1 / 14
春、出逢い。
しおりを挟む
春、小学6年生。
私、永瀬 凜桜は桜を見ていた。
『凜とした桜のように、
芯のある強くたくましく生きるように、
知性のある人に育ちますように』
それが私の名前の由来。
春生まれの私は、桜が満開のときに生まれた。
そう、この桜。
小さい頃、
「これが凜桜の名前の桜だよ」
とお父さんに言われた気がする。
病院近くの並木道。
当たり前の景色。
当たり前の今日。
でも、私にとっては特別な景色で、
毎日が特別な今日なんだ。
「凜桜ー、ごめん!
あれ、音たちは?」
そう言って走ってきた、
私の家のお向かいさんのトランペッターさんの
娘さん、冬獺 颯季。
脚が長くて、髪は肩より少し上のウェーブヘアー。
音楽の才能がすごい、同い年の女の子。
「音なら今奏と来てるはずだよ、あっ、ほら」
音と奏というのは同じく幼なじみの、
花野 音、花野 奏のこと。
二卵性の双子で、音が男子、奏が女子。
音はベリーショート、奏は鎖骨までの
ストレートヘアー。
2人とも顔はそっくりだけど、全く性格が似てない。
「ごめん、遅れて。」
「いいよ、いこ。」
今日から新学期。
小学校最後の学年、6年生が始まる。
「あ、そう言えば、転校生来るんでしょ?
…何だっけ、ボーン吹くんだっけ。」
「違ぇよ、アルトだよ。」
「あっ、なんかそんなこと
野村先生言ってたね。」
私たちは学校のブラスバンド部に
所属している。
私はちなみにテナー。
あの低くて綺麗な音に惚れて。
「凜桜、なんか詳しいこと聞いてないの?
パーリーでしょ?」
パーリーっていうのは、
パートリーダーの略。
サックスパートの六年生は3人だったけど、
アルトの子が転校しちゃったから、
バリサクのさなちゃんだけ。
さなちゃんは低音パートにもなって、
忙しいと思うから、
私がやることになったんだ。
本当はアルトの子がやる予定だったけど、
3月最終日にいきなり転校しますって
言い出したから、全員びっくりした。
「で、なんか聞いてないの?」
「うん、全くと言っていいほど。」
そう、顧問の野村先生からはほんとに何も
言われてなくて。
「あーあ、もう学校かぁ。
毎日吹いて帰るだけでいいのに。」
そう颯季が言う。
すると、颯季は立ち止まって、
真剣な目でこっちを見た。
「なんかあったら、言いなよ?
私も音も奏も味方だから、パーリーさん。」
そう言って、颯季は私の肩をポンっと押した。
笑いながら、喋って歩いてると、、
「うぉっ」
え。
目の前の映像がスローモーションになる。
私の左目の縁にはトラックがあった。
「危ないっっ!」
後ろから手が伸びる。
ドンッ
「ったぁ…」
「凜桜!大丈夫!?」
下を見ると、
下敷きとなっていた男の子。
あっ
「テナーは!?」
振り向くと、音が手でグッドポーズ。
キャッチ済みだった。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
すると、男の子はむくりと起き上がる。
見たことのない顔だった。
この辺、人口少ないから、
すれ違う人とはほとんど顔見知りなんだけど。
それに、同い年ぐらいだから尚更。
綺麗な顔で、見惚れてしまうような顔。
長い脚。白い肌。
「大丈夫。
怪我は大丈夫なの?」
そう心配された。
「あ、はい…
ごめんなさい、わたしがよそ見してたので…」
「大丈夫だよ。」
「あの、何かお詫びを…」
そう私が焦りながら言うと、
「なら、道案内、お願いしてもいい?」
男の子は、綺麗な眉を上げて、ニッコリ笑った。
「音、今何時?」
そう聞くと、時計を見た音は言った。
「8時前。
楽器倉庫に20分くらいに
付いてたら大丈夫。」
「どこまで行かれるんですか?」
「春日小。」
そう周りをキョロキョロ見渡しながら言った。
「あ、わたしと一緒だ。」
「そうと決まれば行こ!」
そう颯季が言った。
私は、音に預けてたテナーを返して貰って、
さっきの男の子のところへ行く。
「あれ、それって、テナー?
君もサックス吹くの?」
「え、あ、はい。」
「そうだ、敬語やめよ。
俺、そんなに歳変わらないと思うし」
と、会話がリードされていく。
「テナーは吹き始めて何年目ぐらい?」
「4年生から…
最初はアルトだったんだけど、
テナーになって…」
「へぇ、あ、彼らも?」
そう言いながら、後ろを見る。
「あ、うん…。
右から、花野 音。
トロンボーン担当。
冬獺 颯季、トランペット、
花野 奏、フルート、ピッコロ。」
「へぇ、すげ。
あ、名前、言ってなかったね、
俺、霧咲 涼。
朝霧の霧に咲く、りょうは涼しいって字。」
名前まで綺麗だなぁ、
霧咲くん。
「君は?」
男の子に君って言われたの初めてかも。
「私は、
永瀬凜桜。
苗字は、
永遠の永に、浅瀬の瀬。
名前の方は、
ノギの方の凜に、桜って字。」
「綺麗な名前だね、
よろしく、凜桜。」
「よろしくね、
あっ、着いたよ?」
気がつくと、校門前。
「じゃあ、ここでー。」
そう颯季が言うと、
彼はひらひらと手を振って、
「またねー」
と言った。
これが、彼との出逢いだった。
私、永瀬 凜桜は桜を見ていた。
『凜とした桜のように、
芯のある強くたくましく生きるように、
知性のある人に育ちますように』
それが私の名前の由来。
春生まれの私は、桜が満開のときに生まれた。
そう、この桜。
小さい頃、
「これが凜桜の名前の桜だよ」
とお父さんに言われた気がする。
病院近くの並木道。
当たり前の景色。
当たり前の今日。
でも、私にとっては特別な景色で、
毎日が特別な今日なんだ。
「凜桜ー、ごめん!
あれ、音たちは?」
そう言って走ってきた、
私の家のお向かいさんのトランペッターさんの
娘さん、冬獺 颯季。
脚が長くて、髪は肩より少し上のウェーブヘアー。
音楽の才能がすごい、同い年の女の子。
「音なら今奏と来てるはずだよ、あっ、ほら」
音と奏というのは同じく幼なじみの、
花野 音、花野 奏のこと。
二卵性の双子で、音が男子、奏が女子。
音はベリーショート、奏は鎖骨までの
ストレートヘアー。
2人とも顔はそっくりだけど、全く性格が似てない。
「ごめん、遅れて。」
「いいよ、いこ。」
今日から新学期。
小学校最後の学年、6年生が始まる。
「あ、そう言えば、転校生来るんでしょ?
…何だっけ、ボーン吹くんだっけ。」
「違ぇよ、アルトだよ。」
「あっ、なんかそんなこと
野村先生言ってたね。」
私たちは学校のブラスバンド部に
所属している。
私はちなみにテナー。
あの低くて綺麗な音に惚れて。
「凜桜、なんか詳しいこと聞いてないの?
パーリーでしょ?」
パーリーっていうのは、
パートリーダーの略。
サックスパートの六年生は3人だったけど、
アルトの子が転校しちゃったから、
バリサクのさなちゃんだけ。
さなちゃんは低音パートにもなって、
忙しいと思うから、
私がやることになったんだ。
本当はアルトの子がやる予定だったけど、
3月最終日にいきなり転校しますって
言い出したから、全員びっくりした。
「で、なんか聞いてないの?」
「うん、全くと言っていいほど。」
そう、顧問の野村先生からはほんとに何も
言われてなくて。
「あーあ、もう学校かぁ。
毎日吹いて帰るだけでいいのに。」
そう颯季が言う。
すると、颯季は立ち止まって、
真剣な目でこっちを見た。
「なんかあったら、言いなよ?
私も音も奏も味方だから、パーリーさん。」
そう言って、颯季は私の肩をポンっと押した。
笑いながら、喋って歩いてると、、
「うぉっ」
え。
目の前の映像がスローモーションになる。
私の左目の縁にはトラックがあった。
「危ないっっ!」
後ろから手が伸びる。
ドンッ
「ったぁ…」
「凜桜!大丈夫!?」
下を見ると、
下敷きとなっていた男の子。
あっ
「テナーは!?」
振り向くと、音が手でグッドポーズ。
キャッチ済みだった。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
すると、男の子はむくりと起き上がる。
見たことのない顔だった。
この辺、人口少ないから、
すれ違う人とはほとんど顔見知りなんだけど。
それに、同い年ぐらいだから尚更。
綺麗な顔で、見惚れてしまうような顔。
長い脚。白い肌。
「大丈夫。
怪我は大丈夫なの?」
そう心配された。
「あ、はい…
ごめんなさい、わたしがよそ見してたので…」
「大丈夫だよ。」
「あの、何かお詫びを…」
そう私が焦りながら言うと、
「なら、道案内、お願いしてもいい?」
男の子は、綺麗な眉を上げて、ニッコリ笑った。
「音、今何時?」
そう聞くと、時計を見た音は言った。
「8時前。
楽器倉庫に20分くらいに
付いてたら大丈夫。」
「どこまで行かれるんですか?」
「春日小。」
そう周りをキョロキョロ見渡しながら言った。
「あ、わたしと一緒だ。」
「そうと決まれば行こ!」
そう颯季が言った。
私は、音に預けてたテナーを返して貰って、
さっきの男の子のところへ行く。
「あれ、それって、テナー?
君もサックス吹くの?」
「え、あ、はい。」
「そうだ、敬語やめよ。
俺、そんなに歳変わらないと思うし」
と、会話がリードされていく。
「テナーは吹き始めて何年目ぐらい?」
「4年生から…
最初はアルトだったんだけど、
テナーになって…」
「へぇ、あ、彼らも?」
そう言いながら、後ろを見る。
「あ、うん…。
右から、花野 音。
トロンボーン担当。
冬獺 颯季、トランペット、
花野 奏、フルート、ピッコロ。」
「へぇ、すげ。
あ、名前、言ってなかったね、
俺、霧咲 涼。
朝霧の霧に咲く、りょうは涼しいって字。」
名前まで綺麗だなぁ、
霧咲くん。
「君は?」
男の子に君って言われたの初めてかも。
「私は、
永瀬凜桜。
苗字は、
永遠の永に、浅瀬の瀬。
名前の方は、
ノギの方の凜に、桜って字。」
「綺麗な名前だね、
よろしく、凜桜。」
「よろしくね、
あっ、着いたよ?」
気がつくと、校門前。
「じゃあ、ここでー。」
そう颯季が言うと、
彼はひらひらと手を振って、
「またねー」
と言った。
これが、彼との出逢いだった。
0
あなたにおすすめの小説
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる