75 / 110
――友達に戻れる自信は?
しおりを挟む
そのまま足を進めれば、学校の校庭ほどの広さのある公園にたどり着いた。石を敷き詰めたゆるい傾斜を登れば、公園の中にたどり着く。右手に弧を描く遊歩道があり、それに囲まれるようにして、大きな木々が立ち並ぶ、ちょっとした林があった。夏場はきっと、多くのセミが獲れるだろう。左側は高いフェンスがあり、その向こうにベンチや寝かされたゴールポストがある。まっすぐ前には遊具や公衆トイレらしい建物が見えて、譲は晴彦の勧めに従い、右に行くことに決めた。
遊歩道の左側は、その向こうの遊具が木々の合間に見える程度の林。右側には、一段低くなった道路。譲の他に人影は見えない。こんなところがあるなんて知らなかったと感心しつつ、譲は木々を見上げて歩く。
入るなという看板も、人を止めるフェンスも無い。子どもでも届きそうな低い木の枝に、誰かの忘れ物らしい、キャラクターもののタオルハンカチが吊ってあった。それで木々の間に入ってもいいのだと判断し、何かに誘われるように木々の間に立ち止まり、木漏れ日を見上げた。
冬の、よそよそしく澄んだ空気を胸深くに吸い込み、吐き出す。遠い空は常緑樹の葉に遮られ、さらに遠く薄く感じられた。
葉の影を全身に浴びながら、譲は胸の奥の気持ちを吐き出すように、白い息を天に向けて吐いた。
「恭平」
ぽつりと呟き、尻ポケットに手を伸ばしてスマホを探し、首をかしげる。
――さっき、俺が押し倒した時に尻ポケットから落ちたんだよ。
スマホも落としてしまっていたのかと、来た方向に顔を向けて戻りかけ、止めた。時間はわからないが、散歩を終えて戻っても恭平と会う約束を交わすことは出来る。それが出来なくなるほどの時間をかけて散歩をするつもりは、譲には無かった。
恭平は、何を考えているんだろう。
ずっと傍にいた。高校からは離れてしまったけれど、ずっと傍にいて、誰よりも自分が一番近くにいて、恭平の事を知っているのだと思っていた。
――友達に戻れる自信は?
晴彦の問いを自分の問いに変えて、考える。
キスをして、抱かれて。
それが、賭けの日が終わればすべて無くなる。
「俺は」
戻れるのだろうか。戻らなければいけない。これは賭けの練習で、たわむれの一環で、本当の恋人では無いのだから。
――譲。
情事の折の、かすれた熱っぽい恭平の声が耳に蘇り、ぞくりと譲の腰が震えた。
――譲。
遊歩道の左側は、その向こうの遊具が木々の合間に見える程度の林。右側には、一段低くなった道路。譲の他に人影は見えない。こんなところがあるなんて知らなかったと感心しつつ、譲は木々を見上げて歩く。
入るなという看板も、人を止めるフェンスも無い。子どもでも届きそうな低い木の枝に、誰かの忘れ物らしい、キャラクターもののタオルハンカチが吊ってあった。それで木々の間に入ってもいいのだと判断し、何かに誘われるように木々の間に立ち止まり、木漏れ日を見上げた。
冬の、よそよそしく澄んだ空気を胸深くに吸い込み、吐き出す。遠い空は常緑樹の葉に遮られ、さらに遠く薄く感じられた。
葉の影を全身に浴びながら、譲は胸の奥の気持ちを吐き出すように、白い息を天に向けて吐いた。
「恭平」
ぽつりと呟き、尻ポケットに手を伸ばしてスマホを探し、首をかしげる。
――さっき、俺が押し倒した時に尻ポケットから落ちたんだよ。
スマホも落としてしまっていたのかと、来た方向に顔を向けて戻りかけ、止めた。時間はわからないが、散歩を終えて戻っても恭平と会う約束を交わすことは出来る。それが出来なくなるほどの時間をかけて散歩をするつもりは、譲には無かった。
恭平は、何を考えているんだろう。
ずっと傍にいた。高校からは離れてしまったけれど、ずっと傍にいて、誰よりも自分が一番近くにいて、恭平の事を知っているのだと思っていた。
――友達に戻れる自信は?
晴彦の問いを自分の問いに変えて、考える。
キスをして、抱かれて。
それが、賭けの日が終わればすべて無くなる。
「俺は」
戻れるのだろうか。戻らなければいけない。これは賭けの練習で、たわむれの一環で、本当の恋人では無いのだから。
――譲。
情事の折の、かすれた熱っぽい恭平の声が耳に蘇り、ぞくりと譲の腰が震えた。
――譲。
0
あなたにおすすめの小説
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
あなたの隣で初めての恋を知る
彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる