23 / 39
22.
しおりを挟む
「旅の中継地点……」
「でもそんなの、どこからどこに行くかによっても違うじゃん。普通に考えるんじゃないんだよね、きっと。この学校でってなると、さっき律が言ってたことが関係あるのかな?」
アサギマダラの集まる学園の中庭。
律は、アサギマダラは渡りをする蝶だと言っていた。「渡り」を「旅」だと考えれば、場所は自ずと明らかになる。
「……や、違うと思う」
だが、意外なことに、律が異を唱えた。硬い表情をして、首を横に振っている。
「え? でもさ――」
「だって、あそこはずっと僕が管理してた。変なものなんて、どこにもなかった」
「でも……、だったら、律はどこか当てがあるの?」
「それは……今から考える」
「ふうん?」
なんだか律らしくない。様子をうかがっていると、彼はなにやら動揺しているようだった。もしかしたら、花音が言ったことはそう的外れではないのではないか。花音は律の手をぎゅっと握った。
「え、ちょ……?」
「まあ、ともかく行ってみよう! ここの探索は終わったんだし、次、次!」
「花音……!?」
律の手を引いてまた生物準備室に舞い戻る。サンダルに履き替えるのももどかしく、勢いよく中庭に出た。そうして、早速探索にかかる。
「だ……だから、ないってば」
律は裏口から動かない。だが、口調はどこか弱々しい。
「ないかもしれないけど、あるかもしれないじゃん。ほら、自分じゃ気づかなかったことでも、他の人が見るとわかったりすることもあるでしょ?」
花音は花壇に近づき、白い花を端から確認していく。よく見ると、少しピンクがかっている花もある。土に差された園芸用ラベルには、ヒヨドリバナとフジバカマという名前があったので、二種類の花が混ざっているのだろう。
律はしばらくしぶっていたが、やがて用具入れの方を探し始めた。花音は引き続き、葉や枝をかき分け、地面を探す。
「あ、これじゃない? 律!」
「――えっ」
律が慌てて駆けつけてきて、花音が指さす方を凝視した。地面から5センチほどの高さに「ののはらい」と手描きで書かれたラベルが差してある。
内側寄りの、花をかき分けないと見えない場所だ。だが、花の植え替えをしていた律なら当然認識していたに違いない。
「でもそんなの、どこからどこに行くかによっても違うじゃん。普通に考えるんじゃないんだよね、きっと。この学校でってなると、さっき律が言ってたことが関係あるのかな?」
アサギマダラの集まる学園の中庭。
律は、アサギマダラは渡りをする蝶だと言っていた。「渡り」を「旅」だと考えれば、場所は自ずと明らかになる。
「……や、違うと思う」
だが、意外なことに、律が異を唱えた。硬い表情をして、首を横に振っている。
「え? でもさ――」
「だって、あそこはずっと僕が管理してた。変なものなんて、どこにもなかった」
「でも……、だったら、律はどこか当てがあるの?」
「それは……今から考える」
「ふうん?」
なんだか律らしくない。様子をうかがっていると、彼はなにやら動揺しているようだった。もしかしたら、花音が言ったことはそう的外れではないのではないか。花音は律の手をぎゅっと握った。
「え、ちょ……?」
「まあ、ともかく行ってみよう! ここの探索は終わったんだし、次、次!」
「花音……!?」
律の手を引いてまた生物準備室に舞い戻る。サンダルに履き替えるのももどかしく、勢いよく中庭に出た。そうして、早速探索にかかる。
「だ……だから、ないってば」
律は裏口から動かない。だが、口調はどこか弱々しい。
「ないかもしれないけど、あるかもしれないじゃん。ほら、自分じゃ気づかなかったことでも、他の人が見るとわかったりすることもあるでしょ?」
花音は花壇に近づき、白い花を端から確認していく。よく見ると、少しピンクがかっている花もある。土に差された園芸用ラベルには、ヒヨドリバナとフジバカマという名前があったので、二種類の花が混ざっているのだろう。
律はしばらくしぶっていたが、やがて用具入れの方を探し始めた。花音は引き続き、葉や枝をかき分け、地面を探す。
「あ、これじゃない? 律!」
「――えっ」
律が慌てて駆けつけてきて、花音が指さす方を凝視した。地面から5センチほどの高さに「ののはらい」と手描きで書かれたラベルが差してある。
内側寄りの、花をかき分けないと見えない場所だ。だが、花の植え替えをしていた律なら当然認識していたに違いない。
0
あなたにおすすめの小説
恋と首輪
山猫
恋愛
日本屈指の名門・城聖高校には、生徒たちが逆らえない“首輪制度”が存在する。
絶対的支配者・東雲財閥の御曹司、東雲 蓮の「選んだ者」は、卒業まで彼の命令に従わなければならない――。
地味で目立たぬ存在だった月宮みゆは、なぜかその“首輪”に選ばれてしまう。
冷酷非情と思っていた蓮の、誰にも見せない孤独と優しさに触れた時、みゆの心は静かに揺れはじめる。
「おめでとう、今日から君は俺の所有物だ。」
イケメン財閥御曹司
東雲 蓮
×
「私はあなたが嫌いです。」
訳あり平凡女子
月宮 みゆ
愛とか恋なんて馬鹿らしい。 愚かな感情だ。
訳ありのふたりが、偽りだらけの学園で紡ぐカーストラブ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
『後宮祓いの巫女は、鬼将軍に嫁ぐことになりました』
由香
キャラ文芸
後宮で怪異を祓う下級巫女・紗月は、ある日突然、「鬼」と噂される将軍・玄耀の妻になれと命じられる。
それは愛のない政略結婚――
人ならざる力を持つ将軍を、巫女の力で制御するための契約だった。
後宮の思惑に翻弄されながらも、二人は「契約」ではなく「選んだ縁」として、共に生きる道を選ぶ――。
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる