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外伝「妹と脱糞」2-①
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この家はおかしい。
池谷和人の大きい方の妹、今年中学に入学した池谷桃香はそう思っている。特に兄の和人と妹の梨香には正直関わり合いになりたくない。
桃香は天真爛漫で比較的自由奔放な性格をしているが、それは外でのことだ。家の中ではここ何年も肩身の狭い思いをしている。
おかしくなったのはいつからだろう。幼い頃は何でもできる兄を慕っていたし、二つ下の妹は兄にも自分にもよくなついていた。性格的なことを言えば、兄は優しく、熱血的な部分もある。梨香は生真面目。ここまでなら別に何のことはない。事実、小さな違和感こそあったにしろ、あの事件が起こるまでは兄妹、姉妹の仲は良好だった。
桃香が八歳の時。
「あはは、お兄ちゃん面白い!」
他愛のない談笑。
その日は両親が不在。和人、桃香、梨香は家で留守番をしていた。しかし、あの事件は起こった。
カチャカチャ、ガチャ。
「あれ? お父さんとお母さんもう帰ってきたのかな?」
玄関が開く音がして、梨香がとてとてと歩いていった。
「きゃあっ」
梨香の悲鳴は数秒と待たずに聞こえてきた。
「梨香、どうした!?」
和人と桃香は慌てて玄関に向かった。
「…………!」
そこで見たものに驚いて桃香は尻もちをついた。
「ど、泥棒っ」
家に侵入してきて悪いことをする人物といえば、八歳の桃香には泥棒以外に考えられなかった。
とにかく、その中年男性は梨香を抱えて包丁を握りしめていた。
「金庫の鍵はどこだ!」
案の定、そいつは金が目当てだった。
桃香は恐怖で腰を抜かし、立ち上がることも、泣くことすらもできなかった。
だが、兄は違った。
堂々たる態度で仁王立ちし、腕を組んで男を睨みつけたのだ。
「鍵を出したら梨香を返してくれるんだな?」
「あ、ああ! 返すから早く出せ!」
小学生にしては妙に落ち着いたその態度に犯人は気圧されつつも、もう一度金庫の鍵を要求した。
「分かった」
そして、和人はゆっくりと体を反転させ―
ケツを出した。
意味が分からなかった。桃香だけではない。その場にいた誰も彼もがその行為の意味を理解できていなかった。
「…………何を、している?」
犯人はやっとの思いで疑問を口にした。
和人は股の間から逆さに犯人を見つめ、非常に冷静に言った。
「ケツを、出した」
「ふ」
犯人がわなわなと体を震えさせた。
「ふ、ざけんな! そんなことは見れば分かる! 何でそんなことしたんだと聞いているんだっ」
和人はやれやれというように答える。
「昨日、父さんに怒られた腹いせに金庫の鍵を飲み込んじゃったんだよ」
「は?」
「今から出すから待ってて」
「ま、待て―」
犯人が制止するのも聞かず、和人は肛門に力を入れた。
「フンっ!」
次の瞬間。
「ブリブリブリブリブリッ!」
およそ小学生の尻から出たとは思えない爆音と、特大の固形物が排出された。
「さあ、早く鍵を取り出して梨香を返してよ」
「…………!」
ドヤ顔の和人に絶句する犯人。
「さあ」
煽る和人。
「…………」
悩む犯人。
犯人が震える手を伸ばす。
「さあ、早く」
当然この間、和人は犯人に肛門を向けたままである。
「…………!」
意を決して犯人がクソに手をつけようとしたとき。
「ブリブリブリブリブリブリブリィイ!!」
先ほどより遥かに大きな音が響き渡った。
「うわあああ!」
犯人は顔を両手で覆う。
そう、若干下痢気味の第二波が犯人の顔にクリーンヒットしたのだ。その隙に和人は梨香を抱きかかえ、桃香の手を握って裏手から外へと逃げた。
和人は叫んだ。
「泥棒が! 家の中に泥棒が! 助けてください!」
下半身丸出しで必死に叫ぶ彼の勇姿は、後に近所の子供たちの間で英雄として語り継がれることとなる。
しかし、犯人が近隣の大人たちに取り押さえられたあと、桃香は我に返ってしまった。
「…………?」
和人に握られている手が妙に生暖かい。いや、さらに言えばネチャッとしている。
ゆっくりと手を離してみる。
そこに、あった。
糞便にまみれた金庫の鍵が。
てっきり敵を欺くための方便だと思っていた。
オロロロロロロロ。
桃香は吐いた。
気持ち悪さのあまり、気が遠のいていく。意識が消える直前に見たものは。
「お兄ちゃんかっこいい!」
同じく体に兄の糞便を纏いながら兄を尊敬の眼差しで見つめる梨香の姿だった。
この事件以来、梨香は和人のことを無条件で信用し、尊敬するようになった。代わりに、桃香は二人と距離を置くようになった。最初はそれとなく、和人と梨香がおかしいと両親に伝えていたのだが、当てにならなかった。なぜなら、彼らも娘たちを守った勇敢な和人のことを信用しきっていたからだ。
そのこともあり、現在桃香は家の中では完全に心を閉ざしている。
池谷和人の大きい方の妹、今年中学に入学した池谷桃香はそう思っている。特に兄の和人と妹の梨香には正直関わり合いになりたくない。
桃香は天真爛漫で比較的自由奔放な性格をしているが、それは外でのことだ。家の中ではここ何年も肩身の狭い思いをしている。
おかしくなったのはいつからだろう。幼い頃は何でもできる兄を慕っていたし、二つ下の妹は兄にも自分にもよくなついていた。性格的なことを言えば、兄は優しく、熱血的な部分もある。梨香は生真面目。ここまでなら別に何のことはない。事実、小さな違和感こそあったにしろ、あの事件が起こるまでは兄妹、姉妹の仲は良好だった。
桃香が八歳の時。
「あはは、お兄ちゃん面白い!」
他愛のない談笑。
その日は両親が不在。和人、桃香、梨香は家で留守番をしていた。しかし、あの事件は起こった。
カチャカチャ、ガチャ。
「あれ? お父さんとお母さんもう帰ってきたのかな?」
玄関が開く音がして、梨香がとてとてと歩いていった。
「きゃあっ」
梨香の悲鳴は数秒と待たずに聞こえてきた。
「梨香、どうした!?」
和人と桃香は慌てて玄関に向かった。
「…………!」
そこで見たものに驚いて桃香は尻もちをついた。
「ど、泥棒っ」
家に侵入してきて悪いことをする人物といえば、八歳の桃香には泥棒以外に考えられなかった。
とにかく、その中年男性は梨香を抱えて包丁を握りしめていた。
「金庫の鍵はどこだ!」
案の定、そいつは金が目当てだった。
桃香は恐怖で腰を抜かし、立ち上がることも、泣くことすらもできなかった。
だが、兄は違った。
堂々たる態度で仁王立ちし、腕を組んで男を睨みつけたのだ。
「鍵を出したら梨香を返してくれるんだな?」
「あ、ああ! 返すから早く出せ!」
小学生にしては妙に落ち着いたその態度に犯人は気圧されつつも、もう一度金庫の鍵を要求した。
「分かった」
そして、和人はゆっくりと体を反転させ―
ケツを出した。
意味が分からなかった。桃香だけではない。その場にいた誰も彼もがその行為の意味を理解できていなかった。
「…………何を、している?」
犯人はやっとの思いで疑問を口にした。
和人は股の間から逆さに犯人を見つめ、非常に冷静に言った。
「ケツを、出した」
「ふ」
犯人がわなわなと体を震えさせた。
「ふ、ざけんな! そんなことは見れば分かる! 何でそんなことしたんだと聞いているんだっ」
和人はやれやれというように答える。
「昨日、父さんに怒られた腹いせに金庫の鍵を飲み込んじゃったんだよ」
「は?」
「今から出すから待ってて」
「ま、待て―」
犯人が制止するのも聞かず、和人は肛門に力を入れた。
「フンっ!」
次の瞬間。
「ブリブリブリブリブリッ!」
およそ小学生の尻から出たとは思えない爆音と、特大の固形物が排出された。
「さあ、早く鍵を取り出して梨香を返してよ」
「…………!」
ドヤ顔の和人に絶句する犯人。
「さあ」
煽る和人。
「…………」
悩む犯人。
犯人が震える手を伸ばす。
「さあ、早く」
当然この間、和人は犯人に肛門を向けたままである。
「…………!」
意を決して犯人がクソに手をつけようとしたとき。
「ブリブリブリブリブリブリブリィイ!!」
先ほどより遥かに大きな音が響き渡った。
「うわあああ!」
犯人は顔を両手で覆う。
そう、若干下痢気味の第二波が犯人の顔にクリーンヒットしたのだ。その隙に和人は梨香を抱きかかえ、桃香の手を握って裏手から外へと逃げた。
和人は叫んだ。
「泥棒が! 家の中に泥棒が! 助けてください!」
下半身丸出しで必死に叫ぶ彼の勇姿は、後に近所の子供たちの間で英雄として語り継がれることとなる。
しかし、犯人が近隣の大人たちに取り押さえられたあと、桃香は我に返ってしまった。
「…………?」
和人に握られている手が妙に生暖かい。いや、さらに言えばネチャッとしている。
ゆっくりと手を離してみる。
そこに、あった。
糞便にまみれた金庫の鍵が。
てっきり敵を欺くための方便だと思っていた。
オロロロロロロロ。
桃香は吐いた。
気持ち悪さのあまり、気が遠のいていく。意識が消える直前に見たものは。
「お兄ちゃんかっこいい!」
同じく体に兄の糞便を纏いながら兄を尊敬の眼差しで見つめる梨香の姿だった。
この事件以来、梨香は和人のことを無条件で信用し、尊敬するようになった。代わりに、桃香は二人と距離を置くようになった。最初はそれとなく、和人と梨香がおかしいと両親に伝えていたのだが、当てにならなかった。なぜなら、彼らも娘たちを守った勇敢な和人のことを信用しきっていたからだ。
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