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2nd フェーズ 集

No.26 吸血鬼とご対面

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ある日の夜、チザキは人影のない場所に立っていた。

しばらく待っていると、所々擦り傷や細かい傷がある車が現れる。
修理をするのが面倒で放置しているのだ、取引をした時からずっとあの車だ。一度車について修理をしないのか尋ねた事がある、だが相手は車なんて動けばいいと言った。今自分が取引している相手はそういう人間だ。

車が彼女の前で停車すると扉が開く。
扉が開いた瞬間モクモクと白い煙が中から溢れる。

手で鼻を覆い嫌な顔をするチザキ。

「いやぁごめんごめん、煙草買ってたら少し遅れちゃった。本当タバコって高いよねぇ~それに売ってる場所もすげぇ限られてるから買うのが一苦労。世間様はそんなに喫煙者をいじめて楽しいかねぇ」
煙草を咥えながら一人の女性が車から降りてくる。

ふぅーと顔を横に向けて煙を吐く。
だが煙はチザキの方にしっかり届いている。
配慮しているアピールをするだけのただの自己満足の行為。

「ほら、いつものを頂戴」
なるべくこの女性と関わる時間を短くしたいチザキは、すぐに懐から封筒を渡す。

「はいはい、毎度あり」
封筒を受け取った女性は中を確認する。

「今時現金って思ったけどやり取りがバレにくいのは良いね」
女性は封筒を尻ポケットに押し込み、車の後ろに回った。

「うちの病院もレトロでさ、つーか時代遅れ?アンドロイドの従業員全然いないの。アンドロイド買わないならその分私たちの給料上げてくれたらいいのにねぇ」

どうでもよい話をする女性にイライラしている様子のチザキ。

「まあ、そのお陰でこんなビジネスも出来るんだけどさ」
車のトランクからバッグを取り出した女性はチザキにそれを渡す。

「これだけ?」
受け取ったチザキは受け取った際、その重さでいつもに比べて軽すぎる事に気付く。

「しょうがないだろ?最近なんか院長が変わってさ、あんなしみったれた病院なのに管理体制を強化するとか言い始めて。それが限界だ」
女性は煙草を吸って煙を吐く。

「それにどうやらこれに関しても本格的に調査をするって言い始めてさ、だからこの商売も今日限りだ。バレたらそくクビ、金の為にやって無職になったらバカだしな」

彼女のその発言にチザキが質問をする。

「それどういう意味?止めたいって事?」
「ああ、この副業が無くなるのは痛いけどな、しょうがないだろ?」
チザキは相手に近寄り女性の首を掴む。

「っ、何すんだよッ!」
そのまま車に叩きつけた。

「わ、悪かったって、いつもより少ないからその分の金は返すからさ」
相手の首を絞めるチザキ。

「金なんてどうでもいい!それより血は?!私が生きて行くには必要なの!」
首を絞められ上手く話せない相手は口をパクパクさせているだけだ。

この間にもチザキの喉は渇いて行く、飢えが徐々に表に出てくる。

そんな彼女の顔は相手に余程恐ろしく映ったのか、相手は怯えた様子で涙を流していた。

「何その目?私が化物だって言いたいわけ?私をそんな目でみるな!!」

チザキは息が荒くなり全身に異様なほど力が入っていく感覚がした。

次に彼女が我に返った時は自身は血だらけになっていた。
一瞬焦り怪我をしていないか体中を触り出血箇所を探る。
しかし彼女はその血が自分のではない事にすぐに気づいた。

口の中に血の味がしたのだ。

彼女の目の前で恐怖に歪んだ顔で女性が倒れていた。首からは微かに残った血が垂れており、相当量の血を失ったであろうその体はしおれていた。

周囲の地面や車に血の跡が、彼女はようやく自分が何をしたのかを理解する。

自分がやったのだ、本物の化物のように。
化物のように相手を殺してしまったのだ。

動揺しながらも彼女はすぐに鞄を持ちその場を離れた。

これがチザキアキナが行った最初の殺人である。



移動する車の中でキラキラと十字架のネックレスを光らせるユキチカ。

「レッツゴー!ヴァンパイアバスターズ!」
「ちょっと眩しい、ユキチカ」
「はい……」
ポケットからスイッチを取り出して十字架の光を消す。

「はぁ、結局連れて行くことになっちまった!」

ため息をつきながらハンドルを握るキビ。

「まあなんとなく、この結果は見えていましたが」

別の車からコウノが無線で話す。

今回はユキチカ、ウルル、ジーナそしてシャーロットの4人はキビの車に乗っている。

後ろでウルルがゴソゴソと鞄を取り出して何か漁っている。
そしてグローブを取り出した。

「はい、ジーナ様こちらをどうぞ」
ウルルはそのグローブをジーナに渡す。

「おお!!グローブ!おーめっちゃ馴染む!」
「ご希望通り、防刃及び防炎性の高い素材を使ったグローブです。本当に追加のプロテクターは良かったのですか?」

ジーナは嬉しそうにグローブをはめて頷いた。

「うん!拳の硬さなら自信あるから大丈夫!」

「私もコロちゃんズがいるから、今回はちゃんとできるよ」

後ろに座っている3人のやり取りをバックミラー越しに見るキビ。

「みんなもやる気満々だな。まあ君たちの能力の高さは知っているけどさ」

「僕もひっさつアイテムあるから!」
ユキチカもそう言ってアピールする。


車を走らせること数十分、車は目的の館に到着した。

「さーて、到着っと。それじゃあ私達は正面から突入する。他は犯人が逃亡しないように館を包囲。相手は常人離れした身体能力を有している可能性が高い、丸腰だったとしても最後まで気を抜くなよ」

キビは無線で部下にそう伝える。

「よし!行くぞ!気ぃ引き締めてけ!!」
「はい!」
装備を確認し終えてキビとコウノは意気込む。

「うおー!」
そしてピカピカ光るユキチカ。

「……こいつは」
ため息をつくキビ。

館の中に入って行く一行。

「それじゃあ突入するぞ」
「よーし!映画っぽく!」
ユキチカが先頭をきって扉を蹴破ろうとする。

しかしかなり老朽化が進んでいるからか、足が扉を貫通してしまう。

「何やってんだ。そういうのはこうやるんだよ!」
後ろからユキチカの足が刺さった扉を蹴り飛ばすキビ。

「おし、行くぞ。ユキチカ、お前は一番後ろを任せたぞ」
銃を構えてキビが先頭を行く。

建物の中は暗く、キビ達が持っているライトのみが頼りだ。

「雰囲気あるなぁ~」
「ジーナ怖くないの?」
ジーナの服の裾を掴みながらシャーロットがきく。

「だいぶ老朽化が進んでいるようですね。皆さま足場にお気を付けて。鏡が割れて、こうなる前はきっと綺麗な館だったでしょうに」
ウルルは建物の壁などを見てそういう。

「全然出てこないねー」
「そう言う事言うと出てくるよ、フラグっていうんだよって何してんの?」
シュッシュと自分に何かを吹きかけけるユキチカをみながら、シャーロットがそう言う。

すると直後、突然歩いていた通路の壁を破壊して何者かが現れた。
そしてそのまま、タケミを掴み反対側の壁まで突き抜けて行く。

「ほら見た事か!」

「くっそ、そんな騒がしいモン付けてるからだ!」
突き破った壁から、チザキ・アキナが現れる。

「あなた達。どうして……」

「動くな!この場所は完全に包囲されている。お前が逃げられないように周囲には武装した部下達がいる。逃げ出そうとしたら即刻発砲するように伝えてある」

キビが銃を構えてチザキアキナに近づく。

「邪魔を……」
素早く手を動かすチザキアキナ。

それをみてキビが発砲。
数発の弾丸がチザキを捉える。

銃撃の衝撃で後ろにすっころぶチザキ。
「がぁっ!!」
「動くなって言ってんだろうが。この前の銃じゃ威力不足だったみただからな。今日は前よりもゴツイのを用意したんだ」

倒れたチザキに銃口を向けたままキビが話す。

「そのままうつ伏せになって手を頭の後ろにするんだ」

「血、血が!ああ、ダメ、血が……」
自分から出ている血が床に広がって行くのを見て慌てるチザキ。

「おい、聞いてるのか、テメェに手錠をかけたらすぐに手当てしてやるから。いう通りにするんだ」

「ううう、ダメ、私から……ジャマ……ヲ、スルナッ!!」
飛び起きて天井に張り付くチザキ。

彼女は予備動作も殆ど無く一瞬でそこまで移動した。

すぐさまキビが発砲。
しかし相手にはあたらず。

周囲の壁を足場にして跳びまわり、その場を離れるチザキ。

「待ちなさい!!」

逃げ出したチザキを追う。

するとその途中で館内の電気が付く。

「おー、光あれ―!」
吹き飛ばされたユキチカが電気を通したようだ。

追いかけた先でチザキは輸血パックから直接血を飲んでいた。

キビが姿を確認すると同時に発砲。
倒れるチザキ。

床に倒れた直後彼女の身体が痙攣し始める。

「おい!どうした!」
「私……ワタシ……ハ……シアワセニ……」

チザキに警戒しながら距離を詰めるキビ。
「……血が出てない?!」

近づくと撃たれたはずの箇所から出血が一切ない事に気付いた。

チザキの痙攣が止まると、彼女の身体は異様な音を出しながら変異していく。

天井に頭がついてしまう程に体格は巨大になり、牙が現れ、髪は鮮血のような色へと変わっていく。

「おいおい、本当に化物が出て来ちまったな」
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