チートは必要でした

エイリス

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災害日

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「ふぅ・・・朝か・・・」
今日のドキドキで、眠れなかった・・・
本へのツッコミで興奮したのもある。

「あ、翼の弁当手伝うんだった!」
慌てて起きて翼の家へ

「お、おはよー」
「翼・・お前は、何をした?」
台所の惨事を見て、俺は翼に問い詰める。

「じ、事前に・・準備を、しようかなぁーーって」
「あの真っ黒な物体は?」
フライパンに入っている謎の物体、、黒いグツグツしてる・・

「卵焼きを思い出しながら作ろうとしたの。そしたら何故か黒い塊になったの」
焦げたんだよ・・油引いてないな。他にも何か入れたろ・・

「で、この鍋の液体は?」
「栄養のある物で作った力作?」
ゴミ箱に目を向けると、ユン〇ル、リポビ〇ンA、青〇、牛肉・・・牛肉?

「肉は?」
「え、ミキサーで」
ミキサーで砕いて鍋か・・・

「はぁ・・・まずは片付けるぞ」
材料が勿体ないが、これを食べたら確実に腹を壊す。
すべて捨てて、一から作り直した。


「お、おはよー」
「ど、どうしたの?凄い疲れてるけど?」

動揺してる阿部に、無言で翼を指さす。
丁度、お弁当を作った自慢をしてるところだった。

「あーー。うん。お疲れ様」
「おう・・」
察した阿部に肩に手を置かれる。


「先週も話した通り、本日は町全体の避難訓練を行います。」

グラッグラッ

「っ。今日は、やけに地震が多いな。15時から避難を開始します。以上」
それまでは、普通に授業か。

「ふぁぁぁ」
「眠そうだね?」
「そうなんで・・・」
やべぇ!頭が回ってなかった!目の前にいる教師に冷や汗が・・・

「だ、大丈夫です。」
「そうかね?授業が退屈過ぎたかと思ったんだが?」
「いえいえ。全然。大丈夫です。問題ありません。」
この教師は、退屈なら小テストで緊張感を持たせようかとか言う人だ!
テスト結果が成績に響くとか、恐ろしい事を言ってくる!

ね、寝るな!俺!
眠気と闘いながら授業を受けた。

「須藤センの前で、眠りかけるとか勇者だろ?」
「小テストになったらって、ドキドキしたよ」
「マジで、すまん」
クラスメイトからの視線も痛い・・すまんかったって・・

授業中に眠りかける以外はトラブルもなく。
昼に弁当食べて、昼寝をした・・まじきつかった・・


午後の授業も普通に受けて終了・・

ファンファンファンファンファン

「訓練、訓練、訓練です。地震が発生しまいた。落ち着いて行動しましょう。
火を消して、自分の身を守ってください。」
そうだ、今日だった。頭が回ってないなー

ファンファンファンファンファン

「訓練、訓練、訓練です。地震が発生しまいた。落ち着いて行動しましょう。
火を消して、自分の身を守ってください。」

ファンファンファンファンファン
「訓練、訓練、訓練です。地震の影響で津波が発生しました。速やかに高台に避難してください」

ガラガラガラ
「よーし。全員避難するぞ。現地解散になるので鞄は持っていけ。」

「え?先生。部活は?」
「ん?聞いてないのか?今日は休み。避難後に反省会もあるので学校には戻らないぞ」
「マジかー」
皆はノロノロと鞄を持ち教室から出始める。

「阿部は、3丁目のところで避難誘導。山本は指示のあった施設に向かってくれ」
「「わかりました」」
担任の指示で、二人は手を挙げて山本は急いで出て行った。
場所が遠いらしい。運動部から選ばれたらしい。部活やってなくて良かった。

「後で合流な!」
阿部も俺たちに告げて出て行く。

翼がいる方に視線を向けて、俺と由紀も鞄を持って教室を出る。
1階で、靴を履き替えた時

ファンファンファンファンファン
地震です。地震です。地震です。地震です。

携帯電話から緊急速報が鳴り響く。

「全員伏せろ!電球の下から離れろ!」

グラグラグラガラガラ

ガシャーン

「きゃあああ」
「うわああああ」

「慌てるな。落ち着け!!」
今までにない揺れが俺達を襲う。
来やがった。

グラグラ
「お、収まってきた?」
「急いで外に出ろ!早く!」
放心状態の翼の手を掴み。外へと促す。

「え、あ。うん」
俺の声に反応して、他の生徒たちも急いで外へと飛び出す。

ズン。ズン。ズーーーン。
ガランガランガラン

凄まじい縦揺れが発生し、旧校舎が傾き倒れる。

「う、うそ・・・」
訓練の時間が遅過ぎだったか・・・

ファンファンファンファンファン
地震です。地震です。地震です。地震です。

携帯電話の緊急速報が鳴りやまない。

「先生!高台に避難です!」
狼狽えている先生に、高台へ避難するように伝える。

「お、おおう。佐々木?そ、そうだな。高台で大丈夫か?」
「アレを見てください」
そんな質問をしてくるので、海の方を指さす。

「なんだ?壁?」
「津波です!早く避難!」
「「「「っ」」」」
俺の声が聞こえた全員が、海に視線を向け絶句する。

「はやく!」
「そ、そうだ、全員。高台に速やかに非難しなさい!はやく!」
先生の叫びに、全員が高台に向かって走り出す。


「よし。避難するぞ?って伊藤?あれ?どこに、ってどこに行くんだよ!」
「今日は、午後から業者が来るって、姉ちゃんが家にまだいるはずなんだ。先に行ってて!!」

「ま、ま、待てって」
「先輩!渡辺先輩!」
なっ!

「翼、何やってるんだ!早く避難しろ!」
「正義!渡辺先輩が、体育館に!取り残されてて・・」
「佐々木君。誰か先生を呼んできて!」
扉が変形し、体育館が開かず数名が取り残されたようだ。そこに渡辺先輩もいるらしい。

「わかった。俺が呼んでくるから、お前たちは逃げろ」
「「で、でも」」
「良いから早く!」
翼と美鈴さんの背中を押して、避難してる人たちの方へ向かわせる。

「どうした?」
「体育館に数名。扉が開きません。」
「なんだって。中島先生!」
1人残った俺のところに教師が集まり、全員で扉を開けようとするがビクともしない。

「おい。中にいる生徒!扉から離れろ!」
「「「はい」」」
1人の教師が扉から声をかけ、走って離れていく。

「どうするんだ?」
「佐々木。君も早く避難しなさい」
担任に言われ、俺も避難の輪に戻ろうとした時

ウィーーーーーン。
車が駐車場から出てきた・・・って

「扉に当てます。離れてください!」
マジかー車を取りに行ったのか!

ウィーーーーン。ガーーン。
凄まじい音を立てて、車が体育館の扉に当たった。

「開いた!開いたぞ!急げ!急げ!」
中から出てきた生徒を、教師達が避難の輪に誘導していく。

「佐々木!行くぞ!」
「はい!」
担任の声に返事をし、俺も避難の輪に・・あれ?渡辺先輩がいない?

途中まで行って、俺は体育館に引き返してきた。

「君は、佐々木君だね。君も早く避難しないと」
そこで見たのは足を怪我した先輩が、足を引きずって出てくるところだった。

「せ、先輩?」
「扉から離れていたのに、車の衝撃でバスケゴールが落ちてきて当たってしまったんだ。
運が悪かったって事かな?」
「そんなのは良いです。急ぎますよ!」
先輩に肩を貸して、俺たちは急いで避難先に向かう。

必死に坂を上っていく。

「急げ!3丁目の崖が崩れたらしいぞ!
小学生と学生が巻き込まれたって」

「5丁目の商店街で、亀裂で道が塞がれたらしいわ」

「4丁目から火事だ。消防車は出せないのか!」

同じように高台に避難してる人の声を耳にする。
3丁目って、阿部が行った場所だ・・・
5丁目はメイドカフェがある場所だよ・・・
4丁目は家がある・・・

なんだよ・・それ・・・

後ろを振り返る。濁流が町を飲み込んでいく・・・

行こう・・
心を奮い立たせ。先輩を連れて避難所に向かう。

「正義!千佳、正義と渡辺先輩が来た!急いで!」
階段から降りて、翼が反対側に行き二人で先輩を押し上げ、
上から手を引っ張ってもらい先輩を階段の上にあげる。

ガゴッ
痛いっ

足に何かが当たった痛みでよろける。
「なんだ・・・よ」
階段から落ちるだろう・・・が?

パシャン

「せ、せいぎ?」
俺の横で翼も、後ろにまで迫ってた水に落ちる。

や、やばい!

「こ、こなくそ」
痛みをこらえて、翼を水の上に引き上げ・・

「どっせい」
階段の方に向かって何とか投げ飛ばした。

「よ、よし・・」
離れていく視界の中で、翼が助けられているのを確認する。

後は、俺が泳いで辿り着ければ・・・

ごっ

大きな木が腹に当たる。い、痛いっ・・

俺は泳ぎは得意なんだぜ。

がっ

足が何かに挟まり抜けない・・

うそ・・だろ・・・

必死に手を動かすが・・駄目だ。。。

視界がぼやけて・・・

ああ、せめて翼だけは救えたんだな・・・



「ここ・・は?」
「お帰りなさい」
テレビの画面を見ている翼が、俺に声をかけてくる。

「死んだのか?」
「そうよ。貴方の役目は終わり。」
自分の手を見ると透き通っている。
そうだ、次はチートに

「それじゃ輪廻転生へ。ばいばい」
「なっ」

佐々木 正義の魂は輪廻転生に戻っていった。

そこには、テレビを見る少女が1人。

テレビには、渡辺先輩と千佳が抱き合っていた。

「千佳!良かった。無事だったんだね」
「晴樹!貴方も無事でよかった」
「え?」

下の名前で呼び合い抱き合っている2人に、翼は戸惑いが隠せない。

「佐々木君が助けてくれたんだ。でも彼は・・」
「晴樹が無事で良かったわ」

「なによ・・・それ・・」
翼が一歩下がる・・

「佐々木君の為にも、君たちを絶対に幸せにする」
「ああ。ありがとう。ありがとう。」

「君・・たち?どういう・・」
何かを感じた翼が、つぶやくと千佳が翼に視線を向け

「ごめん。翼。私たち付き合ってたの」

「そんな、だって、千佳は、わたしの事知って・・」
わたしが、渡辺先輩の事好きだって・・知ってたでしょう?

「ごめん。私、赤ちゃんが・・」

「い、いやああああああああああああああああああああああ」
「翼!」

絶叫をあげた翼は、その場から逃げ出すように走り誤って濁流の中に転落してしまう。


「あーあ。なんで、そうなるかなぁ。そこで、その女を突き落とせよ。馬鹿」
その一部始終を見ていた少女が告げる。

「また、失敗か。次こそは成功させないと。外部からの転生も駄目ね。
先に、あの女を殺さないと駄目かしら?」
「残念ながら次はありませんよ?」
少女の後ろから白い球体が出現し、少女に声をかける。

「え?なんで?」
「最初に伝えたでしょう?100の並行世界だと。貴方が生き残り、滅亡しない世界に挑戦したのでしょう?」

「う、うそ。まだ。あるでしょう?」
「いいえ。今の世界が最後です。非常に残念ですが」

テレビの中では、翼の捜索が行われるが見つかることはないだろう。
その後、浮上した遺跡を巡り戦争によって滅びるか、遺跡の疫病によって滅びるか。滅びが確定したのは間違いないだろう。

「い、嫌っ。先輩と一緒のハッピーエンドになるはずよ・・こんな」
「それでは、イレギュラーさん。さよなら」
少女は光となって消えてしまう。

世界が消えてしまった事で、既に輪廻転生による魂の循環も発生しない。消滅へと至るだろう。

「世界の救命処置であった彼女が、本来のルート以外で亡くなってしまった措置でしたが
強い欲望により消滅を選びましたか・・・」
光の玉が、テレビ画面の映像を視た。

そこでは、さらに時が進み浮上した遺跡を巡り争いが起こっていた。

ここは自分の国だと主張し旗を立てる者。
ここは失われた遺跡だから自分たちが調査すると乗り込む者。
自分たちは、この遺跡の子孫だから遺跡は自分たちの物だと主張する者。

やがて、時間が進み。
1人の調査隊が、封印されていた遺跡の扉を開けてしまう。

そこから無数の虫が飛び出した。

虫を捕まえた者が新種だと叫び、国へと持ち帰る。
新種だと聞いた者たちが、慌てて虫を捕まえ自国へと送る。

さらに時間が進む・・
虫を研究していた者が、順に血を吐き倒れはじめた。

原因を調査する機関が設けられ結果が報告される。
虫から感染するウィルスが原因であると判明する
ワクチンの作成が始まるが、次々と人々が倒れていく。

虫が触れた動植物も感染し、畑が焼かれ家畜が殺されていく。
世界中に広がった虫の影響で、食料がなくなり。
ウィルスが人から人に感染する変異をした事で人口が減っていく。

さらに時間が進み・・
保存食を持ち地下へと逃げた一部の人間が残ったが・・・
食料の奪い合い、地下に侵入した虫により人が居なくなった。

地上には虫だけとなったが、虫は砂のように崩れ海へと広がっていく。
この砂を食べたプランクトンが死に、プランクトンを食べた魚が死んでいく・・

やがて生命が、存在しなくなった・・・

「やはり、最後はこうなるのか・・
何度作り直しても、この遺跡だけは残る・・浮上しないようにもできませんし・・・
先代の神は何故、このような物を残したのか・・・
一から作るのが一番でしょうか・・・
面倒な。神になって好き放題できるはずだったのに・・」
(滅する前に遺跡の破壊方法を聞いておけば良かった)

「神の座を奪ったというのに・・全く・・・」
ブゥゥゥゥン
光の玉とテレビ以外存在しない場所で、唐突に羽の音が響く。

「は?」
白い光に吸い寄せられるように、突然現れた虫が飛来し光に飛び込む。

その後、数回点滅した白い光も消える。

テレビに映し出された世界で日が沈む。

静寂が訪れた・・・
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