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14 心菜はテンパる

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「そっか」

 立花はにかっと笑った。心菜はほっと息を吐き出して、それからすぐに登校ルートへの戻り道と反対方向に歩き始めた。

「え、ちょっ、久遠どこ行くの?」
「? 学校?」
「逆!ぎゃーく!!」
「ふにゃ!?」
「いや、お前は猫じゃねーだろ!!」

 立花は心菜が方向音痴であることに気がつき、心菜の左手をパシっと握って歩き始めた。心菜はかあっと自分の顔に熱が集まっていくのを感じた。純粋に恥ずかしい。

「あ、そういえば言うの忘れてたけど、スマホ持ってるの先生には黙っといてくれよ?俺、叱られちゃうから」
「分かってる。それに、私のために動いてくれた人にそんなことするほど私は恩知らずじゃない」

 心菜と立花の通う中学校は市立の学校で、未だにスマートフォン、携帯、スマートウォッチ等の持ち込みの許可されていない頭のお堅い学校だ。腰の重い古びた学校とも言う。

「………いいなー、携帯」
「久遠持ってないの?」
「持ってない。だから誰とも連絡先交換してないの」

 心菜はしょげたように下を向いて立花に愚痴った。こんなこと、初めて他人に愚痴る気がする。優奈にさえも愚痴ったことがないはずだ。

「うわー、それはきついな。部活とか大丈夫なのか?」
「先輩はいつも気を使って、私だけ連絡が来やすいようにしてくれてた。今年は………、どうにかするつもり」

 不安になってぎゅっと俯いた。心菜に本当にできるのだろうか。心配ばかりが無駄にどんどんどんどん募っていってしまう。何故ここまで不安になるかというと、心菜が今年度茶道・華道部の部長になってしまったからだ。今年度3年生になる部員が2人しかおらず、しかも心菜じゃない方の部員は、今年度からの飛び入り入部者だ。部長をしろなどという酷なことは言えない。

「久遠は偉いな」
「~~~~~~~~~~ーーーーー………………………っ、」

 頭をぽんぽんと撫でられ、心菜の思考回路はショートを起こしてしまった。手繋ぎ&頭ぽんぽんは卑怯だ。いきなり男の子にされて対応できるものだろうか。いや、できない。少なくとも心菜にはできない。

「て、ててて、手、はなして………………」
「無理」
「あう、………離して」
「だーめ。久遠は手を離したら絶対に迷子になる。あんまり我儘言ったら紐つけるよ?」

 心菜はがっくりと肩を落として、大人しく立花に連れられて歩いて登校した。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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