「寝るか」
見慣れたサイズのベッドは、今と変わっていないのだろう。
『まだ、寝ないでよ!』
「うるさい」
『うるさいって、ひどい!』
高くも低くもない声。
大きな声を出しているはずなのに、響きもしない。
埃が気になるけれど、ごろりと横になる。
『寝ちゃうの?行こうよ!』
どこに?
「…行かない」
『やっと返事した』
嬉しそうな声。
「で?何?」
『何が?』
「何って、夢の中でまで何か用があるの?」
『ううん、サーヤに会いたかったから来ただけ』
「へぇ、そっか。ありがとう」
そしておやすみ。
『寝ちゃうの?夢の中なのに?』
夢の中って分かってている存在。
何だろう?
怖くはない。
だから、魔物じゃない。
『サーヤ』
うん?
『サーヤのおかげで、ぼくらも毎日楽しいよ』
そうですか…。
むにゃ。
『ねえサーヤ?昔みたいに森に行こう』
危ないからやだ。
『ここは、魔物がいないから安全だよ?』
嘘だ。
だって、ランが外はまだ危ないって言ってた。
『あいつは嫌いだ。無理やり扉をこじ開けるから』
そうなんだ。
ランは割と、紳士的なのになぁ。
『サーヤのこと、ガチガチに呪符で巻いてる』
呪符って、何だっけ?
『あ、呪符じゃなくて、何だっけ?』
知らないよ。
『そのせいで、ぼくらの声も届かない』
そうなんだ。
『なのに、サーヤはぼくらのこと大事にしてくれるから好きだ』
大事に?
してるっけ?
というか、誰なんだろ?
知らない。
でも、その子は私を知ってるみたいだ。
『寝ちゃったの?』
聞こえてくる声は心地良い。
眠る前の子守歌だ。
そうだ、懐かしい記憶。
私は眠る時、2段ベッドで1人で寝ていた。
姉達が嫁いでいたから。
なのに、夜になると聞こえて来た気がする。
1人しかいない空間なのに。
いつも、寝入る寸前の出来事。
だから、毎日夢なんだと思ってた。
『サーヤ毎日毎日ありがとう』
何かしたっけ??
記憶にない。
『あの頃みたいに、また遊ぼうね』
明日から。
そう聞こえてきた声。
昔に聞いたことのある声に似ていると、思い出すのは寝落ちする寸前だった。
『楽しみだね?』
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