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32 それぞれが頼んだもの

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 それから数分間、静かな時間が流れた。心菜が無言でキャラメルフラペチーノを飲んでチョコチップスコーンをむしゃむしゃ食べているからだ。

「………そーいえばさ、みんな何頼んだんだ?」

 こういう時、先陣を切るのは決まって有栖川だ。彼の質問に、みんなで目線を合わせてから自分の飲み物を持ち上げた。

「私は抹茶フラペチーノと抹茶のケーキ」

 優奈が自分のフラペチーノとケーキを持ち上げて言った。目的の品物は満足のいく美味しさだったのか、優奈からは珍しく不満が漏れ出ていない。今回は当たりだったようだ。

「私はキャラメルフラペチーノとチョコチップスコーン」
「俺はバナナラテとシュークリーム」
「俺はブラックコーヒー」
「俺は苺オレフラペチーノとチョコチップスコーン」

 優奈に続いて心菜、有栖川、新谷、立花がそれぞれの品物を紹介した。有栖川は後悔しているように見えたが、実際のところは美味しく飲んでいるようだ。新谷は何故か1人だけとても選択が渋い。
 本当に、ここにいるメンバーは全員の好みがはっきりと分かれている。バラバラで共通点もものすっごく少ないのに、調和して仲良くできている。
 心菜にはそれが不思議で仕方がなかった。けれど、この空間の居心地はびっくりするくらいにとても良かった。全て、心菜をこの空間に招いてくれた優奈のお陰だ。

「そういえば、立花これが欲しいんだよね?」
「お、サンキュー」

 心菜は黒い校章の描いてある鞄から、社会と理科のノートを取り出して、立花に手渡した。字が汚かったり、自分によって字形が異なっているのがちょっと、いや、だいぶ恥ずかしいが、約束は約束だ。心菜は潔く恥ずかしい思いをすることを避けるということを諦めたのだ。

「スッゲー!!めっちゃ字が綺麗!!それになんでこんなに分かりやすいんだ!?ほんっとうにスゲー!!」
「でしょでしょ!!ここなのノートってすっごいんだよ!!私、ここなのノート借りるようになってから、テストの点が20点上がったんだ!!」
「………ゆーなちゃんの元々の点が酷すぎただけだと思うよ」

 興奮気味で捲し立てる優奈に、心菜は冷静にストップをかけた。というか、このノートを使うだけで誰でも20点テストの点が上がるのだったら、みんなこのノートを欲しがる。1番大切なのはどれだけ勉強するかだ。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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