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15 心揺さぶる音色

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 心菜は立花との朝の出来事の所為で、色々と集中出来ずに過ごすこととなり、気がつけば今日の部活たる華道のお花がいつの間にか生け終わってしまっていた。

「え?」

 そう、本当にぼけーっとしていたら、1日の終わりに近いてしまっていたのだ。

 けれども、手元はちゃんとしていた。真っ赤な薔薇が真ん中に2本鎮座していて、それを支えるように少し枯れ気味竹が伸び伸びと伸びていて、そして淡いデルフォニウムが足元を明るく飾っている。長さも問題無く調和して生けられている。慣れとは怖いものだ。
 心菜は華道の部外講師の先生に生けたお花を見てもらいながら、遠い目をした。

「はい、問題ありません。ちゃんと生けられていますよ。心菜ちゃんは飲み込みがいいですね」
「ありがとうございます」

 三つ指をついて草のお辞儀をする。
 心菜は先生が去ったのを見て、新聞紙に生けたお花を戻していった。剣山から竹がなかなか抜けなくてイラッとしてしまったが、華道は心を落ち着けることが大事だ。心菜は深呼吸をしてから、抜けにくい竹をえいっ!と引っ張った。スポッと抜けて存外気持ちがいい。
 自分が使った器と剣山、はさみを丁寧に仕舞ってとても少ない部員と先生に挨拶をして和室を去った。今日の放課後は用事があるから、あまり遅くなるのはよろしくない。
 待ち合わせの中庭に心菜は気持ち早足で向かう。もう葉桜となってしまった桜の木がゆらゆら揺れるのを見上げ、夏が近づいていることにそっと溜め息を吐く。

 ーーーパンパパパーン!!

 中庭の方から、トランペットの甲高い美しい音色が聞こえた。確か最近人気の音楽なはずだ。青春を謳ったもので、自分達はまだ拙くて、脆くて、足りなくて、小さくて弱いという歌い出しの歌で、心揺さぶられるや救われると大人気な曲だ。
 ちなみに、心菜もこの曲に救われたし、この曲が大好きだ。
 特に、『努力は報われない。誰も認めてくれない』という歌詞に共感している。心菜は何度も何度も挫折を味わってきた。大事なことを失敗した経験はない。けれど、ちょっとやってみたいな、選ばれたいな、認められたいな、そういう思いで努力を重ねたことが報われず、認められなかったことならば何度もある。

「~~~、~~~~~~♪」

 気がつけば、心菜は鼻歌を歌いながら中庭の方へと向かっていた。性格が表れているかのように不器用で、けれども真っ直ぐな音。心菜は心を揺さぶるこの音を、この音楽を、永遠に聴いていたいと、心の底からそう願った。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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