花にひとひら、迷い虫

カモノハシ

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 ……最初は、本当にただ監視をするだけのつもりだった。
 
 暗号にレオンの影がちらついてからは、確認するために一緒にいた。
 けれど、いつの間にか花音自身に興味を持っていた。
 同情でも、興味本位の好奇心でもなく、純粋に律だけを見てくれて、どんなにか嬉しかったか。
 人と関わることをやめたと言った律にさえ、手をさしのべてくれた。
 もう二度と会えないのかと、泣いてくれた。
 そこまでしてくれて、やっと律は気づいたのだ。

「……本当に、僕は鈍いのかも……」
 律は、流れてくる涙を拭いながら、笑い続ける。

 いつか、花音に教えてあげよう。
 あの暗号に隠された本当の意味を。
 彼女は、こんなときだけ父親面ちちおやづらして、と怒るだろうか。
 それとも、ざまあみろと笑うだろうか。

 
 ――この先のことは、彼にも判らないだろう。
 だって、それは、二人で作り上げていく未来なのだから。
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