子どもって

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ひるやすみ

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機嫌の直った静が、先に校庭に飛び出し、基と続く。
「学童って、校舎の端にあるところだろ?」
旧園舎の端に位置する教室に、学童保育があるという。お迎えが来るまで、みんなで過ごすらしい。
「学校の中からも行けるけど、行っちゃいけないことになっているんだって。見つかったら、学童の先生にも学校の先生にも、外から行くように言われるから」
校庭に出て、グラウンドの端を目指す。
「廊下を挟んで、反対側の教室も学童で借りているんだ」
入り口は開いていた。
キョロキョロしている静が、開いている窓に近付く。

静から少し後ろに続き、基と肩を並べる。
「遊んだり、宿題をしたり、おやつを食べたり、お母さんたちがお迎えに来るまで、ここで過ごすんだ」
基の言葉を聞きながら、教室を覗く。
「そうなんだ」
特に感想はなかった。保育園に預けられたことならある。でも、小学生になってこういう風に誰かと一緒に親を待つという感覚が新鮮だった。
「ウチは母ちゃんが遅いから、きっと迎えに間に合わないな。椿とかに迎えに来られたら、絶対帰りたくないし」
静が、近い兄を想像し、顔を歪ませる。
「静のお兄ちゃんのこと」
椿という聞き慣れない言葉に、基が不思議そうな表情をしていたからそう付け加える。
「何で?ぼく、お兄ちゃんのお迎え嬉しいよ?」

基が素直にそう言った。静は少しバツが悪そうに「へぇ」と答える。
静だって、本当は嫌なわけじゃない。ただ、嬉しいだけじゃないっていうのも本当のこと。
学童の先生が部屋の中の掃除をしていた。開いている窓から、風が入りカーテンがなびいていた。
基は学童の先生が掃除しているのを確認すると、そっと離れた。
さっき言っていたように、声をかけられるのが嫌だったのかもしれない。
「基」
グラウンドとは反対側に移動する。古い方の校長室は、鍵が開いていた。

静と顔を見合わせて、校舎内に戻る。基はわけが分かっていないままだったけど、一緒に付いて来た。
「どこに行くの?」
不思議そうな基に、「しー」とサインを送り、校長室の前に立つ。廊下に足音はない、少し離れた位置にある階段からも音は聞こえない。
そっとドアを開けて、中に入る。
戸惑いながらも、基は一緒に付いて来た。
「中くん、これって、良いの?」
基の小さな問いに、「多分、ダメ」と返答する。
「余計なこと、言うなよ」
静が睨みをきかせるが、それを遮る。
「や、言っても良いよ」
「中!?」

静の驚いた声にも、「うん」と頷く。
ここにはきっとオツさんがいる。前に話してくれた、不安になる人の話を思い出して、基のことを言っている気がした。だから、気になったんだ。
オツさんは聞いているだろう、この会話を。静はオツさんを呼ぶことはない。きっと3人だけの秘密だと思っているから。オツさんが出てこないなら、自分だって呼びかけるつもりはない。
「ほら、これ悪いこと」
言うと、基が泣きそうな顔をした。最近見慣れた、あの怯えた表情だった。
「一緒だ。でも、黙っていても良いんだよ。秘密にしておくことも、世の中にはあるから」
基は何も言わない。

「だけど、一緒に羽賀のとこに行くこともできるよ?」
「ばっか!お前何言ってんだよ?分かってんのか!何でわざわざ怒られに行くんだよ!」
静は焦ったように怒った。
「大丈夫大丈夫。小学生のすることだもん、イタズラで済ましてくれるって」
基を気にしながら、慎重にそう答える。
泣きそうな顔は変わらなかったけれど、基はふっと笑った。
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