情熱彼女に振り回される日々。クールを気取っているつもりでもタジタジです。(ディレクターズカット版)

luna@月影

文字の大きさ
1 / 4
プロローグ

第1話 プロローグ その1 (SIDE 冬馬)

しおりを挟む
「北野、前に話した合コンの話、考えてくれたか?」
「石塚さん、自分の性格知っているでしょう?ただでさえ人付き合いが苦手なのに。ましてや女の人との合コンなんて無理ですよ。他の人に頼んでくださいよ」
「いや、手あたり次第に声かけてみたんだけど、みんな都合が悪いとか、用事があるとか、断られてばっかなんだよ。ちょっと恩がある人の頼みだから、今回、ちょっと穴開けられないんだよ。なぁ、頼むからさ」
「でも会費とか高いんじゃないですか?あんまり無駄使いしたくないし。気が乗らないからやっぱりイヤですよ」
「わかった。それじゃあ会費は半額持つ。それでどうだ?」
「全額じゃないんですね……」

 人付き合いが苦手な北野冬馬にとっては、沢山の人が集まる場所は苦手だった。特に女の人と話すのには抵抗を持っているので、合コンのようなものには敷居の高さを感じている。冬馬は決してコミュ障というわけではないが、人と深く付き合うのには抵抗を感じているのだ。いやはっきり苦手といった方が正解かもしれない。
 勿論、そういう事になったのには理由があったりする。小さい頃にあった些細な出来事、他の人にとっては何でもないような事だったが、冬馬にとっては心に深い傷を残す事となり、後々にも響いていくトラウマになってもいた。それに加えて、決定的に人間が嫌になる出来事も体験した。それ以降、信じられるのは自分だけという考えに至っている。だから親友と呼べる人は作らなかったし、出来る限り一人で行動する事を好んできた。そういった事情もあり、学生時代は女性と関わる事は非常に少なかった。憧れを抱いていた先輩とか、可愛いなと思う様な後輩の女の子もいたことはいたのだが、行動をする事はなかった。人から見たら寂しい学生時代だろう。

 就職後も人との深い付き合いはなかったが、幸い冬馬は生真面目な性格だったので、仕事に関してはきっちりとこなしていた。そういった点からは、他人から嫌われることは少なかった。それでも時々、棘のあるような言い回しをする事があるので、そういった点では、あまり好きではないという人も一部にはいたが。性格的に合わないっていう人もいるだろうけれど、露骨に嫌っている人は少なかった。

「わかりました。石塚さんの頼みですし、まぁ気が進みませんが参加しますよ。会費分食べて元を取ったら帰るでしょうけど」
 冬馬は一応、職場の先輩であり、自分の事を何かと気にかけてくれている石塚さんの顔を立てることにした。ちょっと一言多かった気もするが。今回は、かなりしつこく勧誘されたけれど、やっぱり日頃の恩もあるし、無下には断りづらかった。冬馬はこういった所が変に義理堅いのだ。
「ありがとう、助かる、恩にきるよ。来週の金曜日の夜だけど、よろしく頼むよ」
 頼みを聞き入れてもらえた石塚さんは、ホッとして胸を撫で下ろした。

「どうせなら、いっその事、ポンタさんに頼んでもよかったんじゃないですか?」
「いや、流石にポンタさんはないだろ」
 因みにポンタさんっていうのは、冬馬が務める総務課の課長の事である。本名は権田というのだが、本人が権田という名字が好きではなく、周囲には、あだ名であるポンタで呼ぶように日頃から言っている。気さくで話しも面白い人だが、容姿が例えて言うなら〇イクぬあらを脱色して丸々と太らせた感じなので、流石に合コンに行かせるのはちょっとってわけである。

(今度の金曜日かぁ。あんまり気が進まないんだよなぁ)
 冬馬は合コンに参加することに承諾したものの、やはり好き好んでいくわけではないので、気分的にいいというわけではなかった。
 冬馬は一人でいる事に抵抗はなかった。いや寧ろ単独行動をしたがる方だ。趣味である音楽鑑賞は、流行の音楽を聴くのではなく、60年代から70年代の古いロックを好んだ。日本のアーチストに関しても、国内よりも海外で評価されそうな、サイケデリックで前衛的なものを好んでいた。流行に左右されず、自分の信念に基づいて行動するようなアーチストが好きだった。自分がいいと思っているものに関してはブレずに行動していく。自分もそういう人になりたいとも思っているから憧れるのである。そのような考えだから、当然、身近に話が合う人もいない。だからライブも一人で行って楽しんでいた。もし自分に楽器とか演奏出来るのなら、バンドとか組んだかもしれないが、生憎、冬馬は生まれつきの不器用だった。自分が出来ないと思ったものは、すぐに諦めたので自分の身に付く事はなかった。

(彼女が出来たとしても、話なんて合わないだろうな)
 冬馬自身、流行しているものには興味がなく、寧ろ嫌悪感を持っていた。小さい頃に体験した挫折からかもしれないが、それが遠因となり捻くれた性格になったかもしれない。まぁ、そんな冬馬だから、普通の女の子とは根本からして話なんて嚙み合わないだろう。冬馬はそう思っていた。



 いつの間にか金曜日の晩になっていた。冬馬は普段よりもちょっとだけお洒落な格好をしていた。もっとも、基本的に冬馬はファッションには疎いので、ダサい格好になってしまうのだが。服に関しては全くもって無頓着だ。でも流石に合コンの会場なので、多少のTPOは弁えてみた。

(これが合コンかぁ。やっぱり自分は場違いだな)
 冬馬にとって、普段は人の多い所は避ける傾向がある。だからこういった場所でどう振舞っていいかはよくわからない。
(どうやって声かけるんだろう?何で他の人は普通でいられるのだろうか?)
 やはりというか、冬馬は一人でぽつんとしていた。当然というか、場違いな感じしかしなかった。

(やっぱり食べるぐらいしか出来ないか。会費を半分負担してくれた石塚さんには悪いけど、適当に食べたら抜け出そうかな)
 冬馬は合コンの会場でそう思いながら料理を確保していた。

(料理はこんなものか。会費からして妥当な感じかな)
 会場を見渡してみると、冬馬の目を引く奇麗な人もいたのだが、冬馬は特に目もくれなかった。どうせそういう人は、自分みたいな人は相手にはしないだろうと思い込んでいた。

(やっぱり特に収穫はなしか)
 冬馬は特に期待していなかったので、ここぞとばかりに美味しそうな料理を集めてくる。テーブル一杯に料理を盛りつけた皿を並べて、冬馬は料理を口に入れる作業を続けていた……。何か侘しいな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...