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記憶のなかを漂う
しおりを挟む息絶える寸前、俺の中の記憶がよみがえっていく。
閉じ込めた過去と過去の自分、そして、のあとの幸せな思い出が。
たしか、小さい頃、周りに望まれる自分を演じてきた自分に「そのままの君でいいんだよ」って言ってくれたのものあだった。
両親が離婚したときだって俺を支えてくれていたのはのあ。
母親の再婚相手に暴力を振るわれたときだって、母親が再婚相手の見方をしたときだって、俺を支えてくれて、俺を肯定してくれていたのはのあだった。
あぁ、思えばいつものあは俺を気にしてくれたような気がする。
癌だって分かったときだって自分が一番辛い筈なのに、泣く俺の肩を叩いて、「大丈夫だよ」って気丈に笑ってくれた。
癌が進行してからも、本当はすっごくすっごくキツい筈なのに、「死にたい」なんて一言も言わなかったし、俺の前で弱音を吐くこともなかった。
いつも、いつも、………気丈に笑っていた。
いつの間にか俺は甘えてしまっていたんだ。
のあの強さに………のあのっ…優しさに………。
のあがいなくなってから気付くなんて俺はどれだけバカなんだろう。
もっと、もっと、のあに寄り添っていれば、のあはもしかしたら、まだ、あとちょっとだけ、生きれたかもしれない。
そもそも、のあの側に俺がずっといれば、癌だってすぐに気付けたかもしれない。
だって、もう気付いたときにはっ、再会したときにはっ、治らないくらい進行していたのだから。
のあ、のあ、のあ、のあ、
来世でまた会えたのなら、今度は俺がのあを………。
のあ、のあ、のあ、のあ、話足りないんだ。
のあに話したいことも伝えたいことも本当はもっともっと沢山あったんだよ。
『大好き。のあがのあの元カレをまだ思っているのだとしても俺はのあの事が大好きだから。
元カレの言ったことを気にしなくていいよ。
のあは、今ののあのままで素敵だから。』
なんどもなんども考えた告白の言葉。
治らないと分かっていても、治ることをただひたすらに信じて、治ったら言おうとしていた言葉。
この言葉をのあに伝えていれば良かった。
叶わないと分かっていたとしても………。
あぁ、のあ、大好きだよ。
この世界の誰もが君の敵になったとしても俺はのあの味方だから。
なんて。
心のなかで思ったって仕方がないか………。
過去の自分への憤り、諦めと同時に、俺の視界が暗闇に暗転した。
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