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2nd フェーズ 集
No.33 電気の無い豪邸
しおりを挟むとある富豪の家に潜入する事となったタケミたち。
その潜入方法はメイドとなる事だった。
ウルルの血の滲むような猛特訓の末にオーディションを勝ち抜いたユキチカたち。
「みたいな感じだった!」
「いやそんな展開じゃなかったし」
ユキチカの発言にジーナがツッコむ。
シャーロットはというと。
「えー!なにこの子超カワイイんですけど!」
「え、え、え!?」
他のメイドに囲まれていた。
(まあ、予想通り。シャロには悪いけどみんなの注意がそっちに向いている代わりに私は情報探りますかね)
「そ、そのーユキちゃん、私の部屋に良いかな?」
「いいよーです」
ユキチカはご主人様に呼ばれて階段を登っていく。
「イーナちゃん、こっちいいかしら?」
「イーナ?あ、はい!よろしくお願いします!」
ジーナは先輩メイドに呼ばれる。
「ジ、じゃなくてイーナです!よろしくお願いします!」
「よろしくねー、まずはお掃除してもらおうかな。そんな難しいこと無いから肩の力抜いていこうね」
軽く挨拶をするジーナ。
(いい人達そうで良かった)
一方その頃ユキチカは
「素敵だ!素敵だよ!ユキちゃん!!」
「にゃーん」
ライオンのたてがみとつけ耳をつけて遊んでいた。
「はぁあっっ!!刺激的過ぎっ!直視出来ないイイ!魅力がおさまらないよ!」
ご主人様であるブルジョは目を覆うポーズで固まっていた。
「ご主人様これなに……ですか?」
彼の机の上にある書類に気づいたユキチカ。
「ああ、それかね。頭のおかしい会社が考えた荒唐無稽な計画だよ」
どう考えても部外秘な資料であるだろうに、まったく気にかけないブルジョ。
「ふーん、おもしろいね」
ユキチカはパラパラとめくってみた。
「え?ユキちゃんそういうの興味あるの?興味の幅が広いのは良いことだねぇー!それに肩幅も広いっ!はー!その背中見てるだけで落ち着くぅ!」
クルクルとその場で回るご主人様。
ジーナはきっちり掃除をこなしていた。
広い場所の掃除は道場で普段から行っている、慣れたものだ。
「先輩、こっちの掃除終わりました!」
「もう?!はやいのねー、最初はみんな苦戦するのにー!今どきこんな古典的な方法で掃除をしたことがある人ってあまりいないから」
先輩のメイドはジーナの仕事の早さに驚きつつそう言った。
「いつも軽いウォーミングアップ代わりにしてるので。でも確かに、こんなに豪華な屋敷になのに掃除機の1つも無いなんて、大変じゃないですか?」
「そうなのよー!ご主人様がね、最近やたら機械とか捨てるように言ってきて。今じゃこの家に電化製品は1つもないの。ご飯だって釜で炊かせるのよ?!博物館でしかみたことないって感じだよね」
他の先輩メイドも話に入ってくる。ジーナが想定していたよりも皆けっこう軽いノリだ。
「何か理由があるのですかね?」
「それがね、どうやらあのウルティメイト社に嫌な気持ちでもあるのか、やたらと毛嫌いするようになってね。噂なんだけど出資額を減らしたから脅されてるんじゃないかって」
メイド達は顔を寄せてヒソヒソと話す。
「脅迫されてるんですか?」
ジーナもつられて小声で話す。
「あくまでだけど噂ね」
「でも、一回ウルティメイト社に呼び出されてからってのは本当よ。屋敷中の機械捨てろって言い始めたの。なんかあったんじゃないの、って話がでるのは当然よね」
先輩たちの話を聞いて頷くジーナ。
「なるほど、それで人手が必要になって。新しくメイドを雇ったんですね」
「そういう事~。だからイーナちゃんみたいに仕事出来る子が来てくれて助かったよー」
ね~っと先輩たちは顔を見合わせてそう言った。どうやらジーナもかなり気に入られたようだ。
シャーロットは屋敷内を案内されながら、何か情報は無いか探していた。
(本当に電子機器がない、室内照明すらオイルランプだ。ウルティメイト社以外のメーカーでも、何かしらの形でウルティメイトが関わってるし、本当にウルティメイト関連のものを排除したいんだ)
シャーロットはバケツと洗剤を手に取る。
「あー!チャールズちゃんいいよ!私がそれやるから、チャールズちゃんの手が荒れたら大変だし!」
「え、ちゃんと手袋つけてるから大丈夫だと思うんですけど……」
いつの間にか彼女は椅子に座らされていた。
彼女が今いる部屋は主にメイド達が休憩や食事に使う部屋のようだ。他の部屋ほど豪華ではないが、落ち着いた家具で揃えられている。
「あ、チャールズちゃん何か食べたいものある?私つくるよ」
「だ、大丈夫です!それよりも私も何かお仕事を」
立ち上がろうとするが先輩に優しく止められる。
「いいのいいの!どうせご主人様はあの新人ちゃんにご執心で部屋から出てこないだろうし!ちょっと早めのお昼にしちゃお。さ、何が食べたい?」
「お、オムライス……」
「はい!オムライスね!」
かなり気に入られた様子のシャーロットは落ち着かない様子で座っている。
メイドたちが手際よく昼食の用意をしている。するとシャーロットが座っている部屋のテレビで
「速報が入りました、たった今、【オオガネ邸殺人事件】の犯人が捕まったのことです!」
ニュースが流れた。
「ああ、捕まったんだこの人。良かったー!これで私達も安全ね、チャールズちゃん」
お皿を長テーブルにお皿を並べながら先輩メイドの一人がそう話す。
「安全?私達に、その、なにか関係するんですか」
事前にキビから知らされてはいたが、知らないフリをして話を聞き出すシャーロット。
「この事件があった家も私達みたいにメイドを沢山雇ってるお金持ちの人なの。私の友達がここにいてさ、幸いメイドは一人も被害に合わなかったみたいだけど。仕事が急になくなるし、顔知ってる人が殺されるって怖いよねー」
「もしかしてその人も、その、電子機器とか持たない人、だったんですか?」
シャーロットが質問する。
「あーそういえば、そんなこと言ってたね」
「まあ、犯人はこうして捕まったんだし安心だね」
(でもキビさんはそう思ってない。ってことは、まだ犯人がいるって事かな?複数人の犯行なのかな)
ジーナがその部屋の入口にやってきてシャーロットに合図する、情報共有の為に集まるみたいだ。
「おつかれさま、ユキチカは?」
「今は庭でご主人様とひなたぼっこしてる。そろそろいつもの昼食時間だから、すぐに来るでしょ」
シャーロットの質問に答えるジーナ。
「ねぇ、ここってかなり変わってるよね?」
「うん、電子機器の一切がないよ。ここで働く人はみんな入り口で端末の類を預けるし、かなり徹底してるね」
他のメイド達に聞かれないように気をつけながら話す二人。
「キビさんの話ではかなり警戒心が強いイメージだったけど、ここのセキュリティはかなり甘くない?電子機器がないって事は監視カメラとかも無いんだよね?一応、ユキチカと同じように屋敷の外に警備の人いるけどさ」
「うん、ないと思う。怪しまれないようにって言われたから、スキャン用の機材持ってきてないけど。でもこの感じじゃ持ち込むのは簡単そう。明日やってみるよ」
「チャールズちゃーん!ご飯できたよー!」
「イーナちゃんも一緒に食べよー!」
二人は呼ばれたので席につき、他のものと共に昼食をとりはじめる。
「オムライスだー!」
その部屋にユキチカも入ってくる。
「ナイスタイミング!ユキちゃんもどうぞ!出来立てだよー」
「わーい!いただきまーす!」
先輩が自分の分のオムライスをユキチカに渡す。
「ユキちゃんって本当背高いよねー!腕も凄い!身体めっちゃ鍛えてるの?」
「ん?ううん、これカーボンを元に作った特殊繊維のパイプが……」
ユキチカが余計な事を言い切る前にジーナが口を閉じさせる。
「ユキちゃぁ~ん?口の中ちゃんと全部無くしてから話そうね~」
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