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4話 手紙
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「お嬢様、手紙が届きましたよ」
ある日、自室にて魔法体系の勉強をしていたところに、シエルがローウェンからわたしに宛てられた手紙が届けられる。
ローウェンの家であるレキシア伯爵家の朱印で封をされた外見を破り、早速中身を見る。
「これって、デートの約束よね」
埋め合わせをするように強く言った彼はようやくわたしの想いを受けてくれたらしい。
「ようやくだわ」
「ずいぶん待たされましたからね」
勉強が煮詰まっていたので休憩がてら、手紙に書いてある文面に隅から隅まで目を通す。
『リエナ、待たせてごめん。近いうちに隣国のレストランで食事をしないかい?』
高等教育を受けていると思わせるような文面で、彼からの誘い文句が綴られている。
ここのところレイナに傾倒していた彼だけど、反省してくれる余地があるだけ全然許せる。
わたしは彼に多少失望していた。
恋人を放って、さらにはその血縁者に欲情したように惚けた顔で遊び歩くなんて正気を疑う光景を見せ付けられては、百年の恋も冷めてしまう。
どうにか、わたしの評価は彼の反省により底に落ちずにぎりぎりで踏み止まる。
「見限っても誰も咎めませんよ。彼はすでに散々なことをしていますから」
わたしの勉強を見ている使用人も一緒に、シエラは彼の仕打ちに苦しむわたしに彼との絶縁を薦める。
「駄目よ。彼はこんな生意気なわたしに唯一、プロポーズしてくれた人よ」
わたしは貴族学院時代、美人だとは評されながらもモテることは無かった。
各国から選りすぐりの有望株が来るような学校には、当然女受けが良さそうな美男子がたくさんいた。ローウェンもその一人に数えられる。
とにかく、わたしはモテなかった。
彼ら曰く目付きが凶悪であり、近寄り難い空気を醸し出しているそうだ。
生みの親であるわたしの両親からも指摘されたことで、わたし自身も最初は笑い方を覚えようとしたけど逆効果だったのが記憶に新しい。
見る人全員が化け物と罵りながら逃げていったのを覚えている。
『可愛い、顔だね』
そんな中で、唯一ローウェンだけがわたしの顔を受け入れ、後々わたしに告白してくれた。
わたしは彼に酷いことをされても多少は許せる。そんな度量というか、未練があった。
「彼を見捨てたら、二度とわたしを好きになる人なんていないかもしれない」
「そんなことはありませんよ」
顔をしかめて反論するシエルに、わたしは首を横に振る。
これを逃したらもう後は無い。
根拠に欠けるわたしの将来における暗雲を浮かべるたびに、強迫観念が棘となって胸を突き刺す。
「いえ、これはわたしに与えられた最後のチャンスなの」
わたしは自分を悲観的に見ることしかできない。
そこから脱却できない限り、唯一の光であるローウェンに縋り付くことでしか、自分の明るい行先を見出せない。
「私もできるだけ手を貸しますけど、くれぐれもあの人を信じ過ぎないでくださいね」
「ええ、そこに関しては、わたしも揺らいでいるもの」
不安と期待が胸中を渦巻き、わたしから冷静さを奪う。
レイナに奪われた幸せを取り返すべく、わたしはその日を逆転の日と定め、自分の想いの丈をぶつける準備を整えていく。
ある日、自室にて魔法体系の勉強をしていたところに、シエルがローウェンからわたしに宛てられた手紙が届けられる。
ローウェンの家であるレキシア伯爵家の朱印で封をされた外見を破り、早速中身を見る。
「これって、デートの約束よね」
埋め合わせをするように強く言った彼はようやくわたしの想いを受けてくれたらしい。
「ようやくだわ」
「ずいぶん待たされましたからね」
勉強が煮詰まっていたので休憩がてら、手紙に書いてある文面に隅から隅まで目を通す。
『リエナ、待たせてごめん。近いうちに隣国のレストランで食事をしないかい?』
高等教育を受けていると思わせるような文面で、彼からの誘い文句が綴られている。
ここのところレイナに傾倒していた彼だけど、反省してくれる余地があるだけ全然許せる。
わたしは彼に多少失望していた。
恋人を放って、さらにはその血縁者に欲情したように惚けた顔で遊び歩くなんて正気を疑う光景を見せ付けられては、百年の恋も冷めてしまう。
どうにか、わたしの評価は彼の反省により底に落ちずにぎりぎりで踏み止まる。
「見限っても誰も咎めませんよ。彼はすでに散々なことをしていますから」
わたしの勉強を見ている使用人も一緒に、シエラは彼の仕打ちに苦しむわたしに彼との絶縁を薦める。
「駄目よ。彼はこんな生意気なわたしに唯一、プロポーズしてくれた人よ」
わたしは貴族学院時代、美人だとは評されながらもモテることは無かった。
各国から選りすぐりの有望株が来るような学校には、当然女受けが良さそうな美男子がたくさんいた。ローウェンもその一人に数えられる。
とにかく、わたしはモテなかった。
彼ら曰く目付きが凶悪であり、近寄り難い空気を醸し出しているそうだ。
生みの親であるわたしの両親からも指摘されたことで、わたし自身も最初は笑い方を覚えようとしたけど逆効果だったのが記憶に新しい。
見る人全員が化け物と罵りながら逃げていったのを覚えている。
『可愛い、顔だね』
そんな中で、唯一ローウェンだけがわたしの顔を受け入れ、後々わたしに告白してくれた。
わたしは彼に酷いことをされても多少は許せる。そんな度量というか、未練があった。
「彼を見捨てたら、二度とわたしを好きになる人なんていないかもしれない」
「そんなことはありませんよ」
顔をしかめて反論するシエルに、わたしは首を横に振る。
これを逃したらもう後は無い。
根拠に欠けるわたしの将来における暗雲を浮かべるたびに、強迫観念が棘となって胸を突き刺す。
「いえ、これはわたしに与えられた最後のチャンスなの」
わたしは自分を悲観的に見ることしかできない。
そこから脱却できない限り、唯一の光であるローウェンに縋り付くことでしか、自分の明るい行先を見出せない。
「私もできるだけ手を貸しますけど、くれぐれもあの人を信じ過ぎないでくださいね」
「ええ、そこに関しては、わたしも揺らいでいるもの」
不安と期待が胸中を渦巻き、わたしから冷静さを奪う。
レイナに奪われた幸せを取り返すべく、わたしはその日を逆転の日と定め、自分の想いの丈をぶつける準備を整えていく。
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