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105 お勉強会を

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 席替えからわずか数日後、図書館にある自習机のある空間ではお葬式のような空気が発せられていた。理由は簡単、もうすぐ2学期中間テストがあるからだ。

「こらっ、ゆーなちゃん!!寝ちゃダメ」
「ふげー、」

 かれこれもう早くも2時間、いつも遊んでいる6人組でお勉強会を行なっていた。今日は珍しく、門川も参加していて、普段よりも勉強が捗っていた。

「久遠、そこ違うよ。そこはまだ今の段階では標本調査だよ」

 教科書をコツンと指さされて慌てて答えを確認した心菜は、目を見開いた。

「うわっ、本当だ。教えてくれてありがとう、門川」
「どういたしまして。その問題、引っかかるよね………」
「そうだね。難しい。テレビの視聴率なんて、今どき全数調査出来そうなのに………」

 塾でも引っかかってしまったことを思い出した心菜は、不服から頬をぷくぅーっと膨らませた。今心菜が解いているのは統計の問題で、標本調査と全数調査、どちらに分けるのが最適かというのを求めるという問題だ。えっちらおっちら解いてはいるが、正直に言って、心菜はこの問題が少しだけ苦手かもしれない。よく引っかかる。そもそも、全部全数調査にしてしまえばいいのではないかとしか思えない。今どきネット社会ならば、そのくらいのことならばできる気がするのだ。

「はははっ、できていたとしても今のところは標本調査としての扱いだよ」
「わかってるって」

 心菜はぶーぶーと文句を言いながらどんどん問題を片付けていく。2学期中間テストまで2週間、1週間前に交差発表があるから、出来るだけそれまでに必要なお勉強を終わらせておきたい心菜は、カリカリとまたシャープペンシルを走らせる。くるくると浮き足立ってしまっている文字を不服に眺めながらも、目の前に彼が座っているというだけで鼓動が高鳴ってしまっている心菜は、それを必死になって隠すために問題をひたすらに解き続ける。

「………久遠、そこ間違ってる」

 程よい低音のボイスに、気だるげな声の出し方。普段の元気さとのギャップで左胸がちょっとだけキュンとなった心菜は、ぷいっと視線を横にずらして彼のことを柔らかく睨みつける。キツく睨めなかったのは悔しいが、できなかったものは仕方がない。

「………言われなくてもちゃんと分かってるわよ。ばーか」

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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