11 / 49
ペットには躾が必要です
①
ペットを手に入れた次の週の月曜日。
俺は喫煙室で会社の先輩方に囲まれている。
うーん、以前にもこんな状況があったような。
俺は眉尻を下げて、困ったなという表情を演出している。
「犬飼!!!やったなお前!!!」
「何のことだかさっぱりなんですが…」
「しらばっくれるんじゃねえよ!!あの鬼の副部長を落としたって部署中の噂だぞ!!!」
今日環さんは俺が買ってあげたシンプルなシルバーネックレスをつけて出社していた。
決して目立つ類のものではないが、あの環さんが洒落っ気のあるものをつけているというだけでみんながどよめいている。
しかも、先週の金曜日までは何もつけていなかったのに、俺と一緒に帰宅した次の週にはネックレスをつけてきている。
俺が怪しまれるのも当然のことだろう。
「モテるしコミュ力もあるし仕事もできるし…俺らにとってお前は敵のような存在だが、まさか本当に副部長を手籠めにしちまうなんてな…」
「いかにも『俺の物です』といわんばかりのネックレスまで付けさせやがって…ラブラブかよ畜生…」
「けど副部長ってよく見るときれいな顔してるんだよな…普段は仏頂面だけど恋人にだけ見せる笑顔がギャップ萌え!ってパターンだろ!?」
「そう考えると俺もアタックしときゃ良かったな…無理だろうけど…」
俺が環さんを恋人にしたという結論で勝手に話が進んでいる。
もちろん環さんは俺のペットなので首輪代わりに着けさせてるだけですよ、なんてことは言えない。
「俺なんかが副部長のお眼鏡にかなうわけがないですよ」
「しらばっくれる気か!?じゃああのネックレスはなんだよ!」
「さっぱり見当もつきません。俺だって気になってるんですよ」
先輩方が訝しげに眉根を寄せている。
その後も尋問は続いたが、俺は「さあ」「分かりません」で乗り切った。
疑いは晴れていなかったが、先輩方もこれ以上は無駄だと悟ったのかため息をついて喫煙室から出ていった。
「ふ」
あまりにも事がうまく運びすぎていて、一人でいるにも関わらず笑ってしまった。
俺はポケットから電子タバコを取り出し薄い煙を吐く。
あんな幼稚な言い訳で先輩方が納得するわけがない。
今頃「副部長と犬飼が付き合っている」という噂が光の速さで流れていることだろう。
もちろんこれも想定内。
飲み会で環さんをお持ち帰りしていることもあり、このタイミングでネックレスを渡せば面倒なことになるなんて分かりきっていた。
それでも、俺は一度手に入れたものを手放す気はない。
多少リスキーだったとしても、これで環さんに悪い虫が付かないなら問題ない。
先輩に詰問されて交際を否定した理由は、俺のキャラ設定上それらしいと判断したからだ。
「俺、実は副部長と付き合ってるんです」なんていう新入社員がいたら鼻につくだろう。
先輩方から可愛がられるためにも、俺は人懐っこくて毒気のない「犬飼日向」を演じる必要がある。
俺は喫煙室で会社の先輩方に囲まれている。
うーん、以前にもこんな状況があったような。
俺は眉尻を下げて、困ったなという表情を演出している。
「犬飼!!!やったなお前!!!」
「何のことだかさっぱりなんですが…」
「しらばっくれるんじゃねえよ!!あの鬼の副部長を落としたって部署中の噂だぞ!!!」
今日環さんは俺が買ってあげたシンプルなシルバーネックレスをつけて出社していた。
決して目立つ類のものではないが、あの環さんが洒落っ気のあるものをつけているというだけでみんながどよめいている。
しかも、先週の金曜日までは何もつけていなかったのに、俺と一緒に帰宅した次の週にはネックレスをつけてきている。
俺が怪しまれるのも当然のことだろう。
「モテるしコミュ力もあるし仕事もできるし…俺らにとってお前は敵のような存在だが、まさか本当に副部長を手籠めにしちまうなんてな…」
「いかにも『俺の物です』といわんばかりのネックレスまで付けさせやがって…ラブラブかよ畜生…」
「けど副部長ってよく見るときれいな顔してるんだよな…普段は仏頂面だけど恋人にだけ見せる笑顔がギャップ萌え!ってパターンだろ!?」
「そう考えると俺もアタックしときゃ良かったな…無理だろうけど…」
俺が環さんを恋人にしたという結論で勝手に話が進んでいる。
もちろん環さんは俺のペットなので首輪代わりに着けさせてるだけですよ、なんてことは言えない。
「俺なんかが副部長のお眼鏡にかなうわけがないですよ」
「しらばっくれる気か!?じゃああのネックレスはなんだよ!」
「さっぱり見当もつきません。俺だって気になってるんですよ」
先輩方が訝しげに眉根を寄せている。
その後も尋問は続いたが、俺は「さあ」「分かりません」で乗り切った。
疑いは晴れていなかったが、先輩方もこれ以上は無駄だと悟ったのかため息をついて喫煙室から出ていった。
「ふ」
あまりにも事がうまく運びすぎていて、一人でいるにも関わらず笑ってしまった。
俺はポケットから電子タバコを取り出し薄い煙を吐く。
あんな幼稚な言い訳で先輩方が納得するわけがない。
今頃「副部長と犬飼が付き合っている」という噂が光の速さで流れていることだろう。
もちろんこれも想定内。
飲み会で環さんをお持ち帰りしていることもあり、このタイミングでネックレスを渡せば面倒なことになるなんて分かりきっていた。
それでも、俺は一度手に入れたものを手放す気はない。
多少リスキーだったとしても、これで環さんに悪い虫が付かないなら問題ない。
先輩に詰問されて交際を否定した理由は、俺のキャラ設定上それらしいと判断したからだ。
「俺、実は副部長と付き合ってるんです」なんていう新入社員がいたら鼻につくだろう。
先輩方から可愛がられるためにも、俺は人懐っこくて毒気のない「犬飼日向」を演じる必要がある。
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました
せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~
救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。
どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。
乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。
受け取ろうとすると邪魔だと言われる。
そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。
医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。
最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇
作品はフィクションです。
本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。