花にひとひら、迷い虫

カモノハシ

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15.

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 律が笑ったところを見るのは初めてだった。言葉の一部にひっかかりを覚えながらも思わずまじまじと見つめていると、花音の腹の音が大きく鳴った。顔を真っ赤にして音の原因を押さえ込む。
「花音……。さっき、図書室で何か食べてた……」
 が、律の耳にもしっかり届いてしまったようだ。
「あ、あれは朝ご飯だったの! この学校、こんな山の中にあるんだもん、町中から来るの大変だったんだから!」
 花音は開き直ると、準備室に引き返して室内を調べ始めた。律が首をかしげてその行動を見守る。
「ここって、食堂があるんだよね? 暗号ないかなー、暗号! 食堂! 食堂に行きたいなー!」
「そんな都合よくあるわけないよ……」
 律は呆れながら花音の様子を観察していたが、やがて時計を確認して言った。
「そんなに行きたいなら、試しに行ってみる? 時間外だから、作ってもらえるかわからないけど」
「えっ、いいの!? やった! 律、ありがとう!」
「はいはい……」
 飛び上がって喜ぶと、律が苦笑した。たとえ苦笑でも、律が笑顔になるとなぜか花音も嬉しくなる。
(律、あんまり笑わないからなあ)
 いつも無表情――というか、やる気がなさそうな表情をしている。
 だからかもしれない。たまにそれが崩れると、宝石のかけらでも見つけたような気持ちになるのは。
「あっ、もしかして、食堂も超・豪華なんじゃない?」
 花音の学校には食堂自体がなかったので、知らず知らずのうちにテンションが上がる。
「食堂自体は普通だと思うけど……。でも、料理長は、イタリアで修業してきたとか聞いた」
「なにそれ! やっぱねたましいけど楽しみだわ! イタリア! ポルチーニ!」
 きのこの名前を叫んで走りかけた花音の首根っこを、律が手を伸ばしてつかんだ。花音が「ぐえっ」と声を出して止まる。
「り、律はあたしよりちょっとばかし背が小さいんだから、そこつかまれると首がしま――っ、いたいいたいいたい!」
「…………廊下は走ると危ないから」
「ハイ……ゴメンナサイ」
 首根っこつかむのも危ないと思う。とは口に出さず、律に連行されるようにして食堂に向かった花音は、メニューを見たとたんに元気を取り戻した。
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