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『戦華』の物語はアシュリーヌちゃんが王宮竜騎士団へ入隊する所から始まる。詰まる所、彼女の入隊以前のエピソードはあくまで登場人物達の会話やモノローグから憶測するしかないのだ。
しかしどこかしらその辺の有力な領地へ嫁へ出す気満々だった両親の反対を押し切り、血反吐の出るような努力を重ねて半ば転がり込むように竜騎士訓練学校への入学を果たした私に神が微笑まない筈があるか?? いや無い。
アシュリーヌちゃんと私は偶然にも同期となり、加えて同じ平民卒ということもあり彼女はノアとそこそこ交流を重ねていた。そこに当然のように華麗に加わるモブの私だ。
ファン達が数多の二次創作を生み出してきたアシュリーヌちゃんの幻の訓練学校時代を共に過ごすことができた私の幸福たるや、お察し頂きたい。
アシュリーヌちゃんはその触れれば折れそうな現実離れした美貌とは裏腹に、狭き門であり学力のみならず武力をも問われるこの竜騎士訓練学校へ主席で入学した才色兼備っぷりで、当時多くの生徒からの羨望恋慕を集めていた。と同時に出自とそのスペックがゆえに一部の女生徒達からやっかまれてもいた。乙女ゲー主人公の宿命ですね。
教科書にお紅茶をぶっかけられたり武器や馬具を隠されたりなどしていた彼女を見兼ねて、歩み寄ったのがノアだったのだ。ノア まじ 聖人。
教科書を貸してやったり隠された私物を探すノアの傍ら、私は高飛車な令嬢達を文字通りシャーッと威嚇しておいた。田舎育ちの山猿伯爵令嬢を舐めんじゃないよ。
中肉中背どこにでもいる黒髪の男と茶髪の女。お世辞にもパッとしない凡庸な容姿の私達だけど彼女の心の拠り所にはなれたようで、そんなこんなで私は名のあるモブ フェリシアから主人公の友人フェリシアまで飛び級レベルアップを果たしたのだった。ノア様様有難や。
訓練学校はひたすら地獄のようなものだと思っていたけど主にマルクス様の素晴らしさを讃えながら眼前のアシュリーヌちゃんの麗しさに癒され、時にはその痴態に思いを馳せるたいへん充実したものとなった。
マルクス様との接点はゼロに近いもののノアのお陰で絶好調となった私の人生は、入隊後も順風で満帆の気配が止まることをしらない。
着々とマルクス様との恋愛イベントを発生させたアシュリーヌちゃんは、とうとうスケベイベント発生へ王手をかけた。
「マルクス様に夜のお散歩へお誘いされたァ?!」
「シッ! こ、声が大きいよフェリシアちゃん……!」
思わず食堂のテーブルに身を乗り出すと、頬を赤らめたアシュリーヌちゃんに制止された。かわいい。
「殿下ともあろうお方がそんな俗なことして大丈夫なのかよ」
「なんでもマルクス様だけが所持している秘密の庭園があるみたいで、こっそり行き方を教えて下ったの」
勿論知っている。前世でアシュリーヌちゃんを操作してそこへ導いたのは他でもない、この私なのだ。
アシュリーヌちゃんの返答に私の隣に座るノアはまだ怪訝そうな表情をしている。まあ確かに学生時代からの旧友であり同僚が、身分不相応である相手にアクションを掛けられたとなっては気が気でないか。下手したら政治問題へ発展しかねない。
「王宮敷地内だし、マルクス様と日中勤務している庭師以外は滅多に人が出入りしないそうだし、安全だから大丈夫だよ。それに私、強いし。何かあったら叩きのめしちゃうわ」
綻ぶように笑い、華奢な腕をむんと持ち上げて見せるアシュリーヌちゃん。ほんとうにかわいい。
まあ結果的に何かありますし叩きのめす以前に上司であり国家権力者であり憎からず想っているマルクス様に言い寄られて抵抗する間も無く、なし崩しに良いようにされてしまうんですけどね。流されやすいアシュリーヌちゃん、まじ18禁乙女ゲー主人公の鑑。
「いいなぁ~マルクス様の秘密の庭園、それはそれは美しいのだろうねぇ。月明かりに照らされて輝くブロンドに咲き誇る花々を背負う麗しいご尊顔……明日感想事細かにお願いしますだよ」
ほぅと溜息を吐きながらマルクス様庭園イベントのスチルが三次元で繰り広げられる様を妄想する。ついでにそこで起こってしまう展開も呼び起こされ頰が緩んでしまった。そこそこ長い年月共に過ごし、なんなら前世からの憧れの存在であるアシュリーヌちゃんが今宵あんなことやこんなことに……おっとよだれが。
ちらりと私を見やると、ノアは小さく溜息を吐いた。
「まあ、お前に限ってドジ踏むことはないだろうけど、くれぐれも気を付けろよな……色んな意味で」
忠告したところで結局頂かれてしまうんだけどなぁとぼんやり思いながら、私は今夜の秘密の庭園へのルートを記憶の彼方から呼び起こし、シミュレートしていた。
しかしどこかしらその辺の有力な領地へ嫁へ出す気満々だった両親の反対を押し切り、血反吐の出るような努力を重ねて半ば転がり込むように竜騎士訓練学校への入学を果たした私に神が微笑まない筈があるか?? いや無い。
アシュリーヌちゃんと私は偶然にも同期となり、加えて同じ平民卒ということもあり彼女はノアとそこそこ交流を重ねていた。そこに当然のように華麗に加わるモブの私だ。
ファン達が数多の二次創作を生み出してきたアシュリーヌちゃんの幻の訓練学校時代を共に過ごすことができた私の幸福たるや、お察し頂きたい。
アシュリーヌちゃんはその触れれば折れそうな現実離れした美貌とは裏腹に、狭き門であり学力のみならず武力をも問われるこの竜騎士訓練学校へ主席で入学した才色兼備っぷりで、当時多くの生徒からの羨望恋慕を集めていた。と同時に出自とそのスペックがゆえに一部の女生徒達からやっかまれてもいた。乙女ゲー主人公の宿命ですね。
教科書にお紅茶をぶっかけられたり武器や馬具を隠されたりなどしていた彼女を見兼ねて、歩み寄ったのがノアだったのだ。ノア まじ 聖人。
教科書を貸してやったり隠された私物を探すノアの傍ら、私は高飛車な令嬢達を文字通りシャーッと威嚇しておいた。田舎育ちの山猿伯爵令嬢を舐めんじゃないよ。
中肉中背どこにでもいる黒髪の男と茶髪の女。お世辞にもパッとしない凡庸な容姿の私達だけど彼女の心の拠り所にはなれたようで、そんなこんなで私は名のあるモブ フェリシアから主人公の友人フェリシアまで飛び級レベルアップを果たしたのだった。ノア様様有難や。
訓練学校はひたすら地獄のようなものだと思っていたけど主にマルクス様の素晴らしさを讃えながら眼前のアシュリーヌちゃんの麗しさに癒され、時にはその痴態に思いを馳せるたいへん充実したものとなった。
マルクス様との接点はゼロに近いもののノアのお陰で絶好調となった私の人生は、入隊後も順風で満帆の気配が止まることをしらない。
着々とマルクス様との恋愛イベントを発生させたアシュリーヌちゃんは、とうとうスケベイベント発生へ王手をかけた。
「マルクス様に夜のお散歩へお誘いされたァ?!」
「シッ! こ、声が大きいよフェリシアちゃん……!」
思わず食堂のテーブルに身を乗り出すと、頬を赤らめたアシュリーヌちゃんに制止された。かわいい。
「殿下ともあろうお方がそんな俗なことして大丈夫なのかよ」
「なんでもマルクス様だけが所持している秘密の庭園があるみたいで、こっそり行き方を教えて下ったの」
勿論知っている。前世でアシュリーヌちゃんを操作してそこへ導いたのは他でもない、この私なのだ。
アシュリーヌちゃんの返答に私の隣に座るノアはまだ怪訝そうな表情をしている。まあ確かに学生時代からの旧友であり同僚が、身分不相応である相手にアクションを掛けられたとなっては気が気でないか。下手したら政治問題へ発展しかねない。
「王宮敷地内だし、マルクス様と日中勤務している庭師以外は滅多に人が出入りしないそうだし、安全だから大丈夫だよ。それに私、強いし。何かあったら叩きのめしちゃうわ」
綻ぶように笑い、華奢な腕をむんと持ち上げて見せるアシュリーヌちゃん。ほんとうにかわいい。
まあ結果的に何かありますし叩きのめす以前に上司であり国家権力者であり憎からず想っているマルクス様に言い寄られて抵抗する間も無く、なし崩しに良いようにされてしまうんですけどね。流されやすいアシュリーヌちゃん、まじ18禁乙女ゲー主人公の鑑。
「いいなぁ~マルクス様の秘密の庭園、それはそれは美しいのだろうねぇ。月明かりに照らされて輝くブロンドに咲き誇る花々を背負う麗しいご尊顔……明日感想事細かにお願いしますだよ」
ほぅと溜息を吐きながらマルクス様庭園イベントのスチルが三次元で繰り広げられる様を妄想する。ついでにそこで起こってしまう展開も呼び起こされ頰が緩んでしまった。そこそこ長い年月共に過ごし、なんなら前世からの憧れの存在であるアシュリーヌちゃんが今宵あんなことやこんなことに……おっとよだれが。
ちらりと私を見やると、ノアは小さく溜息を吐いた。
「まあ、お前に限ってドジ踏むことはないだろうけど、くれぐれも気を付けろよな……色んな意味で」
忠告したところで結局頂かれてしまうんだけどなぁとぼんやり思いながら、私は今夜の秘密の庭園へのルートを記憶の彼方から呼び起こし、シミュレートしていた。
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