白い息吹とココロの葉

カモノハシ

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 その彼が、何やらきょろきょろと周りを見渡している。
 どうやら何かを探しているようだ。さりげなく近くに寄ってみたけれど、つぶやいている言葉が日本語じゃないのでわからない。
 その時だ。彼のものらしき声が聞こえてきた。
『ダーラナホース。どこだ。あの馬、青くて目立つのに……』
 可憐な音色を背景にしたそれは、例のごとき星のささやきだろう。言葉ではなく思いが形となっているからなのか、日本語に自動変換されている。
(だーらな、ほうす?)
 何のことかわからないけれど、とりあえず、雪の積もった歩道を歩いて、色に的を絞って探してみる。
 光を反射してまぶしい地面になんとか目を凝らしていると、ほどなく、雪に半分埋もれた青色を見つけた。
 五センチくらいの大きさの、青い馬をかたどったキーホルダー。彼が必死に探している物はこれだろう。きっと大切なものなのだ。
 拾い上げ、届けてあげようとしたとき、はっとした。
(ど、どう話しかける? あの、怖い人に……)
 すぐさま他の方法を検討する。無言で渡して立ち去るのはどうだろう。はたまた、歩道沿いにある石垣の上にでもそっと置いておいたらどうか。
 悩みながらチラチラ見ていると、ふいに、彼と目が合った。険しい顔をしてこちらに近づいてくる。
 どう好意的に解釈しても、落とし物を拾ってもらって感謝している顔じゃない。
(! もしかして、私が盗ったと思われてる!?)
 とっさに防衛本能が働いた。彼が口を開く気配を察し、素早く息を吸う。
「If you have something to say, say it clearly!」
「ノー! アイドントテイクユーイット!(いいえ、私はあなたを連れていきません!)」
 相手の言葉を遮るようにそう叫ぶと、青い馬を彼に押し付けて逃げ出した。
 タイミングよく到着したバスに飛び乗って、あとはただ、私の英語が間違っていないことをひたすら祈った。
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