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自分がディスられていることにも気づかない王太子は、マリンソフィアの境遇に嘆いた。その境遇を作り出した一端たる男がよくいうものだと感心しながらも、クラリッサはその感情を決して表に出さない。静かに微笑み続けるクラリッサは、大層美しかった。
「王太子殿下、ソフィアさまは立場という立場を嫌っておいでですから、王太子妃というのはおそらく嫌がるかと思います。このお店も、慣れるまでは店長などしたくないとよく駄々を捏ねていたのですよ」
「ほう、………立場を嫌う女もいるのだな」
「えぇ、いらっしゃいます」
「まさにこの俺にピッタリだな!!」
立場を嫌っていると聞いた途端に目が輝いた王太子に若干引きながらも、全く求婚を取り消す気のない王太子に、クラリッサは辟易としてくる。話が通じないとはまさにこのことだろう。自分が嫌われていると暗に伝えているのに、懲りるどころか燃えて来ている。本格的に、これは殺してしまったほうが良いのだろうか。
クラリッサは本気で悩んだ。
▫︎◇▫︎
作業室にて、布を巻く芯を3本ほど手に持ったマリンソフィアは深く深呼吸をして心を何度も落ち着けていた。これからが勝負の時間だ。これから、マリンソフィアが受けた屈辱を王太子に帰すための仕込みを始める。だから、1番頑張らないといけないのだ。
「ねえ、わたくしに力を貸し、ネックレス」
シャラシャラとネックレスを撫でると、だんだん心が凪いでくる。
マリンソフィアはぱっと顔を上げて完璧な淑女の仮面を被る。
さあ、戦いの始まりだ。
マリンソフィアは躊躇いもなく下階へと降りて、応接室へと入室する。そして、王太子に向けてとびっきりの満面の笑顔を向ける。そう、今、マリンソフィアは人生最高の作り笑いを浮かべているのだ。
「殿下、わたくし、とびっきりの布を持って来ましたの。この布は、『自分の地位にふさわしくない者や、手におえないばか者には見えない布』ですわ。王太子殿下はとーってもご立派なお方ですから、当然この布の素晴らしさがお分かりいただけますわよね?」
マリンソフィアは、愛読書『愚かで滑稽な裸の王さま』の台詞を丸々暗唱した。多少のアレンジは加えているが、根本部分は変わらない。
マリンソフィアは、王太子が騙されることを心の底から願っていた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「王太子殿下、ソフィアさまは立場という立場を嫌っておいでですから、王太子妃というのはおそらく嫌がるかと思います。このお店も、慣れるまでは店長などしたくないとよく駄々を捏ねていたのですよ」
「ほう、………立場を嫌う女もいるのだな」
「えぇ、いらっしゃいます」
「まさにこの俺にピッタリだな!!」
立場を嫌っていると聞いた途端に目が輝いた王太子に若干引きながらも、全く求婚を取り消す気のない王太子に、クラリッサは辟易としてくる。話が通じないとはまさにこのことだろう。自分が嫌われていると暗に伝えているのに、懲りるどころか燃えて来ている。本格的に、これは殺してしまったほうが良いのだろうか。
クラリッサは本気で悩んだ。
▫︎◇▫︎
作業室にて、布を巻く芯を3本ほど手に持ったマリンソフィアは深く深呼吸をして心を何度も落ち着けていた。これからが勝負の時間だ。これから、マリンソフィアが受けた屈辱を王太子に帰すための仕込みを始める。だから、1番頑張らないといけないのだ。
「ねえ、わたくしに力を貸し、ネックレス」
シャラシャラとネックレスを撫でると、だんだん心が凪いでくる。
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さあ、戦いの始まりだ。
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読んでいただきありがとうございます😊😊😊
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