上 下
6 / 19

1人目のお客様 6

しおりを挟む
「それで?私はさっさと帰りたいから質問したい事を効率よく順序を立てて話して欲しいのだけれど?」

 どんなに困った状況下に追い込まれても少女は尊大な態度を崩さないようである。

「はぁ、そなたは今の自分の状態を理解しておるのか?」

「? 理解しているけれどそれが何なのかしら。」

「……鋼のように硬いメンタルだな……。」

 揺尾は呆れたような溜め息のようなどちらか検討もつかない声音で呟きながらじとーっとした目を少女に向けた。

「……で?もう質問は終わりという解釈でいいのかしら?それならさっさと帰してくれる?」

 少女のメンタルは鋼よりも強いのではないかと思えるほどに大胆で堂々とした発言だった。だが、少女はやはりお人形のような無表情のままだった。

「うむ……、まず名を名乗れ。」

「……うた。……みやがわ うたよ……。」

「みやがわ うた、か……。何という漢字を書くのだ?」

「……お宮の宮に川で宮川、うたはみやびに楽器の楽で雅楽うた。これで宮川みやがわ 雅楽うた、ここまで丁寧に説明して差し上げたから流石に分ったかしら。」

 少女は、否、雅楽はそう言って少し目を細めた。

「……そなたは我を馬鹿にしておるのか?」

「そんな訳ありませんわ、偉大なるお狐様。」

 雅楽のあまりの棒読み具合にお狐様こと揺尾は不快感を拭うことができず、顰めっ面を抑えることができなかった。
 雅楽は無表情のままだったが、流石に自分が言い過ぎて不快にさせてしまった揺尾のことが不憫に見えたのか、話題を転換した。

「……そういえば、“ようび”という名は何という漢字を書くのかしら。」

「……揺れる尾と書いて揺尾だ。
 次の質問に行くぞ。これがまぁ待ちに待っていた大本命の質問だな。何故そなたは我を見て驚かなかった?」

 勿体ぶっていた質問をようやく揺尾は話した。
 ふっさりふっさりと大きくて立派で綺麗な尻尾をゆらしながら。

「……私の願いを思い出してみれば簡単に分かると思うけれど?」

「そなたの、願い?」

「えぇ、頭のよろしいあなたなら簡単だと思うけれど?」

「…… 『死んだ生き物と話す力を頂戴。』だったか?」

「えぇ、正確に言うと『……そうね、じゃあ死んだ生き物と話す力を頂戴。1度限りで構わないわ。』よ。」

 雅楽は無表情な顔に口だけ挑戦的な笑みを浮かべて揺尾を見やった。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

やっと、やっと少女のお名前出せましたー!!
お話しを創作するにあたり雅楽うたちゃんのお名前は1番初めに考えていたので発表できてスッキリしました!!

しおりを挟む

処理中です...