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17 心菜は迷子

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 学校の校舎内であればどうにかなったかもしれないが、生憎心菜と立花が学校を出てから5分くらい歩いてしまっている。心菜にはここがどこだか全くもって検討がつかない。

「よし、来た道を戻ろう」

 心菜は気がついていない。
 来た道を戻ろうと言いながら、反対に進み、立花と逸れた方向と反対方向に歩き始めていることに。

▫︎◇▫︎

「つーか、笑いどころじゃねーなー、久遠、お前好き嫌い多すぎって、久遠?」

 その頃、立花颯たちばな そうはやっとのことで心菜が行方不明になってしまっているという、悲惨な事実に気がついた。子供でもあるまいし、迷った地点でちゃんと迎えにくるのを待っているだろうと思った立花颯は、逸れた地点っぽいところまで戻った。が、そこに心菜の姿は無かった。

「チッ、あいつどこ行きやがった?」

 ちょうど犬の散歩をしているおじさんを見つけた立花颯は、なんの躊躇いも無くおじさんに話しかけた。

「すみません。俺と同じ中学の制服着た長い髪の女の子見てませんか?」
「細くて綺麗なお花抱えた美人さんかい?」

 柴犬がへへっと立花颯の足に擦り寄ってきた。
 おじさんは嗜めることもなく穏やかに立花颯に質問を質問で返した。

「そうです、そうです。花抱えてる」
「はっはっはー、フラれたのかい。にいちゃん」
「いや、あいつの方向音痴の度合いを測り間違って逸れました。10秒くらい目を離した隙にふらりと消えたんすよ」
「うわー、それは大変だ。そういえばあの子、『あれー、戻ってるはずのに見たことない風景が見えてる気がするー』って言いながら高ペースで歩いていたよ」

 おじさんの言葉に、立花颯の顔から血の気が引いていった。このおじさんも結構速めのペースで歩いていたが、それより速いとなればもう大分遠くに歩いてしまっているだろう。

「ありがとうございます!こっちですよね?」
「あぁ、頑張って捕まえておあげ」

 ひらひらと手を振ったおじさんにぺこりと頭を下げた立花颯は、心菜の歩いていった方向に全力疾走した。大分暖かくなってきたこともあり、身体中に汗がじっとり湧き上がってきて気持ちが悪いが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
 必死になって走っていると、腰まである長くて少しだけ癖のある黒髪を揺らす、女子にしては高身長の少女の後ろ姿が見えた。

「久遠!!」

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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