魔王、現代に転生する、そこそこ苦労しながらしっかり適応しています。

HATABOU

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 第一章 修行について

新たな生活と女子力

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 ぜぇぜぇ
 息が切れる、体が軋み、肺の酸素不足で痛む、心臓激しく連続収縮する。
 足がふらつきうまく上がらない。
 足裏も慣れない走りで痛かった。
 体の限界を感じてペースがゆっくりと下がっていく。

 その瞬間、

「はーいペース落とさない、もっとできる、キミならもっとできる」
「も、もう、ぜえ、ぜぇ、じゅっ…10キロ結構な、はあはあ、ペースで走っている…が…」
 苦痛に関しては生の実感があるので悪くないが、それにしてもはじめての運動でここまで酷使してよいのだろうか、意思とは別に体から軋むような変な音が聞こえてくるが…
「ここで諦めたら試合終了だよ!」
「ぜぇ、ぜぇ、し、試合ってなんだ?」
「言葉のあやよ、それよりももっと早く、もっと!」

 ノエルキャラ変わっていないか?
 し、しかしなぜこんな目にあっているのだろう
 
 ※

 混沌の欠片カオス・ピースとの邂逅から一ヵ月後、我輩はノエルと一緒に生活することになった。
 なぜか意気投合した、ノエルとフカガワと精霊までもついてきており事務所に居座っている。

 我輩いったんすべてを受け入れ我慢するぞ。
 すべては舞殿、サチ、シモダを救うためである。

 混沌の欠片カオス・ピースは見事に三人の存在まで消してしまい、我輩達以外はすべてこの三名の記憶が消えていた。

 記憶だけではなく、コセキなどの記録も消えており、存在そのものが消えているのだ。
 
 我輩、会社を退職し、ノエルとともに事務所で除霊師として働くことになったのだが、まずやらないといけないのは、

 掃除、洗濯、食事、買い物などもろもろの家事である。

 幸いにも家事全般は嫌いじゃないので、ノエルの事務所で整理できていない書類をまとめたり、ほこりのたまった床を拭き掃除したり、水垢のたまったお風呂場をぴかぴかにしたり、冷蔵庫で賞味期限が切れかかっている食べ物を組み合わせて献立を考えたりと色々がんばっている。

 
 フカガワに女子力高いと言われたが、あまりうれしくはない。

 我輩から言わせれば、お前らが雑なのである。

 ノエルなどは小物を買って飾るのは良いが、小物と小物の間にほこりが溜まりやすいので結局掃除の手間が増えるだけである。
 同居して数日経過するが、我輩、家事が忙しく、肝心の修行がおろそかである。
 そろそろ家事の分担を提案したところである。

「家事の分担の前にまず、加藤は弱くなるのが先よ」
「確かに今のままでは、除霊どころではないわ」
 二人の言葉は一理ある、除霊する前に、悪霊どもは我輩が近づくだけですぐに逃げ出すのである。

 ちなみに我輩達もノエルの事務所では手狭ということで都心で3DK、月5万円の格安物件を借りたのだが、そこは相場の四分の一ではあるが、借り手は必ず自殺するという凶悪物件といううわさだった。
 現在は普通に住めている。

 むしろ快適である。

 「はじめて見たわ、悪霊達があわてて逃げ出すところ」愉快そうにフカガワがアイスを食べる。
 「でもそれじゃ、加藤の力は溜まらないのよ」
 我輩の力の元である瘴気を溜めるにも行く先、行く先勝手に浄化されていくので力が溜めようもない。

 「まず弱くなることね、このままだと燃費も悪いし」
 ノエルは我輩にそう命じる。
「うむ、それはまずやらなければならないことだろうな」
 確かに、今の我輩は必要な瘴気に対して存在そのものを維持するのに燃費が悪すぎる、この世界でいえばいくら省エネ運転を心がけてもジェット機で道路を走っているようなものである。

「漏れ出す妖気を抑えるのでも相当なエネルギー使っていますよね」
「ああ、だからこんなに妖気が溢れているんだぁ」
 感心したようにフカガワが頷いた。
「そうなのよ!ハルナちゃん!おかげで護符が勝手に焼けちゃって大変なのよ」
「えーそれ大変、ミズモちゃんもそれで加藤さんに近づけないって嘆いていましたよ」
「それカワイソー!!」

 我輩なぜか意気投合しているノエルとフカガワ、そして奥にいる水の精霊(ミズモというらしい)を遠い目で見守る。

ミズモは奥の部屋でもじもじと我輩を見ているが…
 その姿は、
 短い青い髪の毛にブルーのドレス、目は大きく、くりくりとしており、体つきも筋肉質の褐色でどこかの健康的なイメージだ。
 おい、キャラが変わっているぞ…
「どう?似合っているでしょ、以前のままだとハルナちゃんとキャラ被るから変えてみたの」
 そういう、ノエルも長い髪の毛をポニーテールにまとめている。

 フカガワは相変わらず、長い黒髪で顔を隠したままの幽霊スタイルだ。
 なぜ、人ではなく精霊の方をイメチェンするのか理解に苦しむが突っ込むのはやめておこう。

 女子同士の世界は時々理を超えることがあり、それに異を唱えてはいけないということは身にしみている。

 「最低でも悪霊たちが逃げ出さない位になってほしいわね」
 うむ擬態というやつか
 「弱くなるように特訓よ」
 あまり聞いたことのない概念であるが、我輩努力するぞ。

 その結果、我輩走らされることになった…
 なぜだ?
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