スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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   放課後、怜雄が応接室で雑誌を読んでいると、宇野が顔を出した。

「一人とは珍しいですね。神崎君は?」
「担任に呼ばれたそうだ。期末テストの結果が散々だったらしい。」
 雑誌から目を上げず、怜雄が言った。
「それは困りましたね。」
 くすりと笑って宇野が紅茶のカップを怜雄の前に置いた。

 いつもより近い距離で宇野が隣に座ると、雑誌を読んでいる怜雄の手にそっと触れた。
「最近、全然お部屋に呼んでくださらないんですね。」
 宇野が自分の人差し指で、怜雄の手の甲をなぞる。
「必要ないからな。」
 怜雄がうっとうしそうにその手を払いのけた。

 宇野が自分の手を握り締め言う。
「もう僕は御剣様にとって必要のない人間なのでしょうか?」
「瑞樹。お前には色々世話になっているから、抱いてくれと言われて抱いた。だがもう俺は優以外の男を抱く気はない。」

 怜雄は立ち上がると応接室の扉に手をかけ、言った。
「もしお前が俺にもう尽くすつもりがないというならそれもいいだろう。だがその時は、二度と俺の視界にはいるな。」
 ぱたんと扉が閉まる音がして、宇野はその場に崩れ落ちた。

 以前宇野の顔を綺麗だと御剣が言ってくれたことがあった。しかし今日、御剣は一度も宇野の顔を見なかった。

 神崎の顔が宇野の脳裏に浮かんだ。
 容姿で誰かに負けたことのなかった宇野は、神崎のどこがいいのか全く分からなかった。
 胸の奥にどす黒い感情がうまれ、宇野は唇を噛みしめる。

「会長。」
 扉が開き、桐谷が入ってきた。こちらを見つめ心配そうな顔をしている。
「玲一。」
 宇野はもう自分が泣いているのか微笑んでいるのさえ分からなかった。
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