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ゲッコウ
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よっことゆたは、2人組。
頼まなくても、一緒にされた。
それが当たり前だったし、2人ともそれが普通だと思っていた。
この建物の中では。
「ゆた?虹って知ってる?」
よっこは何でも知りたがり、ゆたは何でも怖がった。
「虹って、お山みたいな?」
「違うよ。大きな橋みたいなの」
よっこは、自分の頭の上で両手を合わせて、橋を表す。
「橋?大きいの?」
「そう!それで、時間が経つと消えちゃうの!」
ほら、と言ってよっこが見せたのは、図鑑に載っている大きな虹の写真だった。
「うわあ!綺麗」
ゆたの声が嬉しそうだったので、よっこも嬉しくなった。
「きっと、本物はもっとステキなんだと思うの」
「うんうん」
「だから、次に虹が出る時を調べて、見に行こう!」
よっこの楽しそうな声に、ゆたは笑顔だったけれど、急にしょんぼりする。
ふくらんでいた気分も、一気に抜けていくようだった。
「ダメだよ。お外は、怖いもん」
ゆたが断ると、よっこは口を尖らせる。
「ゆたの意気地なし!知らない」
よっこは、勢いで「ふん!」と顔をそらす。
よっこに「知らない」と言われると、ゆたは悲しくなるけれど、“やくそく”が大事だから、口を開く。
「だって、みーちゃんに言ってからじゃないと、お外には行けないし」
ゆたの小さな声に、よっこは下を向く。
「みーちゃんがダメって言ったら、無理だもん」
ゆたの言うことが合っているから、よっこは何も言わなかった。
「みーちゃん、ぼくたちのこと、心配しちゃうから」
「…うん」
よっこは俯いたまま、素直に頷いた。
そんな2人のやり取りは、いつものことで、回りの大人達には全部筒抜けだった。
諦めたように、よっこは窓際に置いてあった椅子に座る。
「ねえ、みーちゃん?」
さっきから同じ空間にいた人は、呼びかけに笑顔で応えてくれた。
「なあに?」
「あのね、こんなに天気が良いと、よっこは何だか、もったいないっていつも思うの」
考えながら、紡ぐ言葉。
ゆたは、少し遠くなったよっこの声を聞きながら、開いたままの虹の写真を手でなぞった。
「もったいないって思うのは、何でなのかな?何がもったいないのかは、よく分からないんだけど。みーちゃんは、そんな時ある?」
「あるわよ。お天気が良くて、空が真っ青で、風が気持ち良い日は、何かしなきゃ!ってすごく思うのね。よっこちゃんとおんなじ、お布団を干して、どこかへ出かけたくなって、ウキウキする気持ちね」
「どこかへ出かけたくなって」という言葉を聞いて、よっこは「そう!」と目を輝かせる。
「大人でも、そんな風に思うんだ」
窺うような声に、「もちろん」と答えが返ってくる。
「思うわよ。そうだ!よっこちゃんも、ゆたくんも、今日の検査が終わったら、好きな本を持って『おそらの部屋』に行きましょうね」
優しい言葉は、2人の意識をよそへ向けさせた。
2人はそれに何となく気付いていたが、「うん」と頷いた。
今日は、月に1度の体を調べる日。
よっこはこの日が退屈で、ゆたはこの日が苦手だった。
みーちゃんが色んな人から「先生」と呼ばれ、自分たちの知らない顔をしているから。
2人の知っているみーちゃんは、優しくて何でも知っていて、2人のことを誰よりも大事にしてくれる、いなくてはならない大人だった。
みーちゃんはいつでも優しいけれど、長く長く体を触られ、たくさんの大人たちに囲まれる日。
その日は色々な所に機械を付け、たくさんの数字を計る「検査」の日だけは、いつもと違うみーちゃんになる。
2人はそれを分かっているから、検査中のみーちゃんには、なるべく話しかけないようにしていた。
誰かに言われたわけではない、2人で決めた2人だけのルールだった。
ルールは、いくつもあった。忘れてしまうものもあったし、何回も確認しながら決めたもの、似たようなものも多かった。
“2人で決めること”が大事で、決めれば決めるほど、2人の絆は強くなっているような気がしていた。
「虹を見てみたい」
よっこの呟きは、「いいなあ」と言っているように聞こえた。
今日も、長い長い時間が過ぎて行った。
検査が終わって、『おそらの部屋』に3人はいた。
3人がそう呼ぶ、高い天井のこの部屋は、太陽の光が降り注ぎ、いつも明るい。
ここにいると、体がポカポカしてきて、まるでお外で日向ぼっこをしているような気分になれるから、よっことゆたのお気に入りの部屋だった。
でも、『おそらの部屋』は勝手に入ることができない。2人の体は、暑すぎるとすぐに熱を出してしまうから、みーちゃんに“やくそく”として言われていた。
カーペットの上に寝そべり、3人はゴロゴロしていた。
よっこが、起き上がり座り直した。
「お外に、行っちゃダメ?」
問いかけたよっこに、みーちゃんは苦笑する。
いつもこの部屋に来ると、よっこは我慢できずに外に行きたがる。
決まってされる問いかけ。
「2人はお日様で、目がチカチカしちゃうでしょ?」
みーちゃんの心配する声に、よっこは「大丈夫」と答える。
「今日も合わせて、もう3回も『いじょうなし』だったんだし、そーっと目を開ければ、そんなにたくさんお日様を見ないよ?」
よっこの言葉に、ゆたも起き上がる。
「手で隠しながら、お日様をみたらどうかな?」
2人は必死になって、提案した。
2人の真剣な表情に、みーちゃんはしばらく考えていたが、2人と同じようにその場に座り直す。
しかし、残念そうに「ごめんね」と言った。
「もし、お外に出て体がジリジリしちゃったら、大変だもの」
本当はそれだけではなかったが、みーちゃんは言葉を選んで2人に告げた。
「覚えているかな?1度ジリジリしちゃうと、何日も体が熱くなっちゃうの。熱が下がって、きちんと体が治るまで、お部屋の中でもお日様を見れなくなっちゃうわ。体中がぶくぶくの膜でいっぱいになって、毎日お薬を塗らないとお肌がビリビリして大変なことになるの。2人が元気になるまで、この部屋にも来れなくなっちゃうのは、もったいないでしょ?」
この部屋も、お絵描きで遊ぶ部屋も、体を動かす遊具がある部屋も、2人が日常を過ごす場所全部に、お日様の光が届いている。それは2人とも、よく分かっていた。
このお日様なら安全だと、みーちゃんは教えてくれた。
2人がお外に出ない限り、あのお日様はずっと優しいと“やくそく”してくれた。
“やくそく”を破ると、お日様の光が強すぎて、2人の体が焼けてしまうのだ、と。
ようやく2人も、それが分かって来たところだった。
2人は、お日様が大好きだ。
でも、お日様の怖さも知っていた。
ずっとずっと昔、まだ2人が廊下の手すりにぶつからないくらい小さい頃、1度だけ外に出てしまった。
みーちゃんが、絶対にお外を覗いてはいけないと言っていたのに、2人は“やくそく”を守れなかった。
どこからか流れてくる涼しい風と、緑の匂いに誘われて、重い鉄の扉を2人で開けてしまった。
冷たい扉の向こうには、眩しくて大きなお日様がいた。
2人が本物のお日様に感動する前に、あっという間に体が変になってしまった。
まるで、熱いお湯に浸かっているような、高い熱を出してしまったような感覚。
目は特に、チカチカが止まらず、痛さを感じた。
目だけじゃない、顔も手もヒリヒリして、体全部がジリジリ焦げていくような恐怖。
自分の体が、自分のものじゃないような不思議。
2人は、あの怖さを覚えていた。
お日様が悪いわけじゃない。
自分の体が悪いわけじゃない。
いろんな理由を見つけて、2人はお互いを慰めた。
それでも2人は、お外に、空に、お日様に憧れていた。
怖くても、痛くても、熱くても、泣きそうになっても、お外に行きたかった。
「ねえ、みーちゃん。ぼくは、ずっとお外に出ないまま、大きくなるのかな?」
問われたみーちゃんが、少し困った顔をした。
「もしそうなら、私もそのまま大きくなるってことだわ」
沈黙に、よっこの声が重なった。
自分も寂しいのに、口を尖らせたまま、よっこはゆたを見た。
「おんなじ」
『知らない』と言われると、悲しくなるけれど、『おんなじ』はどんな慰めよりも、ゆたは嬉しくなった。
「ありがとう」
2人のやり取りに、みーちゃんはやっぱり困った顔のまま笑った。
2人が『おそらの部屋』から戻ると、遊ぶ部屋にはくまおじさんがいた。
くまおじさんは、みーちゃんと違ってたくさん優しくはないけれど、いつも2人のことを見に来てくれる。
ちょっと優しいおじさんだった。
よっことゆたが問いかける、色々な問いかけに答えをくれる。
何でくまおじさんと呼ぶのか、それはいつもくまの絵がついたハンカチを持っているから。
大きな体をして、ひげを生やした顔だけど、ゆたはくまおじさんが怖くなかった。
「くまおじさん、虹って見たことある?」
よっこの問いに、くまおじさんは開かれたままの図鑑を見た。
2人の側に行き、「どっこいしょ」と床に座った。
「ある。でも、すぐに消える」
大きくはないけれど、はっきり話す言葉に2人は顔を見合わせる。
「図鑑とおんなじだ」
よっこは笑った。
「くまおじさんは、調べて見に行ったの?」
ゆたの問いに、くまおじさんは首を振った。
「通り雨の後、空に出ていた」
「雨は、どこを通るの?」
ゆたの不思議そうな声に、くまおじさんは声を出さずに笑った。
「雨は自由だからな。色んな所を通る。決まった所を通るわけじゃない」
「車とは違うのね」
言われた言葉を、よっこは頑張って分かろうとした。
「雨の後なら、虹っていつも見えるものなの?」
今まで、雨の日にそんなことを気にしていなかったけれど、これから気を付けて見てみよう。
そんなよっこの素振りに、くまおじさんは『いや』とまた首を振った。
「雨が降ったからと言って、必ず見えるわけじゃない」
はっきりとしたくまおじさんの言葉に、2人はガッカリする。
「そんなに見たいなら、いつもみたいにあそこにでっかく映してもらえ」
くまおじさんは部屋の端にある、白い幕を指差した。
みーちゃんは、できるだけ2人の願いを叶えてくれる。
お外に行く以外のお願いごとなら、無理そうなことでも、いつも何とかしてくれた。
2人が映画を観たいとお願いした日に“スクリーン”というものを設置してくれた。
大きなケーキや、面白い動きをするお人形。
お喋りする猫や、走り回るウサギなど2人が知らない物をたくさん見せてくれる。
でも、今回は違う。
「ちゃんと、本物が見たいの。自分の目で」
「よっこちゃんは、大きい橋を見たいんだって」
ゆたの言葉を、くまおじさんは分かっていなかったが、『そうか』と頷く。
「今なら、夜でも見える虹があったと思うが」
くまおじさんは、自分の頭の中で思い出したことを2人に伝えた。
「ただ、アイツに知られたら大変なことになるけどな。お前たちがどうしても見たいなら、秘密にするしかない」
くまおじさんは、みーちゃんをいつも『アイツ』と呼ぶ。
急な提案にゆたは迷ったが、よっこはすでに秘密を作るつもりでいた。
ゆたが気にするのは、くまおじさんの言う『大変なこと』で、それはみーちゃんが2人を心配しすぎることだった。
いつでも熱を出しやすく、体調を崩しやすい2人のことを、みーちゃんは誰よりも心配してくれる。
顔や声を思い出せないお母さんという存在よりも、ずっと何よりもお母さんだった。
「大丈夫だよ」「すぐ治るからね」「ここにいるよ」そう言って、ずっと付き添ってくれるみーちゃんを見る度に、ゆたはいつも泣きそうな気持ちになった。
気持ちは迷っていたけれど、怖い気持ちもあるけれど、でも…。
「大丈夫、ちょっと見るだけ。見られなかったら、諦めてすぐに戻るもん」
楽しそうなよっこの声に、ゆたも我慢できずに賛成した。
「みーちゃんには、後で絶対に『ごめんなさい』を言うから」
ゆたの声には、みーちゃんへのごめんなさいがすでに溢れていた。
2人の顔には、赤みが差していた。
くまおじさんは、これ以上2人興奮させたらいけないと、その場に立ち上がった。
「今日の夜、雨が降った後に可能性がある。雨がしっかり止んでから、しばらく待つんだぞ」
くまおじさんは、ポケットに入っていたタブレットを操作しながらそう言った。
「寒くないように、上着は長袖を着ること。もし咳でも出たら、アイツが悲しむ」
くまおじさんの言葉に、悲しそうなみーちゃんがしっかりと浮かぶ。
「大丈夫って言うなら、それを見せるために頑張るしかないからな」
くまおじさんの言葉に、2人は一瞬考える。
2人がしたいことは、多分みーちゃんを悲しませる。
だけど。
でも。
「そうだな。今夜なら条件が重なるだろう…」
すぐそこにチャンスがあることに、2人は満面の笑みを浮かべた。
「「ありがとう!!!」」
内緒の相談に、くまおじさんは小さく手を振って部屋を出て行った。
2人とも、みーちゃんに知られないように、その時が来るのを待った。
お日様が沈む頃、急に雨が降って来た。
突然の雨に、2人ははしゃいだ。
ごはんもしっかり食べて、お風呂にきちんと入り、歯磨きもちゃんとして、あとは寝るだけにしておいた。
いつでもお外に行けるよう、準備はバッチリだった。
いつもより早い行動に、みーちゃんは不思議そうな顔をしたが、何も聞かなかった。
「雨が止むかな?」
「止んだら、少し待たないと。そうしたら、外に行くわよ」
2人は何度もクスクス笑い、雨が止むのを待った。
ベッドの上に膝を抱えて座り、眠くなるのも、目が閉じそうになるのも我慢した。
お互いに、「もう少し」と言いながら、励まし合った。
どのくらいの時間が過ぎたか分からなくなった頃、シトシトと降っていた雨の音が止まった。
ピタリと止んだ雨に、2人は気が付いて顔を見合わせる。
こっそりとベッドから降り、スリッパじゃなくて、上履きを履いた。
カーテンは少し開いていて、そこから見える景色はいつもと少し違っていた。
いつもは、お外に見える街灯やお月様の光があるけれど、今日はどんなに目を凝らしても、真っ暗なことしか分からなかった。
音を立てないように、静かに歩くと夜に溶け込んだような気がした。
2人の手はしっかりと繋がれ、その場に着いた。
いつか開けた鉄の扉は、あの時と同じくらい、ひんやりとしていた。
あの頃よりも背が高くなったけれど、わくわくした気持ちは変わらなかった。
そこには少しの不安もあるけれど、2人が一緒だから引き返さなかった。
ゆっくりと開いた、大きな鉄の扉。
よっことゆたは、とても久しぶりに屋根のない空間に出た。
「雨、止んだね」
ゆたは、空を見上げた。
「そうね。でも白くなっていて、少ししか空が分からない」
よっこも同じように空を見上げた。
昼間の温かさと急な雨で、気温が変わり空には霧が立ち込めていた。
少し風が吹いているおかげで、霧には隙間が出来ていた。
2人のわくわくを、風がさらっていく。
温まっていた2人の体も、少しずつ冷えていった。
「もう少し、見たいの」
しっかり繋がれたゆたの手を揺らして、よっこは願った。
同じく揺らしてゆたは応えた。
「うん、もうすぐ星は見れそうだもんね」
何回か風がひゅうと鳴き、少しずつ空が見えて来た。
霧が晴れるのを見ながら、2人のドキドキは大きくなっていく。
さっきまでもやもやして、何も見えなかったのに。
空には、キラキラと星が光っていた。
よっことゆたは首が痛くなるほど、空を見た。
上から下に、横から横に、色々なところをじっと見つめていた。
繋がれた手を、よっこがぎゅっと握った。
声にならない感動は、すぐにゆたにも伝わった。
「ドキドキしずぎて、熱が出そう」
よっこが笑う。
「ドキドキが大きくて、ちっとも怖くない」
ゆたも笑った。
2人はそこに、虹を見た。
夜に浮かぶ月虹を。
時間にしたら、わずかな時間。
2人が話すのも忘れて見つめている間に、光を放つ白い虹は消えてしまった。
けれど、2人はしばらく空を眺めていた。
「見れたね、虹」
ゆたの声がとても弾んでいた。
「本物を、しっかり見れたわ」
よっこの声も、興奮していた。
こっそり戻った2人だったが、そこには苦笑を浮かべるみーちゃんと、昼間に見たのと変わらないくまおじさんがいた。
2人がどう言おうか迷っていると、みーちゃんはベッドを指差した。
「2人とも、温かくして寝るのよ」
「「はーい!」」
2人はうまくいったことを、くまおじさんに笑顔で伝える。
くまおじさんはそれが分かると、小さく頷いた。
もそもそとベッドに潜り込み、よっこもゆたも赤い顔のまま目を閉じる。
みーちゃんは、そんな2人の顔や首、腕や足などを撫でた。
痛いところはないか、怪我はしていないか、聞かれてはいないけれど、温かい手で確認していた。
「みーちゃん、ごめんなさい」
ゆたの素直な反省に、みーちゃんは「うん」と笑ってくれた。
よっこも同じく「ごめんね」と消えそうな声を出した。
それにもみーちゃんは「うん」と笑ってくれた。
2人の寝息がすぐに聞こえてきたので、とりあえず安心して、みーちゃんもくまおじさんも、部屋を後にする。
「話はまた明日ね。おやすみなさい」
2人はその夜、夢を見た。
天気の良い日に、屋根のない外で遊ぶ夢。
みーちゃんとくまおじさんと、晴れた太陽の光を浴びてみんな楽しそうだった。
空には鮮やかな虹があり、いつまでもキラキラ光っていた。
頼まなくても、一緒にされた。
それが当たり前だったし、2人ともそれが普通だと思っていた。
この建物の中では。
「ゆた?虹って知ってる?」
よっこは何でも知りたがり、ゆたは何でも怖がった。
「虹って、お山みたいな?」
「違うよ。大きな橋みたいなの」
よっこは、自分の頭の上で両手を合わせて、橋を表す。
「橋?大きいの?」
「そう!それで、時間が経つと消えちゃうの!」
ほら、と言ってよっこが見せたのは、図鑑に載っている大きな虹の写真だった。
「うわあ!綺麗」
ゆたの声が嬉しそうだったので、よっこも嬉しくなった。
「きっと、本物はもっとステキなんだと思うの」
「うんうん」
「だから、次に虹が出る時を調べて、見に行こう!」
よっこの楽しそうな声に、ゆたは笑顔だったけれど、急にしょんぼりする。
ふくらんでいた気分も、一気に抜けていくようだった。
「ダメだよ。お外は、怖いもん」
ゆたが断ると、よっこは口を尖らせる。
「ゆたの意気地なし!知らない」
よっこは、勢いで「ふん!」と顔をそらす。
よっこに「知らない」と言われると、ゆたは悲しくなるけれど、“やくそく”が大事だから、口を開く。
「だって、みーちゃんに言ってからじゃないと、お外には行けないし」
ゆたの小さな声に、よっこは下を向く。
「みーちゃんがダメって言ったら、無理だもん」
ゆたの言うことが合っているから、よっこは何も言わなかった。
「みーちゃん、ぼくたちのこと、心配しちゃうから」
「…うん」
よっこは俯いたまま、素直に頷いた。
そんな2人のやり取りは、いつものことで、回りの大人達には全部筒抜けだった。
諦めたように、よっこは窓際に置いてあった椅子に座る。
「ねえ、みーちゃん?」
さっきから同じ空間にいた人は、呼びかけに笑顔で応えてくれた。
「なあに?」
「あのね、こんなに天気が良いと、よっこは何だか、もったいないっていつも思うの」
考えながら、紡ぐ言葉。
ゆたは、少し遠くなったよっこの声を聞きながら、開いたままの虹の写真を手でなぞった。
「もったいないって思うのは、何でなのかな?何がもったいないのかは、よく分からないんだけど。みーちゃんは、そんな時ある?」
「あるわよ。お天気が良くて、空が真っ青で、風が気持ち良い日は、何かしなきゃ!ってすごく思うのね。よっこちゃんとおんなじ、お布団を干して、どこかへ出かけたくなって、ウキウキする気持ちね」
「どこかへ出かけたくなって」という言葉を聞いて、よっこは「そう!」と目を輝かせる。
「大人でも、そんな風に思うんだ」
窺うような声に、「もちろん」と答えが返ってくる。
「思うわよ。そうだ!よっこちゃんも、ゆたくんも、今日の検査が終わったら、好きな本を持って『おそらの部屋』に行きましょうね」
優しい言葉は、2人の意識をよそへ向けさせた。
2人はそれに何となく気付いていたが、「うん」と頷いた。
今日は、月に1度の体を調べる日。
よっこはこの日が退屈で、ゆたはこの日が苦手だった。
みーちゃんが色んな人から「先生」と呼ばれ、自分たちの知らない顔をしているから。
2人の知っているみーちゃんは、優しくて何でも知っていて、2人のことを誰よりも大事にしてくれる、いなくてはならない大人だった。
みーちゃんはいつでも優しいけれど、長く長く体を触られ、たくさんの大人たちに囲まれる日。
その日は色々な所に機械を付け、たくさんの数字を計る「検査」の日だけは、いつもと違うみーちゃんになる。
2人はそれを分かっているから、検査中のみーちゃんには、なるべく話しかけないようにしていた。
誰かに言われたわけではない、2人で決めた2人だけのルールだった。
ルールは、いくつもあった。忘れてしまうものもあったし、何回も確認しながら決めたもの、似たようなものも多かった。
“2人で決めること”が大事で、決めれば決めるほど、2人の絆は強くなっているような気がしていた。
「虹を見てみたい」
よっこの呟きは、「いいなあ」と言っているように聞こえた。
今日も、長い長い時間が過ぎて行った。
検査が終わって、『おそらの部屋』に3人はいた。
3人がそう呼ぶ、高い天井のこの部屋は、太陽の光が降り注ぎ、いつも明るい。
ここにいると、体がポカポカしてきて、まるでお外で日向ぼっこをしているような気分になれるから、よっことゆたのお気に入りの部屋だった。
でも、『おそらの部屋』は勝手に入ることができない。2人の体は、暑すぎるとすぐに熱を出してしまうから、みーちゃんに“やくそく”として言われていた。
カーペットの上に寝そべり、3人はゴロゴロしていた。
よっこが、起き上がり座り直した。
「お外に、行っちゃダメ?」
問いかけたよっこに、みーちゃんは苦笑する。
いつもこの部屋に来ると、よっこは我慢できずに外に行きたがる。
決まってされる問いかけ。
「2人はお日様で、目がチカチカしちゃうでしょ?」
みーちゃんの心配する声に、よっこは「大丈夫」と答える。
「今日も合わせて、もう3回も『いじょうなし』だったんだし、そーっと目を開ければ、そんなにたくさんお日様を見ないよ?」
よっこの言葉に、ゆたも起き上がる。
「手で隠しながら、お日様をみたらどうかな?」
2人は必死になって、提案した。
2人の真剣な表情に、みーちゃんはしばらく考えていたが、2人と同じようにその場に座り直す。
しかし、残念そうに「ごめんね」と言った。
「もし、お外に出て体がジリジリしちゃったら、大変だもの」
本当はそれだけではなかったが、みーちゃんは言葉を選んで2人に告げた。
「覚えているかな?1度ジリジリしちゃうと、何日も体が熱くなっちゃうの。熱が下がって、きちんと体が治るまで、お部屋の中でもお日様を見れなくなっちゃうわ。体中がぶくぶくの膜でいっぱいになって、毎日お薬を塗らないとお肌がビリビリして大変なことになるの。2人が元気になるまで、この部屋にも来れなくなっちゃうのは、もったいないでしょ?」
この部屋も、お絵描きで遊ぶ部屋も、体を動かす遊具がある部屋も、2人が日常を過ごす場所全部に、お日様の光が届いている。それは2人とも、よく分かっていた。
このお日様なら安全だと、みーちゃんは教えてくれた。
2人がお外に出ない限り、あのお日様はずっと優しいと“やくそく”してくれた。
“やくそく”を破ると、お日様の光が強すぎて、2人の体が焼けてしまうのだ、と。
ようやく2人も、それが分かって来たところだった。
2人は、お日様が大好きだ。
でも、お日様の怖さも知っていた。
ずっとずっと昔、まだ2人が廊下の手すりにぶつからないくらい小さい頃、1度だけ外に出てしまった。
みーちゃんが、絶対にお外を覗いてはいけないと言っていたのに、2人は“やくそく”を守れなかった。
どこからか流れてくる涼しい風と、緑の匂いに誘われて、重い鉄の扉を2人で開けてしまった。
冷たい扉の向こうには、眩しくて大きなお日様がいた。
2人が本物のお日様に感動する前に、あっという間に体が変になってしまった。
まるで、熱いお湯に浸かっているような、高い熱を出してしまったような感覚。
目は特に、チカチカが止まらず、痛さを感じた。
目だけじゃない、顔も手もヒリヒリして、体全部がジリジリ焦げていくような恐怖。
自分の体が、自分のものじゃないような不思議。
2人は、あの怖さを覚えていた。
お日様が悪いわけじゃない。
自分の体が悪いわけじゃない。
いろんな理由を見つけて、2人はお互いを慰めた。
それでも2人は、お外に、空に、お日様に憧れていた。
怖くても、痛くても、熱くても、泣きそうになっても、お外に行きたかった。
「ねえ、みーちゃん。ぼくは、ずっとお外に出ないまま、大きくなるのかな?」
問われたみーちゃんが、少し困った顔をした。
「もしそうなら、私もそのまま大きくなるってことだわ」
沈黙に、よっこの声が重なった。
自分も寂しいのに、口を尖らせたまま、よっこはゆたを見た。
「おんなじ」
『知らない』と言われると、悲しくなるけれど、『おんなじ』はどんな慰めよりも、ゆたは嬉しくなった。
「ありがとう」
2人のやり取りに、みーちゃんはやっぱり困った顔のまま笑った。
2人が『おそらの部屋』から戻ると、遊ぶ部屋にはくまおじさんがいた。
くまおじさんは、みーちゃんと違ってたくさん優しくはないけれど、いつも2人のことを見に来てくれる。
ちょっと優しいおじさんだった。
よっことゆたが問いかける、色々な問いかけに答えをくれる。
何でくまおじさんと呼ぶのか、それはいつもくまの絵がついたハンカチを持っているから。
大きな体をして、ひげを生やした顔だけど、ゆたはくまおじさんが怖くなかった。
「くまおじさん、虹って見たことある?」
よっこの問いに、くまおじさんは開かれたままの図鑑を見た。
2人の側に行き、「どっこいしょ」と床に座った。
「ある。でも、すぐに消える」
大きくはないけれど、はっきり話す言葉に2人は顔を見合わせる。
「図鑑とおんなじだ」
よっこは笑った。
「くまおじさんは、調べて見に行ったの?」
ゆたの問いに、くまおじさんは首を振った。
「通り雨の後、空に出ていた」
「雨は、どこを通るの?」
ゆたの不思議そうな声に、くまおじさんは声を出さずに笑った。
「雨は自由だからな。色んな所を通る。決まった所を通るわけじゃない」
「車とは違うのね」
言われた言葉を、よっこは頑張って分かろうとした。
「雨の後なら、虹っていつも見えるものなの?」
今まで、雨の日にそんなことを気にしていなかったけれど、これから気を付けて見てみよう。
そんなよっこの素振りに、くまおじさんは『いや』とまた首を振った。
「雨が降ったからと言って、必ず見えるわけじゃない」
はっきりとしたくまおじさんの言葉に、2人はガッカリする。
「そんなに見たいなら、いつもみたいにあそこにでっかく映してもらえ」
くまおじさんは部屋の端にある、白い幕を指差した。
みーちゃんは、できるだけ2人の願いを叶えてくれる。
お外に行く以外のお願いごとなら、無理そうなことでも、いつも何とかしてくれた。
2人が映画を観たいとお願いした日に“スクリーン”というものを設置してくれた。
大きなケーキや、面白い動きをするお人形。
お喋りする猫や、走り回るウサギなど2人が知らない物をたくさん見せてくれる。
でも、今回は違う。
「ちゃんと、本物が見たいの。自分の目で」
「よっこちゃんは、大きい橋を見たいんだって」
ゆたの言葉を、くまおじさんは分かっていなかったが、『そうか』と頷く。
「今なら、夜でも見える虹があったと思うが」
くまおじさんは、自分の頭の中で思い出したことを2人に伝えた。
「ただ、アイツに知られたら大変なことになるけどな。お前たちがどうしても見たいなら、秘密にするしかない」
くまおじさんは、みーちゃんをいつも『アイツ』と呼ぶ。
急な提案にゆたは迷ったが、よっこはすでに秘密を作るつもりでいた。
ゆたが気にするのは、くまおじさんの言う『大変なこと』で、それはみーちゃんが2人を心配しすぎることだった。
いつでも熱を出しやすく、体調を崩しやすい2人のことを、みーちゃんは誰よりも心配してくれる。
顔や声を思い出せないお母さんという存在よりも、ずっと何よりもお母さんだった。
「大丈夫だよ」「すぐ治るからね」「ここにいるよ」そう言って、ずっと付き添ってくれるみーちゃんを見る度に、ゆたはいつも泣きそうな気持ちになった。
気持ちは迷っていたけれど、怖い気持ちもあるけれど、でも…。
「大丈夫、ちょっと見るだけ。見られなかったら、諦めてすぐに戻るもん」
楽しそうなよっこの声に、ゆたも我慢できずに賛成した。
「みーちゃんには、後で絶対に『ごめんなさい』を言うから」
ゆたの声には、みーちゃんへのごめんなさいがすでに溢れていた。
2人の顔には、赤みが差していた。
くまおじさんは、これ以上2人興奮させたらいけないと、その場に立ち上がった。
「今日の夜、雨が降った後に可能性がある。雨がしっかり止んでから、しばらく待つんだぞ」
くまおじさんは、ポケットに入っていたタブレットを操作しながらそう言った。
「寒くないように、上着は長袖を着ること。もし咳でも出たら、アイツが悲しむ」
くまおじさんの言葉に、悲しそうなみーちゃんがしっかりと浮かぶ。
「大丈夫って言うなら、それを見せるために頑張るしかないからな」
くまおじさんの言葉に、2人は一瞬考える。
2人がしたいことは、多分みーちゃんを悲しませる。
だけど。
でも。
「そうだな。今夜なら条件が重なるだろう…」
すぐそこにチャンスがあることに、2人は満面の笑みを浮かべた。
「「ありがとう!!!」」
内緒の相談に、くまおじさんは小さく手を振って部屋を出て行った。
2人とも、みーちゃんに知られないように、その時が来るのを待った。
お日様が沈む頃、急に雨が降って来た。
突然の雨に、2人ははしゃいだ。
ごはんもしっかり食べて、お風呂にきちんと入り、歯磨きもちゃんとして、あとは寝るだけにしておいた。
いつでもお外に行けるよう、準備はバッチリだった。
いつもより早い行動に、みーちゃんは不思議そうな顔をしたが、何も聞かなかった。
「雨が止むかな?」
「止んだら、少し待たないと。そうしたら、外に行くわよ」
2人は何度もクスクス笑い、雨が止むのを待った。
ベッドの上に膝を抱えて座り、眠くなるのも、目が閉じそうになるのも我慢した。
お互いに、「もう少し」と言いながら、励まし合った。
どのくらいの時間が過ぎたか分からなくなった頃、シトシトと降っていた雨の音が止まった。
ピタリと止んだ雨に、2人は気が付いて顔を見合わせる。
こっそりとベッドから降り、スリッパじゃなくて、上履きを履いた。
カーテンは少し開いていて、そこから見える景色はいつもと少し違っていた。
いつもは、お外に見える街灯やお月様の光があるけれど、今日はどんなに目を凝らしても、真っ暗なことしか分からなかった。
音を立てないように、静かに歩くと夜に溶け込んだような気がした。
2人の手はしっかりと繋がれ、その場に着いた。
いつか開けた鉄の扉は、あの時と同じくらい、ひんやりとしていた。
あの頃よりも背が高くなったけれど、わくわくした気持ちは変わらなかった。
そこには少しの不安もあるけれど、2人が一緒だから引き返さなかった。
ゆっくりと開いた、大きな鉄の扉。
よっことゆたは、とても久しぶりに屋根のない空間に出た。
「雨、止んだね」
ゆたは、空を見上げた。
「そうね。でも白くなっていて、少ししか空が分からない」
よっこも同じように空を見上げた。
昼間の温かさと急な雨で、気温が変わり空には霧が立ち込めていた。
少し風が吹いているおかげで、霧には隙間が出来ていた。
2人のわくわくを、風がさらっていく。
温まっていた2人の体も、少しずつ冷えていった。
「もう少し、見たいの」
しっかり繋がれたゆたの手を揺らして、よっこは願った。
同じく揺らしてゆたは応えた。
「うん、もうすぐ星は見れそうだもんね」
何回か風がひゅうと鳴き、少しずつ空が見えて来た。
霧が晴れるのを見ながら、2人のドキドキは大きくなっていく。
さっきまでもやもやして、何も見えなかったのに。
空には、キラキラと星が光っていた。
よっことゆたは首が痛くなるほど、空を見た。
上から下に、横から横に、色々なところをじっと見つめていた。
繋がれた手を、よっこがぎゅっと握った。
声にならない感動は、すぐにゆたにも伝わった。
「ドキドキしずぎて、熱が出そう」
よっこが笑う。
「ドキドキが大きくて、ちっとも怖くない」
ゆたも笑った。
2人はそこに、虹を見た。
夜に浮かぶ月虹を。
時間にしたら、わずかな時間。
2人が話すのも忘れて見つめている間に、光を放つ白い虹は消えてしまった。
けれど、2人はしばらく空を眺めていた。
「見れたね、虹」
ゆたの声がとても弾んでいた。
「本物を、しっかり見れたわ」
よっこの声も、興奮していた。
こっそり戻った2人だったが、そこには苦笑を浮かべるみーちゃんと、昼間に見たのと変わらないくまおじさんがいた。
2人がどう言おうか迷っていると、みーちゃんはベッドを指差した。
「2人とも、温かくして寝るのよ」
「「はーい!」」
2人はうまくいったことを、くまおじさんに笑顔で伝える。
くまおじさんはそれが分かると、小さく頷いた。
もそもそとベッドに潜り込み、よっこもゆたも赤い顔のまま目を閉じる。
みーちゃんは、そんな2人の顔や首、腕や足などを撫でた。
痛いところはないか、怪我はしていないか、聞かれてはいないけれど、温かい手で確認していた。
「みーちゃん、ごめんなさい」
ゆたの素直な反省に、みーちゃんは「うん」と笑ってくれた。
よっこも同じく「ごめんね」と消えそうな声を出した。
それにもみーちゃんは「うん」と笑ってくれた。
2人の寝息がすぐに聞こえてきたので、とりあえず安心して、みーちゃんもくまおじさんも、部屋を後にする。
「話はまた明日ね。おやすみなさい」
2人はその夜、夢を見た。
天気の良い日に、屋根のない外で遊ぶ夢。
みーちゃんとくまおじさんと、晴れた太陽の光を浴びてみんな楽しそうだった。
空には鮮やかな虹があり、いつまでもキラキラ光っていた。
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