【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫

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29 笑み

「ねぇ。馬鹿クソゴミ屑虫野郎様、ルーラー公爵令嬢はどのような方だったの?」
「あぁん?キャサリン?クソ真面目な馬鹿だよ。バーカ。」
「へぇー、そうなんですね。」

 メアリーの、怒りに染まり切った燃えているように感じられるにも関わらず冷たい瞳が、またもや細く鋭利になった。

「あなたよりもずっと賢い方だったのですわね。」
「はあ!?んな訳ないだろう!!アイツは馬鹿だ。俺様よりも圧倒的に大馬鹿なんだ!!」

 ガイセルの紡いだ必死な言葉には、恨み、怨み、憎しみの裏に、深い憧れと尊敬、妬み、嫉みが見え隠れしていた。

「私に嘘をついたって無駄ですよ?なんと言っても、私は伯爵令嬢である前に、人を見抜く力を必要とする生粋の商人であるのですから。」
「………なにが言いたい?」

 ガイセルは本当にわからないのか眉を僅かに寄せた。

「周りの人間の瞳に映る虚像は騙せても、私の瞳に映る実像は騙すことができないということです。」
「はん!勝手に言ってろ!!」
「言質は取らせていただきましたし、そうさせていただきますわね。」

 メアリーは闇に染まった完璧な作り笑いを、尚の事深くした。

 そして、メアリーの美しすぎる笑みを見てガイセルは、何故か背中に突き刺すような、這い上がるような、固められるような、飲み込まれるような、殴られるような、そんななんとも形容し難い、ゾッとするような悪寒が走り抜けた。

 恐怖、戦慄、暗澹あんたん、慄き、竦然しょうぜん

 ガイセルの心の全ては、いつの間にか闇と恐怖に包まれていた。

*******************

読んでいただきありがとうございます😭😊🥰

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