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18 2人で向かう

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 立花の声が聞こえた気がして、心菜はそっと立ち止まって後ろを振り返った。目が悪い心菜には同じ学校の男の子がコチラに走ってきているようにしか見えないが、耳が比較的優れている心菜がとても綺麗な声の持ち主たる立花の声を聞き間違えるはずもない。

「久遠!!」
「ごめんなさい、立花。逸れた」
「いや、目を離した俺の責任だ。ちゃんと手を繋いでおくべきだった」
「あぐっ、」

 心菜は女の子らしからぬ悲鳴をあげて、さっと立花から逃げようとした。だが、立花は2度も追いかけっこをするのはごめんだと言わんばかりに、心菜の手をさっと握った。

「~~~~~~~~~~ーーーーーー…………………っ、」
「ほーら、行くぞー。チョコスイーツ食うんだろ?」
「た、食べる………」

 心菜は痛いくらいに鳴り響いている鼓動落ち着けようと深呼吸をしながら、立花に引っ張られてコンビニへと向かった。けれど、心菜の鼓動がゆっくりになることも、顔の赤みが引くことも結局のところなかった。
 コンビニに着くと、いつもの特徴的な音でお迎えされ、すうっと空気が涼しくなった。汗ばんでいた肌に心地が良い。

「いらっしゃ、お、颯じゃん。いらっしゃい。スイーツ取り置きしてもらってっから、会計にちゃっちゃと来いよ」
「はい、ありがとうございます、先輩」

 ヤンキーみたいな風貌のチャラ男な先輩は、結構整った顔立ちをしている。漫画に出てくるお金がないから必死に働いている、実はとっても優しいお兄ちゃんみたいなキャラっぽい人だ。

「あ、立花。………私、ジュース買っていい?」
「オッケー。会計待っとくから選んで来ていいよー」
「………今日は私の奢りだよ。立花は飲み物要らないの?」
「ーーーいいよ。俺は水筒の水があるし」
「分かった」

 心菜はストレートのペットボトル紅茶を手に取って、レジに向かった。立花は先輩という男と楽しげに会話をしている。心菜にはない人脈だ。

「ごめんなさい、お会計お願いします」
「あいよー。ジュース………、じゃないんだな。紅茶?」
「はい。………甘いお菓子に甘い飲み物は禁句ですから。ストレートの紅茶が1番です」

 心菜は基本スイーツを食べる時、飲み物にも気を使う。美味しいスイーツは美味しい食べ方をしないと勿体無いのだ。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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