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Bar36本目:決戦
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「七妃ぃぃぃぃぃぃ!」
叫び声と一緒に、取り出したあずきボーを飛ばす。――間に合えっ!
ガキィン!
鈍い音が響いた。
……如何にか間に合った様だ。
ホッと胸を撫で下ろしたい処だが、俺は俺で魔物に襲われつつ魔製魔王との対峙を続けているので、そんな余裕は無い。
「サンキュッ、善哉っ!」
「俺の方で操ってピンポイントに守る事は出来そうに無いから……」
「……あっ! 何か、あーしでも操れるみたいっ! 良かったら、もう2・3本ちょうだいっ!」
……何だって? ここに来て、七妃のチート具合が酷いんだが。俺は所詮あずきボーとあずきボーソードを出せる位なのに……。
――いや、今はそんな事はどうでも良いな。使える物は使わせて貰おう。
それに、あずきボーの無い世界なんて考えられない。
「七妃!」
隙を縫い、新たに取り出したあずきボーを3本、七妃の方に投げる。
「よっ……と。サンキュッ! もうこっちは気にしないで、目の前に集中してっ!」
「ああ!」
「へえっ」
俺の顔を見ながら、アルーズさんがニッと笑う。
「……何ですか?」
「いや、息がぴったりで微笑ましいなと思って。――なっ!」
噴き出している魔力が地面に降り注ぐ度に現れる魔物を切り裂きながら、何でそんな良い笑顔が出来るんだろう。
しかし、今は照れて手を止めている余裕は無い。
「待たせたなっ!」
いつの間に迎えに行っていたのか、黒風がグァルドさんを乗せて帰って来た。
馬の背から飛び降りたグァルドさんも、俺の横で斧を構える。
「魔王の様子はどうだ?」
「隙を見てちょくちょく攻撃を仕掛けてはいるんだけどね、全然効果が見えないよ」
俺も少しは攻撃を当てているが、その姿は最初に対峙した時と変わらない。
……ここは1つ、提案してみるか。
「俺に、試してみたい事があります……」
「「なんだ」い?」
「あの魔王、よく見ると、背中で吹き出ている魔力と繋がっているんです。それを断ち切る事が出来れば、或いは……」
「よし分かった、注意を引くのは任せろ!」
俺の話が終わるのを待たずに、グァルドさんとアルーズさんは魔製魔王に向かって行った。
アキノさんとアキラさんは、そんな2人が魔物に囲まれない様に背中を預かり、その周りを黒風が走り回る。
魔製魔王は位置を変えながら戦うグァルドさんとアルーズさんに相対する内に噴き出す魔力から離れ、背中に繋がる魔力の流れが俺からハッキリと確認出来る様になった。
――今だ!
部活で鍛えた健脚で一気に距離を詰め、あずきボーソードを振り下ろす。
ブチン。
魔製魔王と噴出魔力との繋がりが途切れた音が、鮮明に聞こえた。
それが再度繋がろうとするのを、あずきボーソードを振り回して遮り続ける。
ぐわっ。腕が捥げそうだ。
「どうですか、グァルドさん、アルーズさん!」
「いいぞ! 少しずつ、影が薄くなっていっている気がする!」
「ゼンザイ君、もう少し持ち堪えてくれ!」
そうは言われても――俺だって勿論そうしたいけど――人間が防げるレベルの動きじゃないぞ、これ。
と、限界を超えた動きの中で、掌にかいた汗で、握るあずきボーソードの柄を滑らせてしまった。
噴き出す魔力が、真っ直ぐに魔王の影に向かう。
「やば――」
「お待たせ、善哉っ!」
――と、その行く手を黒く輝くフライパンが遮った。ナイス、七妃!
「でも、ヴィヴィさんは?」
「ああ、黒風ちゃんが乗せて走り回ってくれてるよっ!」
落としてしまったあずきボーソードを拾いながら訊くと、七妃は目で示した。
その先を追うと、成る程、ヴィヴィさんを乗せた黒風は走り回り、ヴィヴィさんは自分に向かう邪悪な魔力を手で払っている。これなら暫くは大丈夫か。
「これはあーしに任せて、善哉はあいつを倒しちゃってっ!」
「分かった!」
七妃はフライパンの調理面を迫る魔力の波に向けていて、行く手を阻まれたそれは面に沿って跳ね返り、噴き出し続ける元の流れに戻って吸収されている。こいつ、やっぱり凄いな。
踵を返し、こちらには完全に背中を向けている魔製魔王へと距離を詰め、背中に切り掛かった。
魔力の供給を絶たれた魔製魔王は流石に3人での集中攻撃には耐え切れなかった様で、その内に全ての魔力を失い、その姿を消した。
「やっ――」
「ちょっ、ちょっ、ちょっ!」
上げようとした喜びの声を遮った七妃の言葉に振り返ると、今度は七妃の目の前に同じ影が現れていた。
「七妃!」
新たに生み出された魔製魔王の攻撃をフライパンで如何にか防ぎながらもジリジリと後ろに下がる七妃の許に急いで返し、当たれば良いとあずきボーソードを魔王に振り切る。
「サンキュ、善哉っ!」
相手をしながら、一旦距離を取る。
空に噴き出す魔力が少なくなり、魔製魔王に続くパイプが太くなる。
生まれたばかりで薄くボンヤリとしていたその姿が、徐々に鮮明になって行く。
「何だこれ、倒しても倒しても、同じ事の繰り返しじゃないか!」
アルーズさんが声を上げた。
――その通りだ。元を絶たない限りは延々と同じ事が繰り返され、そして体力の限界を迎えた俺達が負ける。
「……元を、断つか……」
「それしかないみたいだね……」
(風さん、今話せるか)
『少しだけ……。吹き出る邪悪な魔力を、君達の魔力で中和すれば……』
風に呼び掛けると、それだけを言い残し、そして途切れた。風には悪いが、それだけ聞ければ充分だ。
七妃と頷き合う。
「皆さん、俺達で噴き出す魔力を抑えます。周りの敵はお願いします」
「それは構わないが……そんな事、出来るのか?」
いつの間にか黒風も戻っていて、5人と1匹の目が俺達を見る。
「その為の俺と」
「あーしだしっ!」
俺達がそう宣言すると、グァルドさんは豪快に笑い出した。
「ワッハッハッ。何だか分からんが、凄い自信だな」
「じゃあ、あれは君達に任せるよ。魔王と魔物は、君達には寄せ付けない」
「ヒヒィィィィン!」
そして皆示し合わせた様に陣形を取る。そしてグァルドさんとアルーズさんは先程と同じ様に、魔製魔王と切り結び、直ぐには手の届かない所へと引き寄せた。
「ぢゃ、善哉」
「ああ」
邪悪な魔力が噴き出ている地点に近付くと、物凄い圧を感じる。
「行くぞ」
「うん、お願い、善哉」
あずきボーソードを両手で逆手に持って目の前に構えると、剣の纏う俺の魔力で、吹き出る魔力が割れた。
「いっけええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」
膝を落とし、邪悪な魔力が噴き出ている穴にあずきボーソードを差し込み、その刃を伝うイメージで自分の持てる限りの魔力を送り込む。そっと背中に添えられた手から、並んで屈む七妃の魔力が流れ込んで来る。
俺達の魔力と噴き出す魔力が干渉した衝撃が、あずきボーソードを手に伝わって来る。
手元で暴れるが、それを消して離しはしない為に力強く握る。実際に七妃が触れているのは俺の背中だけど、柄を握る手の上からその手が包んでくれている様な力強さを感じる。
「全力で行くよ、善哉っ!」
俺を伝わる七妃の魔力が、一気に大きくなった。
そして俺はそれを自分の魔力と掛け合わせ、地の底へと流し込む。
あずきボーソードと穴の隙間から噴き出すどす黒い邪悪な魔力が徐々に少なくなって行き、そして、やがて、……消えた。
身体に伝わる衝撃も無くなり、あずきボーソードを穴から抜いた俺達は、並んで後ろに倒れ込んだ。
「やったの? あーし達……」
「……ああ、やった……」
空は青く太陽が輝き、あれだけ立ち込めていた雲はその影も無くなっていた。皆が抑えてくれていた魔物や魔製魔王の気配も、消え失せていた。
「……でもさ、ルナ様、魔王軍って言ってなかったっけ……?」
「ルナ様はあずきボーも知らなかったし、あそこに行った人から情報を得る事しか出来ないんじゃないかな……」
「そっか……。あーし、疲れちゃった……」
「奇遇だな。俺もだよ……」
「お疲れ様、2人とも。私達も休むから、しばらくおやすみなさい――」
ヴィヴィさんの声を聴きながら、達成感と共に、俺は眠りの世界へと落ちて行った。
叫び声と一緒に、取り出したあずきボーを飛ばす。――間に合えっ!
ガキィン!
鈍い音が響いた。
……如何にか間に合った様だ。
ホッと胸を撫で下ろしたい処だが、俺は俺で魔物に襲われつつ魔製魔王との対峙を続けているので、そんな余裕は無い。
「サンキュッ、善哉っ!」
「俺の方で操ってピンポイントに守る事は出来そうに無いから……」
「……あっ! 何か、あーしでも操れるみたいっ! 良かったら、もう2・3本ちょうだいっ!」
……何だって? ここに来て、七妃のチート具合が酷いんだが。俺は所詮あずきボーとあずきボーソードを出せる位なのに……。
――いや、今はそんな事はどうでも良いな。使える物は使わせて貰おう。
それに、あずきボーの無い世界なんて考えられない。
「七妃!」
隙を縫い、新たに取り出したあずきボーを3本、七妃の方に投げる。
「よっ……と。サンキュッ! もうこっちは気にしないで、目の前に集中してっ!」
「ああ!」
「へえっ」
俺の顔を見ながら、アルーズさんがニッと笑う。
「……何ですか?」
「いや、息がぴったりで微笑ましいなと思って。――なっ!」
噴き出している魔力が地面に降り注ぐ度に現れる魔物を切り裂きながら、何でそんな良い笑顔が出来るんだろう。
しかし、今は照れて手を止めている余裕は無い。
「待たせたなっ!」
いつの間に迎えに行っていたのか、黒風がグァルドさんを乗せて帰って来た。
馬の背から飛び降りたグァルドさんも、俺の横で斧を構える。
「魔王の様子はどうだ?」
「隙を見てちょくちょく攻撃を仕掛けてはいるんだけどね、全然効果が見えないよ」
俺も少しは攻撃を当てているが、その姿は最初に対峙した時と変わらない。
……ここは1つ、提案してみるか。
「俺に、試してみたい事があります……」
「「なんだ」い?」
「あの魔王、よく見ると、背中で吹き出ている魔力と繋がっているんです。それを断ち切る事が出来れば、或いは……」
「よし分かった、注意を引くのは任せろ!」
俺の話が終わるのを待たずに、グァルドさんとアルーズさんは魔製魔王に向かって行った。
アキノさんとアキラさんは、そんな2人が魔物に囲まれない様に背中を預かり、その周りを黒風が走り回る。
魔製魔王は位置を変えながら戦うグァルドさんとアルーズさんに相対する内に噴き出す魔力から離れ、背中に繋がる魔力の流れが俺からハッキリと確認出来る様になった。
――今だ!
部活で鍛えた健脚で一気に距離を詰め、あずきボーソードを振り下ろす。
ブチン。
魔製魔王と噴出魔力との繋がりが途切れた音が、鮮明に聞こえた。
それが再度繋がろうとするのを、あずきボーソードを振り回して遮り続ける。
ぐわっ。腕が捥げそうだ。
「どうですか、グァルドさん、アルーズさん!」
「いいぞ! 少しずつ、影が薄くなっていっている気がする!」
「ゼンザイ君、もう少し持ち堪えてくれ!」
そうは言われても――俺だって勿論そうしたいけど――人間が防げるレベルの動きじゃないぞ、これ。
と、限界を超えた動きの中で、掌にかいた汗で、握るあずきボーソードの柄を滑らせてしまった。
噴き出す魔力が、真っ直ぐに魔王の影に向かう。
「やば――」
「お待たせ、善哉っ!」
――と、その行く手を黒く輝くフライパンが遮った。ナイス、七妃!
「でも、ヴィヴィさんは?」
「ああ、黒風ちゃんが乗せて走り回ってくれてるよっ!」
落としてしまったあずきボーソードを拾いながら訊くと、七妃は目で示した。
その先を追うと、成る程、ヴィヴィさんを乗せた黒風は走り回り、ヴィヴィさんは自分に向かう邪悪な魔力を手で払っている。これなら暫くは大丈夫か。
「これはあーしに任せて、善哉はあいつを倒しちゃってっ!」
「分かった!」
七妃はフライパンの調理面を迫る魔力の波に向けていて、行く手を阻まれたそれは面に沿って跳ね返り、噴き出し続ける元の流れに戻って吸収されている。こいつ、やっぱり凄いな。
踵を返し、こちらには完全に背中を向けている魔製魔王へと距離を詰め、背中に切り掛かった。
魔力の供給を絶たれた魔製魔王は流石に3人での集中攻撃には耐え切れなかった様で、その内に全ての魔力を失い、その姿を消した。
「やっ――」
「ちょっ、ちょっ、ちょっ!」
上げようとした喜びの声を遮った七妃の言葉に振り返ると、今度は七妃の目の前に同じ影が現れていた。
「七妃!」
新たに生み出された魔製魔王の攻撃をフライパンで如何にか防ぎながらもジリジリと後ろに下がる七妃の許に急いで返し、当たれば良いとあずきボーソードを魔王に振り切る。
「サンキュ、善哉っ!」
相手をしながら、一旦距離を取る。
空に噴き出す魔力が少なくなり、魔製魔王に続くパイプが太くなる。
生まれたばかりで薄くボンヤリとしていたその姿が、徐々に鮮明になって行く。
「何だこれ、倒しても倒しても、同じ事の繰り返しじゃないか!」
アルーズさんが声を上げた。
――その通りだ。元を絶たない限りは延々と同じ事が繰り返され、そして体力の限界を迎えた俺達が負ける。
「……元を、断つか……」
「それしかないみたいだね……」
(風さん、今話せるか)
『少しだけ……。吹き出る邪悪な魔力を、君達の魔力で中和すれば……』
風に呼び掛けると、それだけを言い残し、そして途切れた。風には悪いが、それだけ聞ければ充分だ。
七妃と頷き合う。
「皆さん、俺達で噴き出す魔力を抑えます。周りの敵はお願いします」
「それは構わないが……そんな事、出来るのか?」
いつの間にか黒風も戻っていて、5人と1匹の目が俺達を見る。
「その為の俺と」
「あーしだしっ!」
俺達がそう宣言すると、グァルドさんは豪快に笑い出した。
「ワッハッハッ。何だか分からんが、凄い自信だな」
「じゃあ、あれは君達に任せるよ。魔王と魔物は、君達には寄せ付けない」
「ヒヒィィィィン!」
そして皆示し合わせた様に陣形を取る。そしてグァルドさんとアルーズさんは先程と同じ様に、魔製魔王と切り結び、直ぐには手の届かない所へと引き寄せた。
「ぢゃ、善哉」
「ああ」
邪悪な魔力が噴き出ている地点に近付くと、物凄い圧を感じる。
「行くぞ」
「うん、お願い、善哉」
あずきボーソードを両手で逆手に持って目の前に構えると、剣の纏う俺の魔力で、吹き出る魔力が割れた。
「いっけええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」
膝を落とし、邪悪な魔力が噴き出ている穴にあずきボーソードを差し込み、その刃を伝うイメージで自分の持てる限りの魔力を送り込む。そっと背中に添えられた手から、並んで屈む七妃の魔力が流れ込んで来る。
俺達の魔力と噴き出す魔力が干渉した衝撃が、あずきボーソードを手に伝わって来る。
手元で暴れるが、それを消して離しはしない為に力強く握る。実際に七妃が触れているのは俺の背中だけど、柄を握る手の上からその手が包んでくれている様な力強さを感じる。
「全力で行くよ、善哉っ!」
俺を伝わる七妃の魔力が、一気に大きくなった。
そして俺はそれを自分の魔力と掛け合わせ、地の底へと流し込む。
あずきボーソードと穴の隙間から噴き出すどす黒い邪悪な魔力が徐々に少なくなって行き、そして、やがて、……消えた。
身体に伝わる衝撃も無くなり、あずきボーソードを穴から抜いた俺達は、並んで後ろに倒れ込んだ。
「やったの? あーし達……」
「……ああ、やった……」
空は青く太陽が輝き、あれだけ立ち込めていた雲はその影も無くなっていた。皆が抑えてくれていた魔物や魔製魔王の気配も、消え失せていた。
「……でもさ、ルナ様、魔王軍って言ってなかったっけ……?」
「ルナ様はあずきボーも知らなかったし、あそこに行った人から情報を得る事しか出来ないんじゃないかな……」
「そっか……。あーし、疲れちゃった……」
「奇遇だな。俺もだよ……」
「お疲れ様、2人とも。私達も休むから、しばらくおやすみなさい――」
ヴィヴィさんの声を聴きながら、達成感と共に、俺は眠りの世界へと落ちて行った。
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