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Bar6本目:ユニバーサル・バニー
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「誰だっ!」
振り返って威嚇する。
「な、なになになにっ?」
俺の声に我に返ったのか、七妃が身を縮こまらせながら身を寄せて来る。
正直な話、その感触に心奪われそうになったりもしたが、今はそれどころでは無い。
まだ来たばかりで何が出て来るか分からないこの世界、警戒してし過ぎるという事は無いだろう。
「今、そこの茂みで音が――」
ガササッ。
七妃に説明し掛けた時に茂みから出て来たのは、1匹の少し大きめのウサギだった。
「わぁっ、かわいっ! 待て待てー!」
俺達の座っている岩の脇を抜けて平原に躍り出たそのウサギを、岩から飛び降りた七妃は、無邪気に追い掛け始めた。もう、疲れも気にならなくなっているみたいだな。
……にしても、あのウサギ、何かおかしくないか?
そう思った瞬間、七妃に振り返ったウサギの目が怪しく光った。
――そうか!
ウサギは七妃に向かって急接近するが、七妃は何の警戒も無く腕を広げて「おいでーっ!」と笑っている。
「危ないっ!」
急いで岩から飛び降りて駆け寄る。
一瞬身を縮めたウサギが、ジャンプモーションに入るのが見えた。
――間に合ってくれっ!
思い切り手を伸ばして、飛び上がったウサギの軌道を塞ぐ。
「えっ?」
ダンッ!
ギリギリのところで、飛び上がってキックの体勢に入ったウサギの足を、――後ろ足を、手に当てる事が出来た。
お互いの勢いでキックのベクトルが横に逸れたからか、余りダメージは無い。少しは痛むけど。
「ど、どうしちゃったの?! あの子?!」
七妃はどうやら、まだ分かっていないらしい。
「あのウサギ、ちょっとおかしいと思わないか?」
「えっ?」
俺が促すと、七妃はウサギに視線を移した。両手を双眼鏡の様にして。
「……あれ? 何か、輪郭がおぼろげ? 揺らいでる感じ?」
「そう、つまり魔力みたいなもので包まれているのか、生み出されているのか。そんな感じがしないか?」
「んー、そう言われてみれば……」
話している間に方向転換を終えたウサギは、もう一度こっちに向き直った。
後ろ足を2、3度蹴り上げて勢いを付けたウサギは、もう一度こっちに突進して来た。
「来るよ、善哉! どうするの?!」
「ああ、任せろ! 出でよ、あずきボー!」
慌てる七妃に返事を返し、俺はあずきボーを1本召喚した。名前を叫ぶ理由は全く微塵もこれっぽっちも無いのだが、そこはそれ、雰囲気ってやつ。
そして、それを両手に構えると、バッター、大きくテイクバック!
それを力強く振り抜いた!
ガコッ!
物凄い勢いで突進して来たウサギの鼻っ柱に、鉱石の中では2番目の硬さのサファイアよりも硬いあずきボーが炸裂!
鼻を潰して草原に仰向けに落ちたウサギの像は、その影を大きく揺らし、消えて行った――。
「ウサちゃん、消えちゃった……」
「多分あれ、魔力で生み出された奴なんだろうな」
「成る程……」
俺の説明に納得はしても、それでもちょっと寂しそうな表情の七妃。
まあ、消えると分かっていたら、遠慮なくやれそうだ。
「でも善哉、どうして分かったの?」
「ああ、その秘密はこれさ」
七妃の顔の前に、さっきから手に持っているあずきボーを突き出す。
「あずきボー?」
「ああ。これも言ってみれば、魔力みたいな物で生み出した物だろ?」
少しの間ジッと眺めた七妃は、ポンっと手を叩いた。
「よく見るとこれも、輪郭がぼやけている様な?」
言いたい事を、分かってくれたらしい。
「でもさ、さっきもこんなだった? こんなに集中して見てないから、分かんないけど」
「それは、――これだ」
あずきボーを持っている手に力を籠めると、像の揺らぎが消え、周りの空気が落ち着いた。
「にゃっ?! あずきボーだっ!」
相変わらず変な叫び声をあげる、七妃。
「これさ、ルナ様に能力を貰った時の説明だと、これを出した時点だと、まだ概念的? イメージ的な物みたいなんだ、難しい言葉は忘れたけど。で、とある力を加えると、あら不思議! まごう事無き実体を持ったあずきボーの出来上がりっ!」
「……」
説明を終えた俺を、七妃はジーッと不満気に見ている。
「……善哉、あーしをバカにしてる?」
そんな風に見られたのか。
「してないしてない! 説明が本当にこんな感じだったんだって!」
「じゃ、さっきの、ルナ様の真似?」
「い、一応……」
「じゃ、も1回、やって見せて!」
「あ、ああ。これを出した時点だと――」
リクエストに応えてやって見せると、七妃は今度は楽しそうに笑った。
「でさ、善哉、どうすんの、それ」
初めてのバトルの興奮を落ち着かせる為にもう一度岩に並んで座ると、七妃は俺の手の中のあずきボーを指して訊いて来た。
「食べる」
その質問に、端的に答える。これ以外の選択肢は、無い。
「えっ? ウサちゃんの鼻に打ち付けた奴だよ? 汚くない?」
気持ちは、物凄く分かる。
「そう思うのも仕方無いけど、食べなきゃ怒られるだろ」
「誰によっ?!」
俺の返答に、七妃は不思議そうな声を上げた。
「……あずきボーの神様?」
「プッ、何よそれぇっ!」
噴き出してケラケラと愉快そうに笑い始めたけど、言っている俺にだって良く分かって無いから、仕方無いだろう。
「高茶屋も、もう1本食べるか?」
「ん、ありがとっ。食べるっ!」
訊くと、七妃は待ちきれない様子で両手を突き出して来た。焦るなって。
取り敢えず、今持っている物を口に咥える。唇を思いっ切り口の中に巻き込んで、保護して。
「――んっ、っと。ほれ」
「さんきゅっ」
弾ける様な笑顔で俺の手からあずきボーを受け取ると、七妃はそのまま両手で口許に持って行き、フーフーし始めた。
分かる。
「ねっ、あずきボーって、一度に何本くらい出せるの?」
フーフーし疲れたのか、七妃は唐突に話を振って来た。
「ん? まだ食べたいのか?」
「ち、違うし! ……今は」
「今は?」
口を尖らせた七妃をニヤニヤ見ていると、俺の視線に気付いて分かり易く顔を背けた。
「まあ、これも漠然としたイメージでしか無いけど、今だと大体6本くらいらしい。何でも、俺の中の魔力とかそういう力の量で決まるんだと」
これも、最初のルナ様のトリセツに有ったやつだ。
「へー、そうなんだ。ねっ、今度何本か一気にかき氷にして食べたいっ! やりたかったけど、うちだと『1度に1本』って感じで、やらせてくれなかったのっ!」
何の衒いも無く、前の世界の家の事を出した七妃。もう大丈夫かな。
尤もその内に、ホームシックなんかがやって来る日は有るだろうけど。
「ハフハフ、……ん……。善哉、もう大丈夫みたいだよっ!」
「ああ、サンキュ」
あずきボーを美味しそうに頬張り始めた七妃に倣い、俺もあずきボーを口の中に入れる。
さっきのかき氷の時とは違い、どっしりとしたあずきの味が、口いっぱいに広がる。
――やっぱり、この能力にして良かった!
七妃を見ると、うんうん頷いて来た。……そんなに顔に出てたかな。
こうして、バトルに使用したあずきボーは、俺達が責任を持って美味しく頂きました。
ガサガサガサッ!
食べ終わって食休みをしていた俺達の後ろで、再び茂みが音を立てて揺れた。
「善哉っ!」
「ああっ!」
2人で岩を下りて、臨戦態勢を取る。
――と、今度は輪郭のハッキリとしたウサギが飛び出て来た。
「ウサちゃんっ! 今度は大丈夫だよねっ?!」
「ああ、そうだと思う」
凝視してみても、さっきのウサギの場合とはハッキリと違う。
「あはは、待てーっ!」
そうと分かると、ピョンピョンと平原を跳ね回るウサギを、七妃は嬉しそうに追い掛けた。
念の為ウサギの様子を注視しているが、本当に問題は無さそうだ。
「キャッ!」
大きく跳ねて胸元に飛び込んだウサギを、七妃は飛び切りの笑顔で抱き留めた。
振り返って威嚇する。
「な、なになになにっ?」
俺の声に我に返ったのか、七妃が身を縮こまらせながら身を寄せて来る。
正直な話、その感触に心奪われそうになったりもしたが、今はそれどころでは無い。
まだ来たばかりで何が出て来るか分からないこの世界、警戒してし過ぎるという事は無いだろう。
「今、そこの茂みで音が――」
ガササッ。
七妃に説明し掛けた時に茂みから出て来たのは、1匹の少し大きめのウサギだった。
「わぁっ、かわいっ! 待て待てー!」
俺達の座っている岩の脇を抜けて平原に躍り出たそのウサギを、岩から飛び降りた七妃は、無邪気に追い掛け始めた。もう、疲れも気にならなくなっているみたいだな。
……にしても、あのウサギ、何かおかしくないか?
そう思った瞬間、七妃に振り返ったウサギの目が怪しく光った。
――そうか!
ウサギは七妃に向かって急接近するが、七妃は何の警戒も無く腕を広げて「おいでーっ!」と笑っている。
「危ないっ!」
急いで岩から飛び降りて駆け寄る。
一瞬身を縮めたウサギが、ジャンプモーションに入るのが見えた。
――間に合ってくれっ!
思い切り手を伸ばして、飛び上がったウサギの軌道を塞ぐ。
「えっ?」
ダンッ!
ギリギリのところで、飛び上がってキックの体勢に入ったウサギの足を、――後ろ足を、手に当てる事が出来た。
お互いの勢いでキックのベクトルが横に逸れたからか、余りダメージは無い。少しは痛むけど。
「ど、どうしちゃったの?! あの子?!」
七妃はどうやら、まだ分かっていないらしい。
「あのウサギ、ちょっとおかしいと思わないか?」
「えっ?」
俺が促すと、七妃はウサギに視線を移した。両手を双眼鏡の様にして。
「……あれ? 何か、輪郭がおぼろげ? 揺らいでる感じ?」
「そう、つまり魔力みたいなもので包まれているのか、生み出されているのか。そんな感じがしないか?」
「んー、そう言われてみれば……」
話している間に方向転換を終えたウサギは、もう一度こっちに向き直った。
後ろ足を2、3度蹴り上げて勢いを付けたウサギは、もう一度こっちに突進して来た。
「来るよ、善哉! どうするの?!」
「ああ、任せろ! 出でよ、あずきボー!」
慌てる七妃に返事を返し、俺はあずきボーを1本召喚した。名前を叫ぶ理由は全く微塵もこれっぽっちも無いのだが、そこはそれ、雰囲気ってやつ。
そして、それを両手に構えると、バッター、大きくテイクバック!
それを力強く振り抜いた!
ガコッ!
物凄い勢いで突進して来たウサギの鼻っ柱に、鉱石の中では2番目の硬さのサファイアよりも硬いあずきボーが炸裂!
鼻を潰して草原に仰向けに落ちたウサギの像は、その影を大きく揺らし、消えて行った――。
「ウサちゃん、消えちゃった……」
「多分あれ、魔力で生み出された奴なんだろうな」
「成る程……」
俺の説明に納得はしても、それでもちょっと寂しそうな表情の七妃。
まあ、消えると分かっていたら、遠慮なくやれそうだ。
「でも善哉、どうして分かったの?」
「ああ、その秘密はこれさ」
七妃の顔の前に、さっきから手に持っているあずきボーを突き出す。
「あずきボー?」
「ああ。これも言ってみれば、魔力みたいな物で生み出した物だろ?」
少しの間ジッと眺めた七妃は、ポンっと手を叩いた。
「よく見るとこれも、輪郭がぼやけている様な?」
言いたい事を、分かってくれたらしい。
「でもさ、さっきもこんなだった? こんなに集中して見てないから、分かんないけど」
「それは、――これだ」
あずきボーを持っている手に力を籠めると、像の揺らぎが消え、周りの空気が落ち着いた。
「にゃっ?! あずきボーだっ!」
相変わらず変な叫び声をあげる、七妃。
「これさ、ルナ様に能力を貰った時の説明だと、これを出した時点だと、まだ概念的? イメージ的な物みたいなんだ、難しい言葉は忘れたけど。で、とある力を加えると、あら不思議! まごう事無き実体を持ったあずきボーの出来上がりっ!」
「……」
説明を終えた俺を、七妃はジーッと不満気に見ている。
「……善哉、あーしをバカにしてる?」
そんな風に見られたのか。
「してないしてない! 説明が本当にこんな感じだったんだって!」
「じゃ、さっきの、ルナ様の真似?」
「い、一応……」
「じゃ、も1回、やって見せて!」
「あ、ああ。これを出した時点だと――」
リクエストに応えてやって見せると、七妃は今度は楽しそうに笑った。
「でさ、善哉、どうすんの、それ」
初めてのバトルの興奮を落ち着かせる為にもう一度岩に並んで座ると、七妃は俺の手の中のあずきボーを指して訊いて来た。
「食べる」
その質問に、端的に答える。これ以外の選択肢は、無い。
「えっ? ウサちゃんの鼻に打ち付けた奴だよ? 汚くない?」
気持ちは、物凄く分かる。
「そう思うのも仕方無いけど、食べなきゃ怒られるだろ」
「誰によっ?!」
俺の返答に、七妃は不思議そうな声を上げた。
「……あずきボーの神様?」
「プッ、何よそれぇっ!」
噴き出してケラケラと愉快そうに笑い始めたけど、言っている俺にだって良く分かって無いから、仕方無いだろう。
「高茶屋も、もう1本食べるか?」
「ん、ありがとっ。食べるっ!」
訊くと、七妃は待ちきれない様子で両手を突き出して来た。焦るなって。
取り敢えず、今持っている物を口に咥える。唇を思いっ切り口の中に巻き込んで、保護して。
「――んっ、っと。ほれ」
「さんきゅっ」
弾ける様な笑顔で俺の手からあずきボーを受け取ると、七妃はそのまま両手で口許に持って行き、フーフーし始めた。
分かる。
「ねっ、あずきボーって、一度に何本くらい出せるの?」
フーフーし疲れたのか、七妃は唐突に話を振って来た。
「ん? まだ食べたいのか?」
「ち、違うし! ……今は」
「今は?」
口を尖らせた七妃をニヤニヤ見ていると、俺の視線に気付いて分かり易く顔を背けた。
「まあ、これも漠然としたイメージでしか無いけど、今だと大体6本くらいらしい。何でも、俺の中の魔力とかそういう力の量で決まるんだと」
これも、最初のルナ様のトリセツに有ったやつだ。
「へー、そうなんだ。ねっ、今度何本か一気にかき氷にして食べたいっ! やりたかったけど、うちだと『1度に1本』って感じで、やらせてくれなかったのっ!」
何の衒いも無く、前の世界の家の事を出した七妃。もう大丈夫かな。
尤もその内に、ホームシックなんかがやって来る日は有るだろうけど。
「ハフハフ、……ん……。善哉、もう大丈夫みたいだよっ!」
「ああ、サンキュ」
あずきボーを美味しそうに頬張り始めた七妃に倣い、俺もあずきボーを口の中に入れる。
さっきのかき氷の時とは違い、どっしりとしたあずきの味が、口いっぱいに広がる。
――やっぱり、この能力にして良かった!
七妃を見ると、うんうん頷いて来た。……そんなに顔に出てたかな。
こうして、バトルに使用したあずきボーは、俺達が責任を持って美味しく頂きました。
ガサガサガサッ!
食べ終わって食休みをしていた俺達の後ろで、再び茂みが音を立てて揺れた。
「善哉っ!」
「ああっ!」
2人で岩を下りて、臨戦態勢を取る。
――と、今度は輪郭のハッキリとしたウサギが飛び出て来た。
「ウサちゃんっ! 今度は大丈夫だよねっ?!」
「ああ、そうだと思う」
凝視してみても、さっきのウサギの場合とはハッキリと違う。
「あはは、待てーっ!」
そうと分かると、ピョンピョンと平原を跳ね回るウサギを、七妃は嬉しそうに追い掛けた。
念の為ウサギの様子を注視しているが、本当に問題は無さそうだ。
「キャッ!」
大きく跳ねて胸元に飛び込んだウサギを、七妃は飛び切りの笑顔で抱き留めた。
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