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プロローグ
第1話 プロローグ その1 (SIDE 冬馬)
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「北野、前に話した合コンの話、考えてくれたか?」
「石塚さん、自分の性格知っているでしょう?ただでさえ人付き合いが苦手なのに。ましてや女の人との合コンなんて無理ですよ。他の人に頼んでくださいよ」
「いや、手あたり次第に声かけてみたんだけど、みんな都合が悪いとか、用事があるとか、断られてばっかなんだよ。ちょっと恩がある人の頼みだから、今回、ちょっと穴開けられないんだよ。なぁ、頼むからさ」
「でも会費とか高いんじゃないですか?あんまり無駄使いしたくないし。気が乗らないからやっぱりイヤですよ」
「わかった。それじゃあ会費は半額持つ。それでどうだ?」
「全額じゃないんですね……」
人付き合いが苦手な北野冬馬にとっては、沢山の人が集まる場所は苦手だった。特に女の人と話すのには抵抗を持っているので、合コンのようなものには敷居の高さを感じている。冬馬は決してコミュ障というわけではないが、人と深く付き合うのには抵抗を感じているのだ。いやはっきり苦手といった方が正解かもしれない。
勿論、そういう事になったのには理由があったりする。小さい頃にあった些細な出来事、他の人にとっては何でもないような事だったが、冬馬にとっては心に深い傷を残す事となり、後々にも響いていくトラウマになってもいた。それに加えて、決定的に人間が嫌になる出来事も体験した。それ以降、信じられるのは自分だけという考えに至っている。だから親友と呼べる人は作らなかったし、出来る限り一人で行動する事を好んできた。そういった事情もあり、学生時代は女性と関わる事は非常に少なかった。憧れを抱いていた先輩とか、可愛いなと思う様な後輩の女の子もいたことはいたのだが、行動をする事はなかった。人から見たら寂しい学生時代だろう。
就職後も人との深い付き合いはなかったが、幸い冬馬は生真面目な性格だったので、仕事に関してはきっちりとこなしていた。そういった点からは、他人から嫌われることは少なかった。それでも時々、棘のあるような言い回しをする事があるので、そういった点では、あまり好きではないという人も一部にはいたが。性格的に合わないっていう人もいるだろうけれど、露骨に嫌っている人は少なかった。
「わかりました。石塚さんの頼みですし、まぁ気が進みませんが参加しますよ。会費分食べて元を取ったら帰るでしょうけど」
冬馬は一応、職場の先輩であり、自分の事を何かと気にかけてくれている石塚さんの顔を立てることにした。ちょっと一言多かった気もするが。今回は、かなりしつこく勧誘されたけれど、やっぱり日頃の恩もあるし、無下には断りづらかった。冬馬はこういった所が変に義理堅いのだ。
「ありがとう、助かる、恩にきるよ。来週の金曜日の夜だけど、よろしく頼むよ」
頼みを聞き入れてもらえた石塚さんは、ホッとして胸を撫で下ろした。
「どうせなら、いっその事、ポンタさんに頼んでもよかったんじゃないですか?」
「いや、流石にポンタさんはないだろ」
因みにポンタさんっていうのは、冬馬が務める総務課の課長の事である。本名は権田というのだが、本人が権田という名字が好きではなく、周囲には、あだ名であるポンタで呼ぶように日頃から言っている。気さくで話しも面白い人だが、容姿が例えて言うなら〇イクぬあらを脱色して丸々と太らせた感じなので、流石に合コンに行かせるのはちょっとってわけである。
(今度の金曜日かぁ。あんまり気が進まないんだよなぁ)
冬馬は合コンに参加することに承諾したものの、やはり好き好んでいくわけではないので、気分的にいいというわけではなかった。
冬馬は一人でいる事に抵抗はなかった。いや寧ろ単独行動をしたがる方だ。趣味である音楽鑑賞は、流行の音楽を聴くのではなく、60年代から70年代の古いロックを好んだ。日本のアーチストに関しても、国内よりも海外で評価されそうな、サイケデリックで前衛的なものを好んでいた。流行に左右されず、自分の信念に基づいて行動するようなアーチストが好きだった。自分がいいと思っているものに関してはブレずに行動していく。自分もそういう人になりたいとも思っているから憧れるのである。そのような考えだから、当然、身近に話が合う人もいない。だからライブも一人で行って楽しんでいた。もし自分に楽器とか演奏出来るのなら、バンドとか組んだかもしれないが、生憎、冬馬は生まれつきの不器用だった。自分が出来ないと思ったものは、すぐに諦めたので自分の身に付く事はなかった。
(彼女が出来たとしても、話なんて合わないだろうな)
冬馬自身、流行しているものには興味がなく、寧ろ嫌悪感を持っていた。小さい頃に体験した挫折からかもしれないが、それが遠因となり捻くれた性格になったかもしれない。まぁ、そんな冬馬だから、普通の女の子とは根本からして話なんて嚙み合わないだろう。冬馬はそう思っていた。
いつの間にか金曜日の晩になっていた。冬馬は普段よりもちょっとだけお洒落な格好をしていた。もっとも、基本的に冬馬はファッションには疎いので、ダサい格好になってしまうのだが。服に関しては全くもって無頓着だ。でも流石に合コンの会場なので、多少のTPOは弁えてみた。
(これが合コンかぁ。やっぱり自分は場違いだな)
冬馬にとって、普段は人の多い所は避ける傾向がある。だからこういった場所でどう振舞っていいかはよくわからない。
(どうやって声かけるんだろう?何で他の人は普通でいられるのだろうか?)
やはりというか、冬馬は一人でぽつんとしていた。当然というか、場違いな感じしかしなかった。
(やっぱり食べるぐらいしか出来ないか。会費を半分負担してくれた石塚さんには悪いけど、適当に食べたら抜け出そうかな)
冬馬は合コンの会場でそう思いながら料理を確保していた。
(料理はこんなものか。会費からして妥当な感じかな)
会場を見渡してみると、冬馬の目を引く奇麗な人もいたのだが、冬馬は特に目もくれなかった。どうせそういう人は、自分みたいな人は相手にはしないだろうと思い込んでいた。
(やっぱり特に収穫はなしか)
冬馬は特に期待していなかったので、ここぞとばかりに美味しそうな料理を集めてくる。テーブル一杯に料理を盛りつけた皿を並べて、冬馬は料理を口に入れる作業を続けていた……。何か侘しいな。
「石塚さん、自分の性格知っているでしょう?ただでさえ人付き合いが苦手なのに。ましてや女の人との合コンなんて無理ですよ。他の人に頼んでくださいよ」
「いや、手あたり次第に声かけてみたんだけど、みんな都合が悪いとか、用事があるとか、断られてばっかなんだよ。ちょっと恩がある人の頼みだから、今回、ちょっと穴開けられないんだよ。なぁ、頼むからさ」
「でも会費とか高いんじゃないですか?あんまり無駄使いしたくないし。気が乗らないからやっぱりイヤですよ」
「わかった。それじゃあ会費は半額持つ。それでどうだ?」
「全額じゃないんですね……」
人付き合いが苦手な北野冬馬にとっては、沢山の人が集まる場所は苦手だった。特に女の人と話すのには抵抗を持っているので、合コンのようなものには敷居の高さを感じている。冬馬は決してコミュ障というわけではないが、人と深く付き合うのには抵抗を感じているのだ。いやはっきり苦手といった方が正解かもしれない。
勿論、そういう事になったのには理由があったりする。小さい頃にあった些細な出来事、他の人にとっては何でもないような事だったが、冬馬にとっては心に深い傷を残す事となり、後々にも響いていくトラウマになってもいた。それに加えて、決定的に人間が嫌になる出来事も体験した。それ以降、信じられるのは自分だけという考えに至っている。だから親友と呼べる人は作らなかったし、出来る限り一人で行動する事を好んできた。そういった事情もあり、学生時代は女性と関わる事は非常に少なかった。憧れを抱いていた先輩とか、可愛いなと思う様な後輩の女の子もいたことはいたのだが、行動をする事はなかった。人から見たら寂しい学生時代だろう。
就職後も人との深い付き合いはなかったが、幸い冬馬は生真面目な性格だったので、仕事に関してはきっちりとこなしていた。そういった点からは、他人から嫌われることは少なかった。それでも時々、棘のあるような言い回しをする事があるので、そういった点では、あまり好きではないという人も一部にはいたが。性格的に合わないっていう人もいるだろうけれど、露骨に嫌っている人は少なかった。
「わかりました。石塚さんの頼みですし、まぁ気が進みませんが参加しますよ。会費分食べて元を取ったら帰るでしょうけど」
冬馬は一応、職場の先輩であり、自分の事を何かと気にかけてくれている石塚さんの顔を立てることにした。ちょっと一言多かった気もするが。今回は、かなりしつこく勧誘されたけれど、やっぱり日頃の恩もあるし、無下には断りづらかった。冬馬はこういった所が変に義理堅いのだ。
「ありがとう、助かる、恩にきるよ。来週の金曜日の夜だけど、よろしく頼むよ」
頼みを聞き入れてもらえた石塚さんは、ホッとして胸を撫で下ろした。
「どうせなら、いっその事、ポンタさんに頼んでもよかったんじゃないですか?」
「いや、流石にポンタさんはないだろ」
因みにポンタさんっていうのは、冬馬が務める総務課の課長の事である。本名は権田というのだが、本人が権田という名字が好きではなく、周囲には、あだ名であるポンタで呼ぶように日頃から言っている。気さくで話しも面白い人だが、容姿が例えて言うなら〇イクぬあらを脱色して丸々と太らせた感じなので、流石に合コンに行かせるのはちょっとってわけである。
(今度の金曜日かぁ。あんまり気が進まないんだよなぁ)
冬馬は合コンに参加することに承諾したものの、やはり好き好んでいくわけではないので、気分的にいいというわけではなかった。
冬馬は一人でいる事に抵抗はなかった。いや寧ろ単独行動をしたがる方だ。趣味である音楽鑑賞は、流行の音楽を聴くのではなく、60年代から70年代の古いロックを好んだ。日本のアーチストに関しても、国内よりも海外で評価されそうな、サイケデリックで前衛的なものを好んでいた。流行に左右されず、自分の信念に基づいて行動するようなアーチストが好きだった。自分がいいと思っているものに関してはブレずに行動していく。自分もそういう人になりたいとも思っているから憧れるのである。そのような考えだから、当然、身近に話が合う人もいない。だからライブも一人で行って楽しんでいた。もし自分に楽器とか演奏出来るのなら、バンドとか組んだかもしれないが、生憎、冬馬は生まれつきの不器用だった。自分が出来ないと思ったものは、すぐに諦めたので自分の身に付く事はなかった。
(彼女が出来たとしても、話なんて合わないだろうな)
冬馬自身、流行しているものには興味がなく、寧ろ嫌悪感を持っていた。小さい頃に体験した挫折からかもしれないが、それが遠因となり捻くれた性格になったかもしれない。まぁ、そんな冬馬だから、普通の女の子とは根本からして話なんて嚙み合わないだろう。冬馬はそう思っていた。
いつの間にか金曜日の晩になっていた。冬馬は普段よりもちょっとだけお洒落な格好をしていた。もっとも、基本的に冬馬はファッションには疎いので、ダサい格好になってしまうのだが。服に関しては全くもって無頓着だ。でも流石に合コンの会場なので、多少のTPOは弁えてみた。
(これが合コンかぁ。やっぱり自分は場違いだな)
冬馬にとって、普段は人の多い所は避ける傾向がある。だからこういった場所でどう振舞っていいかはよくわからない。
(どうやって声かけるんだろう?何で他の人は普通でいられるのだろうか?)
やはりというか、冬馬は一人でぽつんとしていた。当然というか、場違いな感じしかしなかった。
(やっぱり食べるぐらいしか出来ないか。会費を半分負担してくれた石塚さんには悪いけど、適当に食べたら抜け出そうかな)
冬馬は合コンの会場でそう思いながら料理を確保していた。
(料理はこんなものか。会費からして妥当な感じかな)
会場を見渡してみると、冬馬の目を引く奇麗な人もいたのだが、冬馬は特に目もくれなかった。どうせそういう人は、自分みたいな人は相手にはしないだろうと思い込んでいた。
(やっぱり特に収穫はなしか)
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